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火災保険だけでは足りない?東日本大震災を知る保険のプロが解説する、本当に必要な補償とは

伊藤厚

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保険に入っているはずなのに、いざ災害が起きたとき「補償されなかった」という話を、私は何度も耳にしてきました。特に東日本大震災を経験した後、その現実を突きつけられた方が、いわきにも多くいらっしゃいました。だからこそ私は、損害保険の情報を一人でも多くの方に届けることを、自分の使命だと考えています。

保険業界に入ったのは、震災から半年が経った頃です。当時、地震保険に加入していなかったために満足な補償を受けられなかった方が非常に多く、困り果てた方々の様子は、今も深く心に刻まれています。だからこそ、お客さまの元を一軒一軒訪問し、リスクをきちんと伝えることにこだわってきました。

地震による火事は火災保険では補償されない

火災保険と地震保険の違いを、正確に理解している方は多くありません。「火災保険に入っているから大丈夫」と思っていても、地震が原因で起きた火事は一般的な火災保険ではほとんど補償されないのです。

地震火災とは、地震の揺れによってガスコンロが転倒したり、電気系統がショートしたりして起きる火災のことです。発生確率や被害の規模を事前に予測することが難しいため、一般的な火災保険ではその範囲外となっています。地震保険は火災保険とセットで加入するもので、単独では契約できません。また補償額は火災保険の保険金額の30〜50%の範囲に限られるという制度上のルールもあります。

東日本大震災では、津波の後に大規模な火災が沿岸部を襲いました。あの光景を見た後、「地震保険の大切さをもっと広く伝えなければ」という気持ちが一層強くなりました。いわきは太平洋側に位置し、津波リスクと隣り合わせの地域です。まずは地震保険の加入状況を確認することから始めてください。

高台の家でも土砂災害リスクは他人事ではない

次によく受ける相談が、水害・土砂災害に関する補償の誤解です。「うちは高台だから水害は必要ない」とおっしゃる方がいます。確かに浸水リスクは低いかもしれませんが、急斜面を背負った地形であれば、土砂災害の危険は十分にあります。

火災保険の水災補償は、浸水被害だけでなく土砂崩れも対象になりますが、この補償を付けていなければ土砂災害は補償されません。つまり、「高台だから水災不要」と判断したために、土砂崩れで大きな損害を受けても補償が出ない、という状況が起こり得るのです。

さらに近年、気候変動の加速により従来の経験則が通用しなくなっています。私が担当しているお客さまの中に、「40年間ここで生活してきて一度も水害はなかった」と話していた方が、近年の豪雨で床上浸水の被害に遭ったケースがありました。補償金をお渡しした際の「入っていてよかった。ありがとう」というお言葉は、今も私の胸に深く刻まれています。

地域のハザードマップを一緒に確認しながら、本当に必要な補償を見極めること。これが、私がお客さまと向き合うときに何より大切にしていることです。

自動車保険と地震リスク——見落とされがちな注意点

いわき市は車社会です。自動車なしでは日常生活が成り立たない地域だからこそ、自動車保険のご相談も非常に多く受けます。

ここで一つ知っておいていただきたい事実があります。通常の車両保険では、地震・噴火・津波による損害は補償の対象外です。東日本大震災のとき、津波で車が流されたり、水没して動かなくなったりしたお客さまが何人もいらっしゃいましたが、残念ながら当時は個人向けの自動車保険で地震・津波に対応できる特約はありませんでした。

現在はこうしたリスクに対応した特約を付加できる商品も増えていますので、加入時に担当者ときちんと確認することが大切です。また、2023年にはグループ会社「いわきモビリティ」を立ち上げ、レンタカーやレッカーサービスも展開しています。保険と車のことをワンストップで相談できる体制を整えることで、お客さまの利便性向上を図っています。

若者に保険知識を届ける—— 地域の未来への投資

私が大切にしていること、それはお客さまへの情報提供だけではありません。次世代を担う若者たちに、保険の基本的な知識を伝えることも、地域に根ざした事業者としての責任だと感じています。

いわき市内の商業高校では、PL保険(製造物責任保険)について出前授業を実施しました。生徒たちが綿あめを実演販売するという場面を題材に、「万が一お客さんがお腹を壊したら?」という問いかけから、製造物の欠陥で損害が生じた場合の賠償責任について説明しました。ほとんどの生徒が保険に触れた経験がない中で、「なるほど、保険ってこういうときに使うものなんだ」という顔を見せてくれたとき、この活動の意義を改めて感じました。

就職や進学で社会に出る前に、少しでも基本的な知識を得てもらえればという思いで続けています。こうした地域への貢献が、将来の安心にもつながると信じています。

保険選びで大切な「リスクの洗い出し」という考え方

私がお客さまとの面談で必ず行うのが「リスクの洗い出し」です。年代・居住環境・家族構成・生活スタイルによって、必要な補償はまったく異なります。同じ地域に住んでいても、持ち家か賃貸か、マンションか一戸建てか、車を何台所有しているか、ペットはいるか——これらの条件によって、最適な保険の組み合わせは変わってきます。

保険は形のない商品です。だからこそ、その価値を正確に理解していただくのは簡単ではありません。専門的な言葉をわかりやすく噛み砕き、なぜこの補償が必要なのかを丁寧にご説明することを、私はこの仕事で最も大切にしています。

Inter(お互い)Faith(信頼)という社名に込めた通り、お客さまとの相互信頼の上に成り立つ仕事だと思っています。2014年の独立から今日まで、この信念は変わりません。

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専門家

伊藤厚(保険代理店)

インターフェイス株式会社

東日本大震災の被災地での勤務経験を生かし、損害保険の重要性について情報提供。居住環境、家族構成、生活スタイルなどによって異なるリスクを一人一人洗い出し、必要な保険商品を提案します。

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