心と技術を磨くアクロバットインストラクター井藤亘

心と技術を磨くアクロバットインストラクター

井藤亘

「コツ」と「考え方」を言語化した的確な指導でスキルアップをサポート

　「ダイナミックに、軽やかに舞うアクロバットは、子どもたちから人気を集めるスポーツです。確かな技術と、丁寧で温かい指導を提供したいと思い立ち上げたのが『名古屋アクロバットスクール』で、全身をフルに使って表現できるように、しなやかな体を作るお手伝いをします」

　代表の井藤亘さんの新体操歴は二十余年。全国優勝は複数回、カナダ発のサーカス・エンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」では、650回以上の公演に出演し、華麗なパフォーマンスを披露してきました。教員免許も保有し、アクロバットの「コツ」と「考え方」を、筋道を立ててロジカルに分かりやすく言語化しています。

　「倒立前転や側転といった基礎から、バク宙や宙返りなどの上級技まで手ほどきしています。未就学児はケガをしない体づくりから始め、小学生は集中力や周囲を傷つけない安全意識を醸成するなど、年齢に合わせたカリキュラムで健やかな心身を養います。また、自分の体の動かし方を知覚し、あらゆるスポーツの下地となるボディイメージも高まるので、初めての習い事にもおすすめです」

　井藤さんは名古屋市内にいりなか校と徳重校を展開し、集団クラスと1～5人以下のプライベートレッスンを用意。小学生を中心に約100名の生徒が通っています。プライベートレッスンでは習得したい技をピンポイントで習うことができるので、ダンスやチアのスキルを強化するために来る子もいるそうです。

世界の多様なパフォーマーと共演した経験で、個性豊かな子どもを受容

　近所に教室ができたのを機に3歳で体操を始めた井藤さん。中学生時代にシルク・ドゥ・ソレイユを鑑賞して以来ショーの世界に憧れを持ち、新体操漬けの毎日を過ごします。

　「青森大学で新体操部主将を務めた経験は印象深いです。自分の技を磨く練習から、部員の強みを伸ばすことに力を注ぎました。寮生活を共にし、すべてを知ったつもりでいたチームメイトたちも、個々で注目してみると知らない強みがたくさん見えてくるんです。『指導』の面白さを知ったきっかけです」

　卒業後はスポーツ教室に就職。その後、渡米してシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーになります。

　「現地では英語でコミュニケーションを図るのですが、どうしても違和感が残るんです。実は言葉だけで分かりあえるのはほんの少しで、文化や価値観を含め、その人自身を見なければ、真の理解は難しいと身をもって感じました」

　多様性の中で培った人を見る目は「子どもを見る目」に反映。積極的な子や内向的な性格な子など、それぞれ資質を見極め、個性豊かな子どもに向き合う懐の深さになりました。

　「アクロバットは技の完成形に目が行きがちですが、結果より一人一人の過程を見るのが指導者の役目だと考えているので、心の中の小さな変化が見えた時にうれしさを感じます。例えば、バク転ができて喜ぶ姿を見るより、『家でもこんな風に練習してみたんだ』と報告をもらう方がうれしいです。自ら挑戦する強さは人生を一歩前に踏み出す力となります。小さな変化を見逃がさず、誰より早く成長を認めることで『頑張りたい気持ち』を育てたいですね」

アクロバットを通して、生きていくうえで必要な「学ぶ力」を育てたい

　井藤さんがスクールを開くうえで目標にしたのが「心と技術を磨く」指導です。

　「アクロバットは顔の向きや体のひねり、足を踏み込むタイミングなど、すべてが合致して技が完成するもの。多くのスキルを必要とする動きだからこそ、他人の力に依存せず自ら課題に立ち向かっていく『学ぶ心』を育むことも重視しています」

　自ら考え、学ぶことの大切さは、井藤さん自身も実感してきたこと。過酷な練習を「やらされている」と思うのではなく、トレーニングの意義を心得て自律的に取り組むことでチャンスをつないできたと言います。

　「レッスン中すぐに正解を教えず、自分で答えに辿り着こうとするよう促すことも心掛けています。友達の技を見て参考にしたり、他の人へのアドバイスを自分でも試してみたり、上達のヒントを自ら集めることによって確実に力をつけていく子が増えたと感じます。周囲から学び取る力が伸びると、自然と相手に敬意を払うようになるものです。自律的な学びを通して、あいさつや相手の目を見て話すなど、礼節も伸ばしていけたらと思います」

　アクロバットを通して、子どもたちが生きていくうえで必要な「学ぶ力」を育てる井藤さん。子どもたちの成長をサポートするため、さまざまな展望を描いています。

　「入会希望者が増えてきたことを受け、教室の拡充や新校を検討中です。エンターテインメント業界を志望する子どもに向けて、ダンスを取り入れたパフォーマンス要素が高いクラスの開講も視野に入れています。子どもたちが主役となり、やりたいことを応援できるスクールでありたいですね」

（取材年月：2024年11月）

子どもの自律心を育てる、心と技術を磨くアクロバットスクール

「コツ」と「考え方」を言語化した的確な指導でスキルアップをサポート

世界の多様なパフォーマーと共演した経験で、個性豊かな子どもを受容

アクロバットを通して、生きていくうえで必要な「学ぶ力」を育てたい

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