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脱落の危険性がある吊り天井「特定天井」の耐震補強工事に全国で対応

特定天井の耐震化に強みを持つ現場鍛冶工事の専門家

田中慎一

田中慎一 たなかしんいち
田中慎一 たなかしんいち

#chapter1

劇場やコンサートホールの音響効果が失われぬよう、現状復旧案を提案

 「当方では、30~200t規模の建屋を新築・増築・改修する際、鉄骨を溶接する鍛冶工事を専門としており、打ち合わせから作図、鋼材の加工、施工まで一貫して担います」

 そう話すのは、新潟県にMグレードの鉄工所を保有する、東京都千代田区の「田中工業」代表の田中慎一さん。中でも得意とするのは、脱落によって重大な危害を引き起こす恐れのある吊り天井として国土交通省が定めた「特定天井」の耐震補強工事です。

 「吊り天井は、ホールや劇場といった大勢の人が集まる大型施設に採用されています。昨今は地震が頻発しています。災害時に大きな被害を生まないためにも早急に対策を講じる必要があり、数々の現場を手掛けてきた私どもがお力になります」

 2017年に初めて受託して以来、着実に実績を積み、田中さんの元には特定天井の耐震化に関する相談が全国各地から舞い込むようになりました。

 「最初の案件は新潟県にある劇場で、ちょうど当社が製図ツールの3DCADシステムを導入した直後にご依頼をいただきました。立体的かつ精密な施工図を起こすことにより、不備なく仕上げることができました」

 劇場やコンサート会場は音響効果を最大化するため緻密に設計され、複雑な形状をしているのが特徴。単に筋交いなどの部材を足せばよいわけではなく、いかに音響能性を維持しながら耐震強度を高められるかが肝。田中さんはこれまでの経験を踏まえ、現場ごとに適した工法を提案しています。

 「どれだけ難しくとも、今まで描けなかった図面はありません。対応力を評価していただき、おかげさまで1年先までスケジュールが埋まっています」

#chapter2

21歳で鍛冶工事の道へ。ODAを経てかつての勤務先の社長に背中を押され独立

 1979年に新潟県柏崎市で生まれた田中さん。地元の工業高校を卒業し、大工職人や板金業を経て、21歳のときに現在の事業につながる鍛冶工事会社に勤めます。

 「金属の扱いについて一から修行を積み、さらなるステップアップを目指し上京。求人雑誌に『一人親方求む』と書いてあるような会社を転々としながら、現場単位で仕事をもらっていました」

 需要の多い東京で腕を磨いていましたが、2007年に発生した新潟県中越沖地震の後、かつての勤務先の社長から「戻ってこい」と連絡が入ります。被災状況が深刻な故郷を心配していたこともあり帰郷を決断。あいさつをすべく社長の元に向かいますが、そこで「アフリカへ行ってくれ」と頼まれます。

 「ODA(政府開発援助)の関係で、某ゼネコンがアフリカ大陸西部にある島国カーボベルデで鉄工所を立ち上げるプロジェクトがあり、スーパーバイザーを探しているという話でした。社長にはお世話になりましたし、何より遠く離れた国の経済発展を支援することに興味が湧いたのでお受けすることにしたのです」

 約3カ月間、田中さんは現地で現場管理や技術指導に従事。2009年1月に帰国し、個人事業主として「田中工業」を創業しました。

 「国際舞台に送り出してくださった社長から『君の実力なら独立してやっていけるだろう。仕事もどんどん回していくよ』と背中を押してもらったのがきっかけです。すでに社長は一線を退かれましたが、今でもお付き合いさせていただいております」

田中慎一 たなかしんいち

#chapter3

地域のシンボルである施設を守るため、吊り天井の耐震化を図る新構法も開発

 2010年に法人改組し、2011年に1棟目の工場を、2014年には2棟目の工場を建設。現場で用いる鋼材の加工まで自社で請け負う体制を整えました。工場は、国土交通省から、適正な品質の建築鉄骨を製作する工場に対して与えられる「Mグレード(延べ床面積3000㎡、高さ20m以上)」の認定を受けています。

 順調に会社を成長させてきた田中さん。一つ一つの現場に誠実に向き合ってきた結果、今があると強調します。

 「『案件の大小は関係ない。常に質の高いサービスを提供してほしい』と、日頃から従業員にも伝えています。お客さまとの信頼関係が何よりも大事ですから」

 フットワーク軽く、多方面からの要望に応えたいと少数精鋭で活動。ニーズの高まりを受け、力を入れていきたいのは特定天井における新工法の開発だと言います。

 「耐震化にあたっては、つり材を既存の柱に接合しなければなりませんが、その方法は溶接するか、ボルト用の穴を空けて結合金具のブラケットを取り付けるかの2択です。ただし、溶接には火災のリスクが、ブラケットには耐久性が低下するリスクが付きまといます。これらを解消する第三の構法を検討しています」

 地域の人たちが集う建物の安全性に配慮する田中さん。「講演会や発表会が催されたり、観劇や音楽鑑賞をしたりする施設は、地域の方にとってシンボルに違いありません。私たちが培ったノウハウでしっかり守り、皆さまの豊かな暮らしを支えていきたいですね」と語ります。

(取材年月:2024年2月)

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専門家プロフィール

田中慎一

特定天井の耐震化に強みを持つ現場鍛冶工事の専門家

田中慎一プロ

鍛冶工事業

田中工業株式会社

30~200t規模の建屋を新築・増築・改修する際の現場鍛冶工事を請け負う。特に、劇場やホールといった特定天井の建造物の耐震化工事を得意とし、日本国内にとどまらず、海外での施工実績も持つ。

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