漆喰など伝統の技生かす左官プロ
平嶋勇一
Mybestpro Interview
漆喰など伝統の技生かす左官プロ
平嶋勇一
#chapter1
歴史ある日本家屋や土蔵などに見られる漆喰(しっくい)の塗り壁。その意匠性の高さに魅了される人も多いでしょう。
北杜市長坂町の「ヒラシマ」は左官専門の施工業者です。一般住宅の外壁やタイル工事、防水、外構の工事など幅広く対応していますが、中でも漆喰や珪藻土(けいそうど)、土などの天然素材を使った左官技術にこだわりを持っています。平嶋勇一さん(46)は「自然素材を『こて』で仕上げる塗り壁の技術に自信を持っています。漆喰や土壁への塗り替えや土蔵の修繕なども請け負っています。クロスなどの壁紙の上に漆喰を塗ることもできますので、リフォームを考えている人は気軽に相談してください。オリジナルな空間づくりのお手伝いをします」とPRしています。
漆喰や珪藻土は調湿性や消臭、断熱、保温効果に優れた素材として知られ、古くから湿気の多い日本建築の壁や床、塀などに取り入れられてきました。左官業は「こて」を使って塗り込んでいき、特に漆喰では光沢のある磨き仕上げや、こて跡を残した仕上げなど、多様な仕上げに腕を振るいます。職人によっては道具にもこだわり、数十、数百のこてを使い分けるそうです。
#chapter2
「基本的に、原料はすべて自然素材を使います。お客さまと色や素材、模様などを吟味して調合したオリジナルです」と平嶋さん。例えば、漆喰は消石灰と海藻のりに、割れ止めの「麻すさ」(麻繊維のくず)を混ぜ合わせて作ります。化学薬品は一切使わないので、建材から出る化学物質に悩まされることがなく、シックハウス症候群対策としても注目されています。
また、消石灰一つとっても九州産を使うと真っ白に、群馬周辺のものを使うとグレー系に仕上がるほか、梅雨時には水分を吸って色が濃く、乾燥した冬には薄く見え、季節ごとに色が変化するのも漆喰の魅力の一つです。職人の高い技術が求められる上に、自然素材だからこそ「いつも均一には仕上がらない面白さ」(平嶋さん)があるといいます。
左官業を営む父親の跡を継ぎ、2代目となった平嶋さん。伝統の工法に関心を持ったのは、皮肉にも一時期、左官仕事が減少したことにあるそうです。建材として手軽な石こうボードやクロスなどが普及。「お客さまに、こてを使って仕上げる壁を見せられなくなった時に、これじゃあ面白くないと思いました」。独りで土について学び始めましたが、やがて師と仰ぐ淡路島の左官職人に出会ったことが転機に。「職人がきちんとした仕事をすれば、漆喰は何のメンテナンスをしなくても50年ほど持ちます。日本古来の技術はすごい」と実感したそうです。その後も全国の講習会などに参加しながら修行を積み、「仕事が少なくて暇だった分、いろいろと考えて挑戦することができました」と笑います。
#chapter3
ヒラシマでは、県内はもとより県外の仕事も積極的に請け負います。今は古民家の床の間に大津壁を施工する仕事を進めています。大津壁というのは滋賀県大津周辺で見られる高級仕上げ。現地で採れる色の付いた土と石灰などを合わせ、こてで平らに押さえながら、つるつるした手触りの壁に仕上げていきます。さらに、「泥だんごを思い浮かべてもらうと分かりやすい」(平嶋さん)ように、大津磨きと呼ばれる磨きを施すと、ピカピカに光るそうです。
昔ながらの日本家屋の良さが再認識されるのに伴い、味わいを持つ左官仕事の需要は増えています。その一方で、平嶋さんは「伝統の左官工事を継承することが難しくなっています」と警鐘を鳴らします。「今は若い左官職人が不足しています。塗らせてもらえるようになるまで最低でも3年から5年。下積みが長いために若者が定着しないのかもしれません。だからこそ、私たちが左官業の魅力を若い人に発信する環境づくりをしなければいけませんね」と、しみじみ語ります。
人懐っこい笑顔が印象的な平嶋さんは、「モットーは仕事を楽しむ。左官の仕事って、本当に面白いと思いますよ」と、うれしそう。「自然相手なので、天気によって、季節によって仕上がりに違いが出ます。また、塗っては乾かして、また塗るという作業を何度も重ねるので、時間もかかります。でも、お客さまと一緒に、コミュニケーションをとりながら一つ一つ作業を進める過程が楽しいです。仕事になっても、ならなくても構いませんので、壁のこと、土のこと、クロスのこと、何でもいいので相談してください」
(取材年月:2020年3月)
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漆喰など伝統の技生かす左官プロ
平嶋勇一プロ
左官
合同会社ヒラシマ
豊富な経験と知識からカタログから選ぶだけでなく、お客様と色や素材・模様などを一つ一つ吟味しオリジナルな空間を作ることが出来ます。お客様の想いを形にします。
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