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外国人材の国家資格取得をサポートし、介護現場の人手不足解消を目指す

外国人介護士・SE等の国家資格取得を英語で支援する教育専門家

一木義典

一木義典 ひときよしのり
一木義典 ひときよしのり

#chapter1

ホスピタリティがあふれ、主戦力として期待されているフィリピン人介護職

 在留資格制度の整備で外国人材が活躍する舞台は年々広がっています。とりわけ介護職は、日本と東南アジア3カ国との経済連携協定(EPA)や特定技能などにより受け入れが盛んです。
 外国人を戦力として活用したい介護事業者に向け、学習支援サービスを提供しているのが「UG開発マネジメント」共同代表の一木義典さんです。

 「慢性的な人手不足に悩まされている高齢者介護施設で、外国人材は将来が嘱望される存在。特にフィリピンの介護職はホスピタリティにあふれ、施設利用者の信頼を得ている人も多いんです。チームリーダーなどの要職に就き、現場への貢献も見込まれますが、日常会話など最低限の日本語教育しか施されていないことも珍しくありません」

 一木さんは外国人が日本語力を高め、介護福祉士資格を取得するための教育プログラムを構築。主にフィリピン人の介護職が、国家試験に合格できるようサポートしています。

 「外国人材の多くは日本で長く働きたいと望んでいます。国家資格を取ると在留資格『介護』が認められ、事実上日本に永住することも可能。故郷から家族を呼び寄せることもかないます。施設側にとっても、優秀な人材の定着につながり、日本人を含む職員全体のレベルアップを図ることにもつながります」

 30年以上にわたる国際業務で英語習得に苦心した一木さん。指導の際は、受講者の主体性を尊重することを心掛けているとか。
 「中には、母国で高等教育を受けたものの職がなくて来日した人もいます。彼ら彼女らの熱意を信じ、決して押し付けにならないようにしていますね」

#chapter2

慣れ親しんだ英語で知識を定着させ、日本語文法の理解で問題を解く力を養う

 2021年度のフィリピン人の介護福祉士の合格率は25.3%。「言葉の壁に阻まれ、決して簡単ではありません」と一木さんは指摘します。
 「日本人向けの教材で勉強せざるを得ず、専門用語や漢字の読みが分からないためインターネットで意味を調べることもできないまま受験する人もいますので、学習方法の根本的な見直しが必要です」

 一木さんは、フィリピン人が慣れ親しんだ英語を使って必要な知識を説明した上で、日本語ベースで理解を深めてもらうという、段階的なプロセスを踏んで指導しています。

 「国家試験問題を中心に、介護のプロとして必要な情報を厳選した英語のオリジナル教材を開発・使用し、まずは英語で試験問題等の内容を把握してもらいます。漢字語彙を増やし、日本語と英語の基本構文の違いも英語で教えることで、主語の省かれた長い日本語問題文を読み解く力も身に付くのです」

 授業はオンラインで行うほか、月に1回程度のペースで受講生の職場を訪問して対面でも実施。自信がついてくると、笑顔で「もう先生の英語訳は要りません」と話す人もいるとか。
 「外国人が日本の国家試験で満点を取るとニュースになるぞ、と私も励ましています。日本語も向上して、勤務先の施設からも期待されているようです」と目を細めます。

 EPAに基づく外国人の介護福祉士候補者に対し、1人最大23万5000円の政府助成金が利用可能。さらに東京都などは独自財源で補助が上乗せされます。
 「税金が使われている以上、実効性の高い教育で結果を出すことが求められます」と気を引き締めます。

一木義典 ひときよしのり

#chapter3

システムエンジニアの育成も視野に、世界で活躍する人材を育てたい

 一木さんは一橋大学と米国のエール大学経営大学院を卒業。米国系経営コンサルティング会社で働いたのち、軸足を金融の資産運用分野に置き、日本とスイスの銀行、欧州の運用会社を舞台に、長く海外を相手にした仕事を続けてきました。

 「実務では、日常の英会話よりも高度な英語のスキルが求められました。母語以外の言語を職場で使えるレベルまで習得する難しさ、英語の奥の深さを幾度となく体験してきただけに、フィリピン人が日本語の試験問題に向き合う困難さは痛いほどよく分かりますね」

 2013年から、都市・不動産開発などを手掛ける「UG開発マネジメント」と事業提携。会社の新規事業として、2023年より外国人介護士向けの教育プログラムをスタートさせました。

 「私の故郷・茨城県で高齢者施設を運営している方から、『介護従事者が足りない』と嘆く声を聞き、自分のこれまでの海外業務経験でお役に立つことができるのではないかと考えました。労働力の確保は喫緊の課題であり、経営資源の一つである『ヒト』を育てることの重要性がいっそう増していることから、会社の新たな事業の柱に据えることとしました」

 当面は、介護分野にフォーカスしたいと語る一木さんですが、教材の内容を変えることで、介護と同様に人手不足が深刻なシステムエンジニア(SE)分野の外国人SE育成にも応用できると展望を描きます。
 「外国人材だけでなく、将来的にはアメリカなどで世界の一流エンジニアと渡り合える日本人人材の育成にも取り組みたいと思っています」

(取材年月:2023年12月)

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一木義典

外国人介護士・SE等の国家資格取得を英語で支援する教育専門家

一木義典プロ

人材開発

UG開発マネジメント株式会社

独自に開発した英語教材を使用。英語による試験問題の内容理解と日英両語の基本構文の把握により、日本語問題文を解く力を付けます。国際業務の経験豊富な講師が親切丁寧に指導し、資格取得を強力にサポート。

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