子どもに書の楽しさを伝えるプロ
幸山緑風
Mybestpro Interview
子どもに書の楽しさを伝えるプロ
幸山緑風
#chapter1
幸山緑風さんは、日本習字の師範として、 糸島市に「幸山緑風習字教室」を構え、子ども達ひとり一人の顔を見ながら書道の楽しさを伝えています。
書道をはじめたのは3歳の頃。「従兄弟のお兄さんが通っていた書道教室に興味本位でついていったんです。優しそうなおひげのおじいちゃん先生がすってくれた墨の香りに何ともいえない心地良さを感じ、半紙に向かうお兄さんお姉さんたちに憧れを抱いて。本当は年長以上が対象だった教室に無理を言って通わせていただくことに」と当時を振り返る幸山さん。
「書くことがとにかく楽しくて、お稽古がいやだと思ったことはありませんでした」。自分の書いた字に、自分で朱字を入れるほどの練習熱心だったそう。好きこそ物の上手なれ、ということわざ通り、幸山さんの書の腕はメキメキと上達し、小学校1年生の頃に出た大会ではステージ上で自分の体より大きな「手まり」という文字を披露し、会場中から拍手喝采を浴びたそうです。子どもながらに自分の好きなことを見つけ、それを一生懸命楽しんでいたら大人からも褒められ、書道の虜になった幸山さん。
家族の転居などに伴い、教室こそ変わりましたが、書道は変わらずずっと続けました。「小学校も中学年になると、友だちと遊びたくて練習をサボりたい日もありましたが、父がとても厳しい人で『自分が好きで始めたことは続けなさい』と私が書道教室の門をくぐるまで見守っていました。今思えばありがたいことです」
#chapter2
高校時代は学校の書道部にも入り、まさに書道一色だった幸山さんの人生でしたが、卒業後、初めて書道以外のことにも挑戦します。「父が営んでいたコットンショップの1店舗を任され、お客様からオーダーメイド服の依頼を受け、どんな服がほしいのかをヒアリングし、縫い子さんたちに説明をしてつなぐ仕事をしていました。孤独に半紙と向き合う書道を続けながら、人と話すことの楽しさを覚えたのはこの仕事のおかげでした」
22歳で結婚し、23歳で女の子を出産して、子育てと仕事に忙しい日々を送っていました。そして25歳、2人目の女の子を妊娠しているときに書道教室を開き、教わる立場から教える立場へ。「団地の集会場を借りるために5人の生徒が必要でした。手づくりのビラをつくって、近くの40軒ほどに配ってまわって、最初は近所の子ども達が5人ほど入ってくれました」
初めて「先生」と呼ばれたときは緊張で震えたという幸山さん。教えさせてもらえるということ自体はとてもうれしかったが、例えば筆の入れ方や運び方など、自分では言葉で説明しなくてもわかるような基本的なことも「半紙の上に優しくとんと筆をななめに乗せて、息をゆっくり吐きながらすーっと運ぶんだよ」とひとつひとつ噛み砕いて教えることが新鮮で、教えることが自分の学びにもなったと言います。
#chapter3
4人のお子さんを育てながら書道教室を続け、25年以上が経ち、今、幸山さんのもとには元生徒さんが受験の合格の報告に来てくれたり、結婚してお子さんを連れて訪ねてくることもめずらしくないそうです。「昔通ってくれていた生徒さんの結婚式に出席したり、生徒のお子さんの命名の色紙を見るたびに感動で込み上げるものがありますね。まるでわが子のように愛おしくその成長を見守っています」
次の目標は、「お手本に縛られず、のびのびと書を楽しんでもらいたい」と言い切ります。「段級位や賞を取ることが目的の子もいれば、学校でうまくいかない話を相談してくる子もいます。目的や楽しみ方は人それぞれでいいんです」
一般的に書道教室の練習時間は1時間と決まっている所もありますが、幸山さんは「調子の悪い日は早く切り上げてもいいし、筆が乗っている日は長くいてもいい」とにっこり。書き方を学ぶだけではなく、文字の成り立ちや子どもたちの名前の漢字にはどのような意味があるのかなど興味深い話も交えて飽きさせません。さらに発表展示会にも決まったお手本はありません。子どもたちの書きたい文字を聞いて、先生が1枚1枚お手本を手づくりします。「子どもたちから発せられた書きたい文字の方が、愛着が湧くと思うから」と手間を惜しみません。
「さぁ、みんな筆を持ってー、天才になってー」
幸山緑風先生のワクワクするようなかけ声を聞いて、今日も半紙と筆に向かう子どもたちの瞳はきらきらと輝いてます。
(写真の作品上は、金子みすず作「私と小鳥と鈴と」、下は石津ちひろ作「あした」)
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Profile
子どもに書の楽しさを伝えるプロ
幸山緑風プロ
講師
幸山緑風習字教室
課題をお稽古して、昇級昇段を目指すのも学ぶ事、自由にのびのびと興味のある字から学ぶのも素晴らしい事。基本を大切に書の楽しさを伝えます。「みんなちがって みんないい」
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