30トンの機械も工場に搬入、重量物運搬・据付のプロ大村俊介

30トンの機械も工場に搬入、重量物運搬・据付のプロ

大村俊介

何度も現場に赴き検討する緻密な事前計画と、職人の機動力が強み

　「これまで、リサイクル施設に30トンの機械を、薬品工場には高さ約8メートルのタンクを運んだことがあります。他に、巨大な銅像の移設を任されたこともあります。特に重い物は、クレーン車2台でつり上げていくんですよ」

　そう力強く話すのは「伸成工業」の代表、大村俊介さん。工場などに必要な産業機器を運び込んで設置したり、入れ替えたり、重量物の搬入や据え付け、解体・撤去工事を手掛けています。

　ダイナミックな重労働という印象を受けますが、肝になるのは事前計画。扱うものが数十トン、数メートルに及ぶことから緻密に検討を重ねていきます。
　「ミスがあると大事故につながりますから。万全の態勢で臨むためにも、工事の2カ月前からお客さんと打ち合わせをすることもあります。『これを先に入れて、次はこれ。この機械は大きいから、工場の建築を待ってもらって上から入れようか』と工程を話し合い、重機や道具を選定します。何度も現場に行き、寸法を測って、問題ないという確信を得てから着手します」

　時には、運搬物のサイズに対し開口部がギリギリで、隙間が10センチほどしかないケースもあるそうです。

　細部にまで神経を行き渡らせ、慎重を期す大村さん。「当社の強みとして、機動力も挙げられる」と言います。

　「全社員のうち20代が半数以上を占め、みな勢いがあり動きが俊敏なんです。施工が速いと、お客さまにご迷惑をおかけする期間も短縮できます」。仕事の正確さとスピード。顧客の期待に応えるために、大村さんがこだわるポイントです。

21歳で重量鳶の世界に入り、形が残る重量物の扱いにやりがいを見いだす

　大村さんは、日本海に面した富山県魚津市出身。中学校を卒業してすぐ、地元のすし司店に修行に入ります。
　「父から『いろんな人を見て、社会について勉強してこい』と勧められました。実直な人柄の大将に付いてすしを握りながら、人との接し方などを学ばせてもらいました」

　程なく足場の組み立て・解体業に就きますが、21歳の時、兄が携わっていた重量鳶（とび）の世界へ進みます。
　「足場は役目が終われば、ばらしてなくなってしまいますが、重量物は、一度備え付ければ何十年もそこにあります。形として残るところに、やりがいや面白さを見いだしました」

　腕を磨き、27歳で個人事業主として独立。「大村さんとなら、長いお付き合いができる」と声をかけてくれる事業者の言葉が後押しとなりました。
　「まわりが『無理だろう』と言うような難しい案件もお断りせず受けていたので、その気概を認めてくださったんでしょうね」

　当初は一人親方として活動。依頼が入るたびに知人に声をかけ、サポートを得ていました。現場を重ねるうち、顧客と誠実に向き合い、仲間への思いやりを忘れない大村さんを慕う人が集まり、2016年に伸成工業を設立します。

　「20代で独り立ちをする時は、まったく躊躇はなかったし、負ける気がしないほど強気でした。しかし、30代になり株式会社にした時はすごく責任を感じましたね。しっかり働いてみんなを守っていかなくてはと、身が引き締まりました」と経営者としての表情を見せます。

「自分たちにできることはやる」の心意気で、困りごとに対処していきたい

　「当社のお客さんは事業者の方なんですが、ある時、個人の方から『強風で小屋が飛ばされたので、処理してほしい』と電話がありました。困っている人がいれば力になりたいと思っているので、本業以外の相談にも応じています」

　頼まれたら、やる。そんな信念を大事にしている大村さんのもとでは、工場で使う機械のメンテナンスや修理などにも対応しています。「例えば鉄板1枚にしても、手際よく取り外す方法はないかと、自分たちが持っている知識や経験をフルに活用しています」

　常に技術の研さんに努め、作業の精度を上げている大村さん。会社を率いる立場から、組織としての力を意識することも増えました。
　「若い職人たちのことを信じて、任せるということを心掛けています。自分の頭でしっかりと考えさせないと伸びません。できるだけ口は出さず、成長を見守ることで、一人一人の能力を高めていきたいですね」

　人材育成に励むのは、全国展開も視野に入れているからだとか。「取引をしてきた配管工事の会社さんが、『ぜひ関東に支店を出してほしい』と言ってくださったんです。コツコツと信頼関係を築いてきた成果として、ありがたく申し出を受けたいと思っています」

　仲間を増やして基盤を整え、事業を拡充することで、より多くの困りごとに対処できる。関東への進出は、その第一歩となりそうです。
　「一緒にがんばってくれる同志と共に、これからも『できることはやる』という姿勢を貫いていきます」

（取材年月：2022年6月）

仕事の正確さとスピードを強みに、重量物の搬入や据え付け工事などに対応

何度も現場に赴き検討する緻密な事前計画と、職人の機動力が強み

21歳で重量鳶の世界に入り、形が残る重量物の扱いにやりがいを見いだす

「自分たちにできることはやる」の心意気で、困りごとに対処していきたい

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