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港区・青山の地で200余年の歴史。庶民の味方として質店を営む10代目

創業200余年の港区・青山にある吉川質店十代目

吉川元浩

創業200余年の港区・青山にある吉川質店十代目  	吉川元浩さん
吉川商事株式会社(吉川質店)内観

#chapter1

質入れした品物を担保に融資されるので、借り過ぎる心配がないのが特徴

 創業は江戸時代で、200年あまり港区・青山で質屋業を営む「吉川質店」。現在は、十代目の吉川元浩さんが仕事の指揮を執っています。

 質店の始まりは鎌倉時代といわれ、品物と引き換えにお金を借りる「質預かり」というシステムは、“庶民の味方”として存在してきました。最近では、リサイクルショップと同様に「買い取り」も行っています。

「カードローンなどで手軽にお金が借りられる時代ですが、質店では、質草(持ち込んだ品物)の査定に応じた金額を融資するため、借り過ぎる心配がなく、取り立てもありません。身分証明書があれば融資が可能で、手続きも約5~10分と短時間ですみます」

 取扱品目は、ロレックス、オメガなどの時計、貴金属、宝石、エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネルなどの高級ブランドのバッグ、カメラ、楽器、スマホなどです。「状態が良いほど査定額は高くなります。一般的に、質預かりより買い取りのほうが相場の影響を受けないことなどから高値がつきます。状態が悪くても取扱可能な品物であれば、100円でも値をつけます」と人情を見せるのも質店らしいところです。

 融資期限は3カ月。期日までに元本+利息を返済すれば、品物は手元に戻ります。返済が難しい場合は、3カ月後に利息のみを支払えば、さらに3カ月間預かり期間の延長が可能。元本の返済も利息の支払いも困難な場合は「質流れ」となり、品物の所有権が質店に移行します。

 経営者が一時的な資金繰りで質入れしたり、高齢者が生前整理で品物を持ち込むことが多いそうですが、若い世代にもリサイクルショップのような感覚で質店を利用してほしいと吉川さん。「最近では、楽器も取り扱っています。例えば、ギターなら先ごろ倒産した米国のギブソンは中古市場で値が上がり始めています。サックスならセルマー、新品同様のヤマハなども値がつきやすいです」

 買い取れる品物かどうか写真を撮って見せるのもよいそうで、手間がかからないので遺品整理にも活用してほしいと話します。

#chapter2

宝石鑑定とブランド品の真贋を見極める目で適正価格を提示

「信用、信頼が第一」をモットーにする吉川さん。「いいものには高値をつけます。専門知識により、適正価格の提示には自信があります」と老舗の矜持を見せます。

 宝石の鑑定に関しては、吉川さんはGIA(Gemologist Institute of America=米国宝石学会)の「GIA.GG宝石鑑定士」の資格を保有。店には、宝石を分析する最新機器を揃え鑑定を行っています。

 ブランド品についても、専門業者による中古ブランド品のオークション運営に携わる中で数多くの本物に触れ、真贋を見極める目を養ってきました。さらに、「ATF全国質屋ブランド品協会」主催の勉強会などでスキルを研鑽。吉川さんは「バッグなら手触りと臭いで、本物か偽物かある程度は判断できる」といいます。

 また、「信用・信頼が第一」の理念は、質預かりの品物を保管する倉庫にも表れています。「100㎡ほどの広さで、美術館でも使われる大型空調を導入。精密機器や皮革製品は、湿気が大敵なので、湿度管理を徹底しています。セキュリティも万全です」

 倉庫へのこだわりには、老舗ならではのエピソードが……。
「第二次大戦中、空襲でこのあたりも焼け野原になりましたが、当時の倉庫が土蔵だったことから焼けずに残りました。そのおかげで、戦争が終わってからお客さまに品物を返すことができ、とても喜ばれたそうです」
 預かった品物は大切に保管するという姿勢は、この時から今に受け継がれているのです。

吉川商事株式会社(吉川質店)内観

#chapter3

高級ブランドを取り扱うリユースショップもオープン

 吉川さんは質店のほか、高級ブランドのバッグなどを扱うリユースショップをオープン。人気が高く入手困難なエルメスのバーキンや美品のシャネルが充実。仕入は主にオークションで、吉川さんがいいと思ったものだけを厳選しています。
「現在も、偽物がかなり流通しています。それゆえ “偽物を扱わないのが質店”という保証になるような鑑定会社を目指しており、品質には自信があります」と吉川さん。

 現在、東京の質店は約340軒(東京質屋協同組合加盟店)。吉川さんが入社した13年前と比べて半減しているそうです。後継者不足の同業界にあって、吉川さんは未来を見据えます。
「物販を開始したことで、質店だけではなかなか実現しなかった地域イベントに協賛するなど、2020年の東京オリンピックに向けて社会貢献もできるようになりました。中古市場では、ヴィンテージが一つのキーワード。質店の新しい役割として、長く使えるいいものを提供しながら、これからもお金に困ったときの相談窓口として役に立ちたいと思っています」

(取材年月:2018年12月)

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専門家プロフィール

吉川元浩

創業200余年の港区・青山にある吉川質店十代目

吉川元浩プロ

質店および店舗運営

吉川商事株式会社 / 吉川質店

創業200余年の実績で、「信用・信頼が第一」がモットー。宝石や貴金属、ブランド品に関しては確かな鑑定力で、質預かり、買い取り、物販品においても適正な査定価格を提示している。

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