中小企業の知財を守る弁理士
岡田宏之
Mybestpro Interview
中小企業の知財を守る弁理士
岡田宏之
#chapter1
東京の主要都市として多くの鉄道路線が乗り入れる「池袋」。多くの人混みであふれる利便性抜群の駅構内を抜けて徒歩約5分、ひっそりとそびえ立つビルの中に「パール国際特許事務所」があります。同事務所は都内を中心に多くのクライアントを抱え、特に弁理士会の埼玉委員会に所属している関係で、地理的にも利便性のある埼玉県内での活動にも力を入れています。
「現在は大企業から中小企業まで、さまざまなクライアントと仕事をさせてもらっています。今後は特に中小企業の知的財産を守るためのサポートに力を入れていきたいですね」と語るのは、同事務所の代表を務める岡田宏之さん。中小企業に関しては、「特許をどう利用するか」に始まり「どう取得するのか」を知らない会社が意外に多いといいます。そうしたクライアントと仕事をする上で岡田さんが重視するのが、綿密なコミュニケーションを取ること。可能な限り直接会って話をすることで、弁理士とクライアント間の相互理解を深めていきます。「クライアントがこちらの意図を理解し、また、こちらがクライアントの意向を全て汲み取っていれば、意味のある特許取得に向けて円滑な動きができると思います」
また、コミュニケーションを取ることで、発明の出てきた背景をつかむこともできます。それを知らなければ、特許の権利を取得する方向がぶれ、クライアントの希望が特許に反映されないという事態になってしまうこともあると言います。それでは、守りたかった権利を守ることができません。特許は取得することが目的ではなく、あくまでも自分・自社の権利を正当に守るために取得するものなのです。
#chapter2
多くの商品が登場している現在でも、アイデアが無数にあるように、特許を取ること自体は難しくありません。しかし、本当の意味で「使える特許」を取るとなると、取得のハードルも上がってしまうのが現実。だからこそ、岡田さんのような弁理士の助けが必要になります。とはいえ、特許はあくまで「保険」のようなもので、取得しただけで利益に繋がるわけではありません。ただし、開発した商品の模倣品や粗悪品を法的に規制することで、シェアを守ったり、流通を限定させたりという恩恵はあります。また、取得した特許について大手企業とライセンス交渉をする、事業を辞めた際に権利を売却するなど、意外な利用法が生まれることもあります。
有名な話では、ある製品が流通し始めたころ、2種類の製品が激しいシェア争いを繰り広げました。某大手メーカーはシェア争いに敗れたものの、双方の製品に関する特許を取得していました。結果、シェア争いに敗れはしたものの、ライセンス収入で利益を出すことに成功。大企業だからこその戦略かもしれませんが、中小企業にとっても同様のケースが発生しないとも限りません。また、特許の取得は信頼の担保、宣伝効果という意味でも機能する部分は必ずあります。岡田さんはそうした特許の意味や重要性を、中小企業に広めていきたいと語ります。
#chapter3
岡田さんの元には、商品として完成していないばかりか、アイデアの段階で相談に訪れる人もやって来ます。そのアイデアが実現可能であれば、クライアントと協力して製品の打ち合わせなどを行い、特許取得に向けて中身を具体化していきます。反対に具体的なアイデアが定まっており、取得に向けた申請を依頼された場合は、特許取得までの最短距離をサポートするなど、クライアントの要望によって仕事の進め方はさまざま。また、特許を取るべきものは取る、取る必要のないものは取らないという見極めが大事だと主張。特許取得には、自身の発明についての情報を公開することになり、場合によっては自分たちのノウハウを世にばら撒くことにもなってしまいます。商品の発売時期に合わせて特許を取得する、場合によっては取得しない方がいいなど、戦略的なサポートも充実しています。
元々は大学の研究所で勤務していた岡田さんですが、研究によって世の中の役に立っているか確信を持つことができなかったと言います。また、発明者はゼロから物事を生み出していきますが、自分にそうした能力が不足していると痛感。一方で、弁理士のように一を何倍にもしていくような能力にこそ、適正があると気付いたそうです。その後、弁理士になろうと決意して研究所を退職し、現在の事務所で下積みを経験しながら試験に合格。現在は先代から指名を受けて代表に就任しました。「目に見えて人の役に立つ仕事がしたい」と考えた過去の経験は、中小企業の財産を守るという今の仕事に生かされています。
(取材年月:2013年12月)
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Profile
中小企業の知財を守る弁理士
岡田宏之プロ
弁理士
パール国際特許事務所
コミュニケーションを重視することで、クライアントの意向を汲み取った「使える特許」取得をサポート。中小企業にとっての「知財のかかりつけ医」として、商品やアイデア段階からの相談にも対応している。
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