ちょっとぜいたくな洋食で手作りの喜びと家族の絆を育む料理講師丸山朝子

ちょっとぜいたくな洋食で手作りの喜びと家族の絆を育む料理講師

丸山朝子

食材のカットから仕上げまで手を動かし、調理のコツを学ぶ実習形式の料理教室を開催

　「料理は難しくて面倒だと感じていませんか？　自転車と同じように、少し訓練すれば誰でも上達するものです。女性はもとより、男性もぜひお越しいただきたいですね」と語るのは、「アトリエ・チト」の丸山朝子さん。東京都品川区で少人数制の料理教室を開いています。

　「近年流行している時短レシピではなく、ちょっとぜいたくしたい週末にいただく、フレンチをベースにしたおしゃれな洋食を、対面による実習形式で手ほどきしています。実際に手を動かすことで、食材の扱い方や調理のコツをしっかり吸収できます」

　足を運ぶのは、料理好きのマダムや、海外旅行で食べ歩きが趣味の30～40代の男女など。赴任先から帰国した人が現地の味を懐かしんで通うケースも多いそうです。

　「作業は分担制ではなく、食材を切るところから仕上げまで全てご自身で行うスタイル。自宅で再現しやすく、手作りの喜びを実感できます。業務用食洗機完備で洗い物は不要ですから、実践に集中してもらえます」

　季節の素材を用いたポタージュスープやタルト、ラムシチュー、チキンソテー、ローストビーフなど、メニューは多彩。試食の際は、希望者に有料でワインを提供しています。

　「作ったものは全て持ち帰れるのも特徴です。家族に『おいしい』『ありがとう』と言われ、また習いに来る方が多いんです。料理は人を幸せにするコミュニケーションツール。家族の絆が深まり、会話が増えるといった声も頂戴します」

　ソムリエの資格を取るべく勉強中の丸山さん。ワインと相性が良い料理を組み合わせた、ペアリングのレッスンも考案中です。

フランスで料理や製菓のプログラムを修了し、プロダクトデザイナーから料理人に転身

　ものづくりが好きだった丸山さんは、専門学校で製品を企画設計するプロダクトデザインを学び、住宅設備機器メーカー「TOTO」に入社。化粧鏡やトイレットペーパーホルダーなど水周りのアクセサリー開発に取り組みました。

　「2000年頃、会社の早期退職制度を利用して渡仏を決意。以前から、フランスのデザイナーや映画に憧れていたんです。ただバカンスだけではもったいないので、本格的に料理を学ぶことにしました」

　2001年、パリの有名高級ホテルが母体の「エコール・リッツ・エスコフィエ」へ入学。料理と製菓のプログラムを専攻し、ディプロム（修了証）を取得します。

　「『ものづくり』という点で料理と商品開発は通じるものがあり、とても楽しかったんです。郷土料理のクラスも受講し、食文化についても知見を深めました」

　帰国後はフレンチレストランやパティスリーで腕を磨き、2016年に製菓などの材料を扱う富澤商店へ。店頭で調理を実演するデモンストレーションを担当し、2018年から自由が丘のクッキングスタジオで講師となりました。

　「最初は人前で話すのが苦手でしたが、お客さまの生の声を聞けることにやりがいを覚えました。『口もきかなかった息子が、お母さんこれまた作ってと言ってくれた』という涙ながらの報告を聞いた時は、料理人になってよかったと感じ入りましたね」

　好きな仕事で、80歳まで社会参加したいという目標を持っていた丸山さんは、2023年に独立。「アトリエ・チト」を創業しました。

アトリエはキッチンスタジオとして貸し出し、レシピ開発やスタイリングもサポート

　「忙しい子育て世代は、平日はスーパーのお総菜でもいいと思います。休日に手作りすれば、家族で食卓を囲む豊かな時間が生まれます。甘味料など添加物を含まず、素材本来の風味を味わう中で味覚が変わり、食への意識が高まるきっかけにもなります。食事づくりは義務ではなく、週末の楽しみにしてほしいですね」

　教室名の「チト」は、フランスの児童文学「みどりのゆび」から。手で触れた植物がぐんぐんと育ち、花も咲かせる不思議な力を持つ少年の名前です。

　「小麦粉や卵といった食材を、人の手で素晴らしい料理に変えて人を幸せにするのは、チトくんと共通する営みだと感じています。食を通じて、皆さまの人生に彩りを添えるお手伝いができればうれしい限りです」

　アトリエは、キッチンスタジオとしてもレンタル可能。9～21時まで利用可能で、夜間や長時間の利用など時間に融通がきくのが強みです。

　「焼く、蒸す、煮る、など、多様な使い方ができるコンベクションオーブンや、業務用の冷凍冷蔵庫、発酵器などをそろえ、広々としたスペースで調理や試作ができます。毎日モップ掛けして床を清掃するなど、衛生管理も徹底しています」

　料理のセミナーやワークショップ、イベントのほか、メディア向けの撮影スタジオとしても利用可能。丸山さんはデザイナーとしての経験とフードコーディネーターの資格を生かし、企画からレシピ開発、スタイリングまで一貫してサポート。コンセプトや制作意図にそって食を演出しています。

（取材年月：2025年10月）

フレンチをベースにしたおしゃれな洋食で家族が食卓を囲み、喜びあふれるひとときを

食材のカットから仕上げまで手を動かし、調理のコツを学ぶ実習形式の料理教室を開催

フランスで料理や製菓のプログラムを修了し、プロダクトデザイナーから料理人に転身

アトリエはキッチンスタジオとして貸し出し、レシピ開発やスタイリングもサポート

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