かけがえのない時を利用者と共に刻むプール安全管理アドバイザー
植松正樹
Mybestpro Interview
かけがえのない時を利用者と共に刻むプール安全管理アドバイザー
植松正樹
#chapter1
主にスポーツ施設で管理運営を担い、人々が安全に水と親しめる環境づくりと啓発に努める「ウォーターセーフティプロモーション」。
代表でプール安全管理アドバイザーの植松正樹さんは「例年、夏になると報じられる水の事故。国土を海に囲まれ、川や湖、プールなどで水に親しむ機会も多い私たちですが、当事者にならない限り、あまり自分ごととして捉えられてはいないのではないでしょうか」と呼び掛けます
「安全は決して“当たり前にあるもの”ではありません。当方では事前に親水スポットやウォーターレジャー施設ごとに、高い水準の安全対策を構築。有資格の監視責任者のもと、監視スタッフを配置して直接業務にあたるほか、学校教員や課外活動のリーダー、宿泊施設やレジャー施設の従業員を対象に、安全管理講習を実施。また広く情報発信するなど、水の事故を未然に防ぐための活動をしています」
講習会には、水の安全管理に関する複数の資格と、豊富な現場体験を持つ植松さんが登壇。さまざまな事例をもとに、リスクマネジメントのノウハウを提供しています。
2024年からは、学童クラブやイベント開催の団体向けにライフジャケットのレンタル業務をスタート。多数のライフジャケットを購入するコストや保管場所に頭を悩ませることなく活用しやすくすることで、ライフジャケット着用の普及とともに安全教育の広がりを目指しています。
「救急救命の知識や技術も大事ですが、当方では現場のリスクを正確に抽出し、監視スタッフ全員と共有し的確な対策を講じた上で、事故やトラブルの発生を未然に防ぐ取り組みに注力しています。この取り組みは体力や泳力に関わらず、誰でも実践可能です」
#chapter2
学生時代にプールや海の監視アルバイトから、都内ビルメンテナンス会社で大小の施設の立ち上げや管理運営業務と、水の安全に携わってきた植松さん。
プライベートでは地域のライフセービングクラブに所属。社会人ボランティアとして神奈川県茅ヶ崎市の海岸を見守るなど、30年以上にわたり、人と水との関わり方を見つめてきました。
「新潟県の海で従事した臨海学校のアルバイトで、プール監視員やライフセーバーが『人の命と直に向き合う存在』と知り、人生をかけて取り組む意義のある仕事と考えるようになりました」
就職後は、スポーツ施設の管理運営に参画するための提案書作成や受注後の実務も担当。数多くの現場に足を運び安全対策を担うようになると、「行政側、そして施設運営側も、見守り以外の実践的な取り組みについて認識が乏しいのではないか」と、危機感を抱くようになったそうです。
「水難事故は起きてしまった時は大きく取り上げられますが、あくまで一過性のもので、次第に関心が薄れてしまいがち。『自分だけは、この場所だけは大丈夫だろう』というイメージが先行しているように思われます」
植松さんは、「潜むリスクを事前に見通す質の高い安全対策」と、「現場の空間全てを見守り、利用者への注意喚起や万一の時の迅速な行動ができる人的資源」の両方を兼ね備えることの重要性を説き、情報提供できる組織が必要と強く意識するように。
いくつものスポーツ施設や海、世界的なスポーツの祭典関連施設での監視業務、都内自治体からの依頼でプール安全管理講習の講師を務めるなどの実績を積み、2022年に法人を設立しました。
#chapter3
「例えば、監視スタッフは、普段はその場にいるだけと思われがちですが、実際はただ見ているだけの仕事ではありません。海外では公務員に準ずるほど専門性が高い職業として独立してる地域もあり、社会的に認知とリスペクトされる存在です。ただマニュアル通りに人数をそろえて見ていればいいというわけではないのです」
在籍するスタッフへの教育はもちろん、植松さんが提供する安全講習会では、座学に加え現場での実践的なワークショップを充実させています。
「参加者を利用者役と監視役の二つのグループに分け、実際に水に入るなどして想定できる事態や注意が届きにくくなる条件、死角になりやすいケースを予測。プールに設置する備品の配置や、思わぬ行動に対する危険などを再確認するのです」
さらには「現場の監視体制やマンパワーの強化だけでは実は不十分。利用ルールやマナー、施設の特徴について、その場にいる全ての人に周知し、共有することも私たちの努め」と強調。
「事前の注意喚起の呼びかけだけでなく、監視スタッフとお客さまとの良好なコミュニケーションも、リスク回避の大きな力となる」とアピールします。
「一日の終わりに、晴れやかな笑顔で水から上がるお客さまを見送ることが喜び」と話す植松さん。中には「あなたたちが居てくれるから、安心して思い切り楽しめた。ありがとう」と声をかけて行く人も少なくないとか。
「目指しているのは、施設運営者と監視スタッフ、お客さまが互いにリスペクトしあえる場所づくり。かけがえのない時を一緒に刻みましょう」
(取材年月:2025年1月)
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Profile
かけがえのない時を利用者と共に刻むプール安全管理アドバイザー
植松正樹プロ
プール安全管理アドバイザー
一般社団法人ウォーターセーフティプロモーション
30年以上スポーツ施設のプール、海辺の安全対策を担ってきた知見をもとに、運営側のリスクマネジメントを実施。監視員派遣や現場従業員に向けた教育を担当。ライフジャケットのレンタルも。
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