靴型装具をはじめ、足と靴に関するさまざまな相談に対応するプロ
田中隆基
Mybestpro Interview
靴型装具をはじめ、足と靴に関するさまざまな相談に対応するプロ
田中隆基
#chapter1
「靴は単なる履物ではなく、歩くための道具でもあります。私どもは、病気や障がいなどによって歩行が困難で、外出を控えている方々のお力になりたいと考えています」
こう語るのは「靴型装具の悩み相談室・福岡」の代表・田中隆基さん。2008年から大牟田市内で主宰していた「足と靴の相談室」を若い後継者に譲り、整形外科靴技術の普及に努めるNPO法人運営の「靴型装具の悩み」に特化した「相談室・福岡」を2021年に開室しました。
「靴型装具を作ったものの足に合わず、お困りの方もいらっしゃるでしょう。当方では、必要に応じて専門性を備えた医師や、保険をはじめ利用できる公的な制度もご案内しています。靴の製作をご希望される場合は、当法人の会員事業所につなぎます」と田中さん。
数多くの人と向き合う中で特に印象的だったのは、足の関節がずれて偏平足になった人だとか。足底のタコがひどくなったために歩行もままならない状態で、靴型装具が合わず悩まれていたと言います。そこで田中さんは医師と技術者を紹介し、靴型装具を作り直したところ、不具合を感じることもなくなり、とても喜ばれたそうです。
「この他、リウマチで足が変形した方や、事故で足の指を切断し、踏み返しができない方など、400件ほどお手伝いしました。足と靴のトラブルを解決へと導く方法があることをご存じなく、『納得のいくものには出合えない』とあきらめている方はたくさんいます。ぜひ、私どもの取り組みを知ってもらいたいですね」
#chapter2
もともと整形外科靴技術は、靴と医療の先進国として知られるドイツで発展。ドイツのオートペディーシューマッハーマイスター(整形外科靴職人親方)であるカール=ハインツ・ショット氏に学んだ技術者が主宰するNPO法人「靴総合技術研究所」が、福岡県立大学と共同で日本人の足に合った靴技術を確立しました。
2007年から10年にわたり、福岡県立大学のプロジェクトにも参画した田中さん。足部と脚部の疾患・障がいに対応できる靴の研究・開発、人材育成などに携わる中で、日本とドイツの認識の違いを実感したと言います。
「ドイツには、第1次世界大戦で負傷した人たちが社会復帰できるよう、整形外科医と靴職人が知恵を出し合って靴を作った歴史があります。医学的知識と臨床体験に基づき、歩行をサポートする靴づくりのノウハウが確立され、約8年に及ぶ養成期間を定めたマイスター資格制度があります。一方、日本では、靴型装具として位置付けられ、靴技術を学ぶ機会のない義肢装具士が提供することになっています」
NPO法人の会員事業所では、足の健康のために誰もが気軽に手に取り、試し履きできるよう、さまざまな疾患や用途に応じた「標準靴」を約20種類用意。サイズも11cm~29cmと幼児から大人用まで幅広くそろえ、標準靴を基準に、一人一人の足の状態に合う靴を製作します。
「整形外科の医師などからも『治療の幅が広がる』と高く評価していただき、自ら整形外科靴技術について情報を発信されている先生もいます。私どもが提唱するカスタムメイドの靴を広く行き渡らせるため、介護、福祉関係者などにも働きかけていきたいと思います」
#chapter3
「病気や障がいの方だけではなく、膝などが痛い高齢者からの相談も多いですが、啓発面では特に子どもたちを重視しています。靴底やかかとが柔らかい靴を履いているお子さんをよく見かけます。今は何ともなくても、先々に影響が出ることもありますので、幼いうちは大人が気をつけてあげましょう」と田中さん。大きすぎず、小さすぎず、本人の足に合ったサイズを選び、かかとをまっすぐに支え、前へずれないようにひもやベルトでしっかり固定し、つま先は圧迫しない。歩くときは姿勢を正し、足の付け根から振り出し、膝を伸ばし、かかとから着地するなど、機会あるごとに保育士に伝えています。
「ドイツでは、正しい歩き方や靴の履き方を重視し保育園などで教育が行われています。残念ながら日本にはそのような文化はありませんが、子どもの健やかな心身を養うためにも大切なことなんです」と強調。
今後は、九州一円に向けて、活動範囲を広げていきたいと意欲を見せます。
「幸い頼もしい後任者も育ちましたから、各方面に赴いて市民向け講座も開きたいですね。当方では、障がいや病気の方の靴型装具だけではなく、特に高齢の方等の膝や腰が痛いといった悩みもお伺いして、何が問題かを見極めて改善方法をご提案しています。足と靴について気になることがあれば、どんなことでも遠慮せずにお話しください」
(取材年月:2022年11月)
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靴型装具をはじめ、足と靴に関するさまざまな相談に対応するプロ
田中隆基プロ
足と靴に関する相談技術者
靴型装具の悩み相談室・福岡
ドイツの整形外科靴技術を基に研究開発された、「歩くための道具」としての靴や靴型装具を紹介。15年にわたり、足と靴に関するさまざまな悩みを抱える人に寄り添い、悩みの解決へと導けるよう尽力してきました
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