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MBA取得の医師が導く、医療に関わるすべてのステークホルダーの幸せを考える病院経営

医師×医学博士×英国MBAによる病院経営コンサルタント

角田圭雄

角田圭雄 すみだよしお
角田圭雄 すみだよしお

#chapter1

医療者のモチベーションアップを図り、病院のブランド力を高める

 「医療現場の課題を解決するため、医療に携わる人に経営学を知ってほしい」と力を込めるのは、「日本医療戦略研究センター」代表理事の角田圭雄さん。医師・医学博士として肝臓疾患の臨床研究を進める一方、英国のMBA(医療経営管理学修士)をもとに病院経営に関するコンサルティングも手掛けています。

 角田さんは、病院勤務の経験から医療現場の実情に即した組織改善を導きます。重点を置くのは、経費削減や病床稼働率向上といった財務改善ではなく、人材マネジメントです。「働く一人一人のモチベーションを高め、病院のブランディングに貢献する仕組みづくりを行います」。例えば医師の評価では、患者数に応じた金銭的なインセンティブではなく、内部表彰など努力すればきちんと認められる制度設計を提案します。

 現在、大学病院や大規模病院で個別相談に応じるほか、医師向けのセミナーや研修会を開催しています。管理職を対象にしたセミナーは「医療者のやる気を引き出す動機付け」「医療職・患者に対するコミュニケーション」などがテーマ。行動経済学、交渉学、心理学的な要素を取り入れ、マネジメント力を養います。

 病院のブランド力に関わる医療の質には、医師個人の技術力はもとより、患者への接し方や院内の雰囲気なども含まれます。多面的に評価されるので、組織全体の意識を高めていくことが求められると言います。「医師だけでなく、看護師・薬剤師・事務職員、製薬会社・医療機器メーカー、患者と家族などすべてのステークホルダー(利害関係者)の幸せ(well-being)につながるかどうかの視点で経営を考えます」

#chapter2

全国の医療機関と連携し、非アルコール性脂肪肝疾患の臨床研究をリード

 もともと、角田さんの専門分野は肝疾患で、特に「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」の臨床研究に長年にわたり力を注いでいます。NAFLDとは、飲酒しなくても肝臓に中性脂肪がたまる状態で、悪化すると肝機能が低下する「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」になります。さらに進行すると、肝臓が線維化して硬くなる肝硬変や肝がんに至る危険性があります。

 「NAFLDは、C型肝炎などと比べると日本ではあまりよく知られていません。世界で約10億人、国内で約2000万人の患者さんがいると言われ、近年患者数は増加しています」。現在、特効薬が確立されておらず、角田さんが大学病院など国内25の施設と共同で研究チーム(JSG-NAFLD)を立ち上げました。大学病院や製薬会社と連携し、大規模なデータ収集や医学的なアドバイスなどを行い、新薬開発の治験をサポートしています。

 「東アジアには、NAFLDになりやすい遺伝子型を持っている人が多いというわれわれの研究結果もあります。アジアやアメリカなど海外の大学や病院とも共同研究を進めているところです」と角田さん。

 NAFLDは、肥満や生活習慣病とも深い関わりがあります。「テレワークが普及したことで運動不足となり、肥満や糖尿病がますます悪化する人が増えています。専門医同士が連携し、肝硬変や肝がんなど深刻な状態になる前に、リスクが高い人を早期発見し、治療につなぐ体制を構築する計画もあります」

角田圭雄 すみだよしお

#chapter3

経営学に基づき、広い視野で変化に対応できる医療体制づくりを

 角田さんが経営学に興味を抱いたきっかけは、勤務していた病院で、経営・業務改善を推進する委員会の副委員長に任命されたことでした。「それまでも上層部に経営方針など自分なりの意見をぶつけることはありましたが、委員会を率いる立場になると、論理的な提言ができず歯がゆい思いをしました」

 同じ頃、MBAを持つ医師と出会い、考え方の違いに驚いたといいます。「救急搬送のたらい回しが社会問題となっていた当時、タブレット端末で患者と受け入れ先をマッチングするシステムなど幅広い視点から解決策を示していました。医療を俯瞰して見ることの重要性を知りました」

 MBA取得を目指した大学院では、異業種の人と交流し、多様な価値観に触れたことも貴重な機会だったそう。「医師は専門性を極めるからこそ、視野が狭くなってしまいがちです。学びを機に、例えば製薬会社とWin-Winの関係づくりを心がけるなど、広い視野を持てるようになりました」

 同じように、多くの医師に医療経営に関心を持ってほしいと、自身の考えをまとめて書籍化。将来的には、医療経営が学べるビジネススクールを開校する構想もあるとか。

 「人生100年時代や医療のAI化など、医師がキャリア形成を見直すときが来ています。また、新型コロナウイルスにより医療体制の課題が浮き彫りになった今こそ、合理的な経営学をもとに、医師自らが変化に対応するスキルを身に付ける必要を感じます」。医療のこれからを支えるため、角田さんのもとで新たな気付きを得ませんか。

(取材年月:2022年1月)

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専門家プロフィール

角田圭雄

医師×医学博士×英国MBAによる病院経営コンサルタント

角田圭雄プロ

医師

一般社団法人日本医療戦略研究センター(J-SMARC)

医療現場を理解した医師がMBAをもとに病院経営をサポート。人材マネジメントを重視し、医療者のモチベーションを高めます。専門とする非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)では治験の関するコンサル業務も。

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