研究と臨床による性感染症予防と治療の専門家
北岡一樹
Mybestpro Interview
研究と臨床による性感染症予防と治療の専門家
北岡一樹
#chapter1
関東を中心に、全国に八つのクリニックを展開する「医療法人社団予防会」では、性感染症の検査をシステム化。利用者の負担が少ない効率的な検査と治療体制を組んでいます。
新宿駅東口から徒歩約5分と、アクセス便利なビルの一室にある「新宿サテライトクリニック」の院長・北岡一樹さんは、性感染症に加えてデリケートゾーンの専門外来として治療を行うほか、保険適用外となる性感染症検査を中心に薬剤耐性菌保菌検査などを実施。避妊薬(ピル)や勃起機能低下治療薬(ED薬)も処方しています。
「性感染症は、性行為の経験があればどなたでも感染のリスクがあります。性器の違和感やかゆみなどの自覚症状があって受診される方が多いですが、症状が出ないケースが6~8割と見過ごされることも少なくありません。自然治癒はほぼ期待できず、発覚が遅れると治療に時間がかかる上に、不妊にもつながりかねません」
検査・治療とも15分程度と短時間な上に予約も不要。内容によっては当日中に診断を得ることが可能です。また、自宅で採取できる検査キットも用意。クリニックを受診した場合も含め、結果は人目を配慮して無地封筒で郵送し、パソコンやスマートフォンからも確認できます。
「性感染症については、必ずしも正しい情報が発信されているとは言えず、国内のガイドライン整備も道半ば。予防に積極的に取り組んでいる医療機関も十分とはいえないのが実情です。例えば、欧米では標準的なカンジダ・細菌性膣症の再発抑制療法を施行していますが、日本ではカンジダ膣炎などのデリケートゾーンのトラブルについて専門的に取り組まれていません。当方は、この分野の先端研究に携わる研究医として、欧米レベルのエビデンスに基づいた予防と治療に力を入れています」
#chapter2
自宅に書籍が豊富にある環境に育ち、愛読書はカビの図鑑だったという自称“菌オタク”の北岡さん。小学4年生のとき、バースデープレゼントにリクエストしたのは顕微鏡。レンズ越しに初めて目にした極小の異世界の出来事に、たちまち魅了されます。
「肉眼では決して見えないのに、確かに何ものかが存在していて、しかもそれらが互いに干渉しあいながら活発に運動している。子どもの目にも、なんとドラマチックな光景だろうと衝撃を受けましたね」
人間と同じように生命活動する生き物への驚きから「不可思議な動きのメカニズムを解き明かしたい」という欲求が芽生え、やがて人体への興味や医療への関心へと変化していったそうです。
医学部に進み“オタク道”を究めようとするかに見えて、実は学生時代の北岡さんは、空手や落語といった趣の異なる分野も愛好。それぞれの賛同者を募り、新しいサークルを立ち上げるなど、生まれ持った行動力とリーダーシップを余すところなく発揮しました。
「大学院では細菌学を専攻し、なぜ人が病気になるのか、科学的に解明していく研究も興味深かったのですが、それよりももっと実生活に即した分野に、培った知見を役立てたいという思いの方が大きくなっていたんです」
クリニックで診療にあたりながら、薬剤の開発・販売を目指すベンチャー事業にも従事。臨床医として、研究医として、子どもの頃から心をひかれた微生物の一つ、細菌が及ぼす影響を探求しています。
#chapter3
「正確な情報が少なく、検診の機会も少ないために放置された結果、細菌が子宮や卵管にまで及んでしまった方を、これまで何人も目にしてきました。不妊という深刻な事態に陥り、後悔の涙を流す方をこれ以上増やさないために、早期発見、早期治療の重要性を伝え、意識を高めていくことが急務だと思っています」
治療が困難な重度の状態になる前にと、予防会全体で定期検査を促し、SNSで発信しています。
北岡さんは、「革新的な知識や技術は、社会で活用してこそ意味がある」との考えから、予防薬の新規開発にも注力しています。
「現在、早稲田大学で研究員を務めており、性感染症に対する新たなアプローチとして東京都のスタートアップコンテストに応募しました」
さまざまな業種の起業アイデアが発表される中、「ファージを用いた性感染症・不妊予防のゲームチェンジ」で2023年の優秀賞を獲得しました。
「医療界だけの学術コンテストではありませんでしたので、世の中の反応が分かり、ニーズがあると手応えは感じています。2024年には、細菌を食べるウイルス“ファージ”を用いた性感染症予防薬の社会実装に向けて、バイオベンチャーを設立しました」
北岡さんは、初めて顕微鏡をのぞいた時のように輝きに満ちた目で、誰もが明るい未来を迎えられるよう、日々の診療や新薬の開発・導入にまい進しています。
(取材年月:2024年4月)
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Profile
研究と臨床による性感染症予防と治療の専門家
北岡一樹プロ
医師
医療法人社団予防会新宿サテライトクリニック
大学研究員として日々進化する細菌学の研究・分析に参画、並行して性感染症診療クリニックで日々の臨床に携わり、研究と治療の両面から予防医療の進化に貢献。新たな予防法の研究・開発・実用化にも取り組む。
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