利用者に寄りそう介護のプロ
渡邊尚太
Mybestpro Interview
利用者に寄りそう介護のプロ
渡邊尚太
#chapter1
被介護者である高齢者が生き生きと暮らすためのケア、そしてその家族に寄り添い、介護の負担を軽減できたら―。そんな思いで介護サービス事業を運営しているのが、JSPです。2009年2月、都留市鹿留に「デイサービスこわた」をオープンしたのを皮切りに、都留市内に3カ所、富士吉田市内の1カ所で、デイサービスや居宅介護支援事業所などを開設しています。同社代表取締役の渡邊尚太さん(33歳)は「地元の都留市をはじめ、地域の高齢者福祉は私がやるしかないという気持ちでいます。それが仕事のモチベーションです」と力強く語ります。
JSPという社名は「ジャパン・スピリット・プロジェクト」の頭文字から取りました。「日本を元気にする会社」という意味を込めています。郡内エリアのデイサービスと居宅介護支援事業所は、古民家を活用し、利用者一人一人にスタッフの目が届くように、受け入れ人数も限定。利用者は自宅にいるような、くつろげる環境で一日を過ごしています。あえてバリアフリーに改装していません。その理由について渡邊さんは「この辺りでは、バリアフリーの住宅はそこまで普及していません。施設でバリアフリーの構造に慣れてしまうと、自宅に戻ったときに、小さな段差でころんだりしてしまうリスクが高まると考えたからです」と説明します。
さらに、渡邊さんは2014年4月、甲斐市下今井にオープンしたサービス付き高齢者向け住宅「ハイブリッドホーム上機嫌」の代表取締役社長に就任しました。モダンな外観に、木の質感を生かし、外からの光をふんだんに取り込んだ、開放的な内装が印象的な施設です。「従来の高齢者施設の閉鎖的なイメージを払拭(ふっしょく)し、他にはない、明るい施設を造りたかった」という若い感性が設計に生きています。
#chapter2
渡邊さんは以前、伯父が経営し、介護施設などへ給食業務を展開する会社で働いていました。介護の現場に触れる機会もあり、また、折しも祖母に認知症の症状が出始めたことをきっかけに、「これからの高齢化社会には、お年寄りを受け入れるための施設が一層求められるようになる」と実感。伯父の後押しもあって介護サービスを提供する会社を立ち上げました。
「おばあちゃんのために頑張りたい。高齢者が孤立することなく、社会とつながりを持っていられるようにしたい」。夢中で仕事に取り組むうちに、ある思いが膨らんできたそうです。「自身の両親のことが頭をよぎりました。特に70代、団塊の世代の人たちが被介護者になったときに、今の介護は彼らにマッチしていないのではないか。あの世代の人たちが、今ある介護を受けたいと思うだろうか」
「もちろん介護は必要ですが、むしろ介護をなくしていきたい。そのためには、介護が必要になる前のケアに重点を置いて、年を取ってもなるべく長く自立した生活が送れるように導くことが大切なんじゃないかと思うようになりました」
そうした予防介護の観点から2019年10月、都留市田野倉の「デイサービスあいる」に併設する形で、リハビリ付きデイサービスの「フィットネスサロンあいる」をオープンしました。専門職員の指導でリハビリを行い、健康寿命を少しでも長く延ばすことを目的にしています。
また、リハビリと同時に、食の楽しさも提供。同サロンに常駐するパティシエがケーキやサンドイッチを作り、それをグループ内の他の施設にも運んで食の改善に取り組んでいます。「実は私自身が一昨年、1週間ほど入院しました。その時、何より3度の食事が待ち遠しかったのです。きっと施設を利用する方々も、食べることが楽しみだろうなと感じました。まだ試行錯誤の段階ですが、フィットネスサロンを利用する男性の中にも甘い物好きな人がいて、好評のようです」(渡邊さん)
#chapter3
一般的に介護の職場は人材確保が課題となっています。「スタッフの離職は運営する側としても大きなマイナスです」と語る渡邊さんは、職員に長く勤務してもらえるような職場づくりも心掛けています。「私も他のスタッフと同じ事務室にいて、現場の声がすぐに届く距離感を保っています。そうすれば何か問題があったら、すぐにみんなで話し合い、改善できますから。そして、私も含めスタッフ一同、利用者さま目線を忘れずに、人生の先輩として敬意を持って高齢者の方々に接していきたいです」
介護は24時間、365日続きます。家族が「ちょっと休みたい」と、介護から一旦離れる機会を提供するために、ナイトケアサービスという泊まりのサービスも実施しています。介護に悩む家族に向け、渡邊さんは「悩みがあったら、ぜひ行政や近くの地域包括センター、ケアマネジャーに相談してください。人の手を借りることは、決して恥ずかしいことではありませんし、虐待などの不幸な事件を防ぐことにつながります」と呼び掛けます。
今後の構想についても話してくれました。地元の行政などと連携しながら、介護予防の取り組みを進めていくこと、さらに「農園にビニールハウスを建て、イチゴ栽培も始めています。高齢者の方々がそこで働き、賃金を得るようになれば、それがやりがい、生きがいにつながるのではないでしょうか。そのお手伝いがしたいです」。
(取材年月:2020年1月)
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Profile
利用者に寄りそう介護のプロ
渡邊尚太プロ
介護
株式会社JSP
施設それぞれの特徴を生かし、農園やリハビリの他環境に縛られず自由に選択できる介護サービスの提供を図っています。
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