細部までこだわった馬のリアルフィギュアを作る専門家
大和田咲綺
Mybestpro Interview
細部までこだわった馬のリアルフィギュアを作る専門家
大和田咲綺
#chapter1
「馬を愛する皆さまに、世界に一頭だけの馬を、世界に一つだけのフィギュアにしてお届けします」
そう語るのは、馬専門のリアルフィギュア工房「Sense Paddock」を運営する大和田咲綺さん。型は使わず、オールハンドメイドで一体一体丁寧に作り上げ、唯一無二の作品を生み出しています。
「私自身、競馬が大好きで制作するときは馬をじっくり観察します。出来上がった際には、お客さまにも真に迫る姿をじっくりと堪能していただきたいですね。屋号も、レースに出走する馬の様子が見学できる『パドック』からつけました」
大和田さんは幼少期から馬に親しんできた経験を生かし、立体的な骨格やしなやかで隆々とした筋肉、滑らかな毛並みの色、白斑などの模様と、個性を忠実に反映します。
「工程の中では、モデルとなる馬のことを知る時間が最も好きです。お客さまの愛馬であれば、お聞きしたエピソードを、競走馬であれば、過去のレース映像や記事をもとに、外見的な特徴はもちろん、その馬がどんな性格をしているのかをできるだけ読み取り、『魂』が感じられる作品になるよう制作に臨んでいます」
リアリティーを追及し、ありのままの姿を表現するため、顧客とのコミュニケーションも大切にしていると言います。
「細部まで再現できるよう、事前に馬の写真や動画を送っていただきます。制作途中には進捗状況を報告し、完成まで密にご要望や改善点を聞き取るので、お客さまのイメージに限りなく近づけることができます。同じ馬好きとして、友達と話す感覚で打ち合わせしましょう」
#chapter2
大和田さんが「Sense Paddock」を始めたのは2023年1月のこと。「2020年の夏、産休中に何か熱中できることに挑戦したい」と思案し、ひらめいたのがフィギュアづくりでした。
「ちょうどその頃ディープインパクトの命日が近かったこともあり、最初のフィギュアはディープインパクトにしようと決めました」
ディープインパクトは圧巻のパフォーマンスで日本の競馬史に残る名馬であり、広く知られる存在。制作過程をSNSにアップしたところ、フォロワーから販売を勧められたのがきっかけで、工房の立ち上げを決めたそうです。
「私は美術大学出身で、学校ではイラストを学んでいました。専門的に勉強していても、絵を描いているときは『うまく描けるだろうか』と不安があったのですが、フィギュア制作では迷いや戸惑いは一切なくて。むしろ、難しいオーダーが来てもプレッシャーを感じることなく、『絶対にできるという自信がありました」
馬のフィギュアを自作するときは、馬主らへの申請業務が発生するケースもあります。競走馬では馬名の使用に始まり、ジョッキーを乗せる場合は本人と勝負服をデザインした馬主から許諾をもらった上で制作に取り掛かっています。
「手続きは大変ですが、労力を要してもお客さまにとって思い入れのあるワンシーン、お気に入りの表情、立ち姿などをカタチにすることがやりがいです。権利の関係上、請け負えない馬は出てきてしまうかもしれませんがまずはご相談いただければと思います」
#chapter3
2024年、大和田さんは、用具や雑貨の販売、ワークショップ、講習会など馬に関する「モノ」「コト」が集まったイベント「ホースメッセ」に出店を果たしました。
「ホースメッセではフィギュアを見たお客さまの反応や意見を直接受け取ることができ、今後に生きる経験になりました。今後は一番のターゲットである競走馬のファンが集まる場に出店したり、JRA(日本中央競馬会)や地方競馬などで開催される催しにも参加してみたいですね」
また、フィギュアの売り上げの一部を、引退馬の支援に充てるべく構想中。一頭の馬を生涯養うには年間で約240万円、出会ってから15年生きると考えたら3600万円近くのお金が必要だと話します。
「何頭もの余生を支えるのが理想ですが、まずは一頭から救うことを目指します。馬を起点に私とお客さまと三角形になって、制作・購入を通してサポートするサイクルを作れたらみんながハッピーになれますよね。地道に積み重ねて目標を達成したいです」
さらに大和田さんは、許可取りを通じて競馬関係者とのコネクションを強化し、ジョッキーとコラボレーションすることも展望しています。
「例えば勝利ジョッキーのサインが入ったフィギュアを作って、競馬雑誌のプレゼント企画で特典にできたらいいなと思っています。多くの人に工房を知ってもらう機会にもなりますし、何よりファンの人に喜んでもらえれば幸いです」
(取材年月:2025年2月)
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Profile
細部までこだわった馬のリアルフィギュアを作る専門家
大和田咲綺プロ
造形師
Sense Paddock
馬専門のリアルフィギュア工房。型は使わずに針金で骨組みを形成するため、あらゆるポーズに対応可能。依頼主の思いや馬の内面までも汲み取り、世界に一つだけのリアルフィギュアを生み出す。
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