森林整備と生活の中の特殊伐採を手掛けるプロ
依田崇
Mybestpro Interview
森林整備と生活の中の特殊伐採を手掛けるプロ
依田崇
#chapter1
里山の整備や生薪の生産販売のほか、個人宅や別荘にかかる支障木、危険木を伐採するなど、林業を営んでいる「フォレストフェローズ」の依田崇さん。山の中やビルの間といったクレーンが入れない場所には、ロープや滑車を使って木に登り枝を落とすツリークライミングやリギングという特殊伐採の技術を駆使して作業を行っています。
「ツリークライミングは近年、林業の中でも注目されている技術で、弊社では2010年頃から導入しています。主な顧客層は、八ヶ岳周辺の工務店や別荘の所有者、個人宅と幅広く、木が大きくなってしまい『自分たちでは対処できない』と困っている人からの依頼が大半です」
昨今は、都会で暮らしていた人が田舎暮らしに憧れ、森の中に家や別荘を建てる事例が増えています。しかし、実際に住んでみると、枯れ枝や木の実、落ち葉の処理が追い付かず、屋根などの外装が傷んでしまうこともあります。依田さんは、自然に親しみ、癒やしを求めている人たちが快適に過ごせるようにサポートしたいとの思いで、特殊伐採に取り組んでいます。
「建物を建てると、その上に広い空間が生まれますよね。木は光合成をするために、あいているところに枝をどんどん伸ばすので、屋根などを覆ってしまうことがあります。また、森や林のように木が茂った場所で木を伐採すると光環境が良くなり、木々が競争するかのように肥大成長します。そうなると、まわりの住宅や道路に木が倒れるといったトラブルが発生する可能性もあります。倒木などによる事故を未然に防ぐために、伐採を希望する人も多いですね」
#chapter2
依田さんは高校卒業後、東京で銀行員として働いたのち山梨に帰郷。車の販売会社や電力会社勤務を経て、妻の実家が営む金属加工工場の後継ぎとして経営に携わりました。しかし、時代とともに国内生産受注が難しくなったことから、40歳の時に林業に転身。林業事業体で実務を積み2005年に独立しました。
「高齢化が進む林業への就業支援を行う県の説明会に参加したことがきっかけでこの業界に飛び込みました。私はもともとキノコ狩りや山菜採り、釣りに出かけるなど自然の中で過ごすことが好きだったので興味が尽きず、自分に合っていたと思います」
独立前は、県の請負事業として県有林の手入れなどの業務が中心だったため、個人宅や別荘の木を切り倒す経験がなかったという依田さん。最初は自己流で伐採をしていましたが、けがをしたことを機に、講習会でツリークライミングを使った伐採技術を習得しました。40歳で「木こり」の世界に入って約20年。人の役に立つ技能を身に付けられたことが、依田さんにとっての喜びであり誇りです。
「実際に作業を見ていただいたお客さまからは拍手されることもあります。時間も労力もかかる仕事ですが、困っている人の一助になれば何よりです。特に危険木は人命に関わっていますので、事前に除去できることで救われる命もあるのだと、使命感を持っています」
#chapter3
「青空の下で体を動かし、木に登った時に得られる爽快感が最高」と笑顔を見せる依田さん。今後は、仕事の楽しさを若い世代に伝え、後継者育成に力を入れていきたいとのこと。ただ林業は、給与面、そして体力的にも厳しいため、若い人が定着しないという課題を抱えています。依田さんは住宅まわりの特殊伐採などで収益を上げられるよう、伐採師の認知度を高めていきたいと言います。
「人間と自然が共存できる環境づくりに貢献できるのも、この仕事の魅力です。例えば、里山の不要木を伐採した後、新芽が出て木々が再生していく姿や、若返った森林を見るのはとても気持ちがいいものです。特殊伐採に関しては、難易度の高い作業を効率よく成し遂げたときの達成感が大きいんです」
自然に敬意を抱き、志を持って取り組んでくれる人が少しでも増えることを依田さんは願っています。
「台風シーズンには富士山近郊からもご相談があるので、人を増やせば遠方でも対応できます。造園業界でも、ツリークライミングで剪定や伐採をしているところも多いそうですが、講習を受けずに見よう見まねでやっていると危険です。弊社の従業員には、作業技術だけでなく、安全管理についてもしっかり学んでいただきます」
自らの技術と意思を受け継ぎ、ゆくゆくは会社を任せられる人材を育てていきたいと依田さんは熱く語ります。
「お持ちの山林が荒れていたり、住宅に隣接する木に危険を感じたりした場合などは、ご連絡ください。また、若い人たちには『こういう仕事があるんだ』と知っていただき、興味を持っていただけたらうれしいですね」
(取材年月:2021年4月)
リンクをコピーしました
Profile
森林整備と生活の中の特殊伐採を手掛けるプロ
依田崇プロ
伐採師
フォレストフェローズ
特殊伐採(家の回りの危険な木の伐採や、大きな木の剪定など)で着実に実績を積み重ねるとともに、伐採跡地の整備をすることで、早期に循環可能な里山の再生を目指している。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
掲載専門家について
マイベストプロ山梨に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または山梨日日新聞社が取材しています。[→審査基準]