地元千葉で長唄・三味線の普及に尽力する杵家派師範
杵家弥江宏
Mybestpro Interview
地元千葉で長唄・三味線の普及に尽力する杵家派師範
杵家弥江宏
#chapter1
テレビなどで三味線の音色や粋な唄声を耳にし、思わず画面に見入ってしまった経験はありませんか?興味が湧いても、三味線が身近な楽器ではないため、習うのはなかなか難しいと思われがちです。
「関心がある方は気軽に体験にいらしてください」と笑顔を見せるのは、杵家派師範の杵家 弥江宏さんです。
「調子三年」といわれるように、三味線は正しく調弦できるようになるにも時間がかかり、習得が難しい楽器ですが、四世家元考案の文化譜を使い、無理なく楽しめるよう普及活動に取り組んでいるのが杵家派の特長です。
杵家さんが三味線に出会ったのは高校生の時でした。
「小さい時から歌が好き。音楽の授業で習う歌も好きだけど、もっと自分に合った歌があるんじゃないかとずっと思ってきました。高校生の時にラジオで長唄の放送を聞いて、長唄の唄ってなんて素敵なんだろうと感じ、これだ!と確信しました」
どこに行けば習えるのか分からずにいたところ、大学の受験案内にサークル活動紹介で長唄研究会を見つけ、長唄研究会が存在する大学に絞って受験。無事入学し、念願の長唄研究会に入ったそうです。
「とにかく唄ばかりに目がいってたんですね。でも、長唄は三味線あってこそ。唄うにもまず三味線の稽古が必須と後になって知ったんです…」と恥ずかしそうに振り返ります。
伝統芸能の師範というと厳しいイメージがありますが、当時のことを笑いながら話す杵家さんの姿からは、楽しいお稽古の時間が想像できます。
#chapter2
大学のサークルで三味線をはじめてみると、先生から筋がいいと言われたそうです。ですが杵家さん自身は、「右手は撥(ばち)を持ち、左手では糸をおさえ、まったく違う動きをするのが難しくて苦労しました。同級生の中で一番弾けなかったんじゃないかな?まさか長唄の先生になるとは思ってもみませんでした」と明かします。
「長唄の三味線は唄を知らなければ弾けないし、唄は三味線のノリや旋律を知らなければ唄えません。弾き唄いができるようになるまでには相当時間もかかります。ただ、言い方を変えると、40年近くやっている私にもまだまだ新しい楽しさがあるということ。三味線は一生涯続く趣味だと思いますね」と三味線の魅力を語ります。
現在、杵家さんは、千葉駅から徒歩5分の教室で完全個人のお稽古を、カルチャー教室では団体稽古をしています。生徒さんの年齢層は広く、20代から80代の方までいらっしゃるそうです。
「お一人お一人の進み具合に合わせることを大切にしています。ていねいに繰り返し繰り返しお教えします。反対に進度の速い方はどんどん進めます。若い方は上達が早いので、今経験しておいて、10年、20年あとになって趣味にするという取り組み方もありますよ」
中には「続けられるかどうかわからないのに高い三味線を買うのは…」と二の足を踏む 方もいるはず。そんな方のために、三味線の貸出もするそうです。稽古場には貸出可の三味線がズラリと並びます。お稽古の時間内だけでなく、家に持ち帰って練習もできます。
また、邦楽はとかくお金がかかって敷居の高いイメージもある中、杵家さんは一般的な 習い事の月謝に準じる額に設定。大きなお金をかけずに伝統芸能を学べるのはとても嬉しいことです。
最近、オンラインのお稽古にも挑戦したとか。出掛けられないときもお稽古が続けられると生徒さんたちから喜ばれたそうです。
#chapter3
杵家さんは、精力的に舞台にも出演しています。東京での演奏会に出演するほか、地元千葉での催しを特に大切にしているそうです。
「待っているだけでは、三味線や長唄の魅力を多くの方に知っていただくことはできません。良い演奏を聞けば素敵だなと思って、習いたいと思う方がきっと増えますよね?私が舞台に立ったときにも、そう感じていただけるよう、精進していきます」
また千葉市は伝統芸能に理解が深く、伝統芸能まつりなど、市主催の催しもあります。中でも千葉市邦楽邦舞文化協会と千葉市が共催する年1回の公演は、お弟子さんたちの大事な成果発表の場となっています。
今後ポストコロナでは地方の力を見直す動きが高まっていくのでは、という見方があります。杵家さんはコロナ禍が自身の活動を見つめなおすきっかけになっていると話します。
「今までは三味線の世界でも、とにかく中央に行かなければという風潮でした。ですが、 ここ千葉でも立派な舞台に出演することも見ることもできます。立派なホールなど充実した環境があるのですから、自分の地元で盛り上げていくことが大切だと改めて考えましたし、その担い手にならなければとの思いは強くなっています。長唄の演奏は一人では成り立ちませんし、人数が多いほど舞台も立派になります。地元で一緒に舞台に立つお弟子さんを一人でも多く育てていきたいです」
(取材年月:2020年5月)
リンクをコピーしました
Profile
地元千葉で長唄・三味線の普及に尽力する杵家派師範
杵家弥江宏プロ
長唄・三味線教室主宰
杵家弥江宏 長唄三味線教室
自分がまったくの素人からはじめた経験を活かして、生徒さんに寄り添って指導しています。初心者にもわかりやすい文化譜(赤譜)を用います。目標は半年後には曲が弾けること。レンタル三味線有。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
掲載専門家について
マイベストプロ千葉に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または朝日新聞が取材しています。[→審査基準]