豊富な経験に基づく「防災の本質」を伝えるコンサルタント
髙橋洋
Mybestpro Interview
豊富な経験に基づく「防災の本質」を伝えるコンサルタント
髙橋洋
#chapter1
近年、日本各地で地震・大雨・台風・土砂災害などが相次ぎ、災害が「いつでも、どこでも起こり得るもの」として捉えられるようになってきました。「家族やペットを守るために何をすべきか」と不安を抱える人は少なくありません。
こうした課題に対し、一般家庭から自治体・企業まで幅広く防災の実践知を伝えているのが「行政書士高橋洋事務所」の高橋洋さんです。練馬区役所の防災担当やNPO役員、防災コンサルタントとして30年近い経験を生かし、家庭の防災対策や、福祉事業者のBCP、自治体職員の防災教育など幅広くサポートします。
行政や社会福祉協議会、町内会、マンションの管理組合などからの依頼で、防災をテーマにしたセミナーの講師を数多く担当。「防災の本質」をふまえ、自分自身の行動を考えるきっかけとなる場を提供しています。
「私が考える防災の本質とは、死者を出さない、被災者・避難者を出さないことはもちろん、できる限り自宅で安全を確保することです。避難所が当然の選択肢だと思っている方は多いですが、避難所で快適に眠れるでしょうか。例えばマンションの15階に住んでいてエレベーターが止まったら?在宅避難には条件がありますが、水や食料、トイレなど籠城作戦のノウハウを含め、まずは考え方の前提を知ってもらうことが大切です」
また、特に相談が増えているテーマが「ペットの防災」だといいます。
「避難所にペット専用スペースを設けている自治体はまだ限られています。ペットの防災は、ペットだけではなく、人間のための取り組みでもあります。過去の災害では、ペットがいるために避難をためらったり、危険な自宅に戻ってしまったりするケースも問題になりました。自身とペットを守れるよう、遠方での預け先を確保する、在宅避難に備えてペット用品を備蓄するなど、複数の選択肢を考えておきましょう」
#chapter2
高橋さんは、防災コンサルタントとして企業の支援も行っています。特に力を入れるのが、社会福祉事業者のBCP(事業継続計画)作成や訓練の支援です。
「災害時に最も困難な状況になるのは、自宅で訪問介護・看護を受けている高齢者や障がい者の方々です。福祉サービスは人命に関わるため止められません。福祉施設も含めて、まずは事業継続を最優先に、必要な行動計画を立てます」
現在、福祉施設や職員の災害対応力向上を目指す「福祉防災コミュニティ協会」の副理事長も務め、高齢者や障がい者が対象の福祉避難所などの普及活動にも取り組んでいます。
また、自治体内部での防災業務経験から、防災コンサルティング会社からアドバイスを求められることも多いそう。自治体が消防や警察、自衛隊と一体で取り組む大規模な災害図上訓練や、総合病院の災害時医療救護所マニュアル作成などの支援実績があります。
災害対策では、「想定外も想定のうちとして取り組むべき」と強調します。
以前、高橋さんが湘南地域の町内会で津波対策を尋ねた際、「高さ6メートル以下の津波想定なので防波堤で十分」と返されたことがありました。しかし周囲にはその地域よりももっと山側にも砂地が残っており、「この砂はどうやって運ばれたんでしょう?」と問い掛けたところ、過去の津波が運んだ可能性が示唆されました。
「後に東日本大震災が発生し、津波被害想定が大幅に見直されました。災害時は予期しないことも起こる。常にその前提で考えることが重要です」
#chapter3
当時、練馬区役所の建築部門で勤務していた高橋さんが防災分野へ踏み出す転機となったのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災でした。
「未曽有の大地震を受けて、役所内で地域の避難所を見直す動きがあり、各地区に担当をつけて学校や住民を交えて勉強会や訓練などを実施しました。ある地区の避難所(練馬区では「避難拠点」)の責任者をした際に、『もっと改善できるのでは』と提案したことが始まりでした」
その後、1997年に総務部(後に危機管理室)防災課に配属され、防災計画作成や訓練などに9年携わりました。
「行政だけでは限界があると痛感し、地域住民、消防・警察、インフラ事業者、企業など多様な団体と連携しながら、地域全体で防災力の底上げに取り組みました。現役の防災担当のときからBCPやペット防災に着手できたことも、今の活動につながっています」
役所勤務の傍ら、福祉防災を専門とするNPO団体にも所属し、知見を広げてきました。定年退職後は、防災都市計画研究所のシニアコンサルタントや、被災地でのボランティア活動、WEBメディアでの記事監修など、防災を軸に幅広く活動しています。
「『被災したときに役立った』『職員の災害対策への向き合い方が変わった』といった声をいただけるのがやりがいです。それぞれの考えや行動が変わるきっかけになれたらうれしいですね。多様な現場で得た経験があるので、地域や参加者に合わせて話題を選べる引き出しの多さには自信があります。防災について知りたいと思ったら、気軽にご相談ください」
(取材年月:2025年11月)
リンクをコピーしました
Profile
豊富な経験に基づく「防災の本質」を伝えるコンサルタント
髙橋洋プロ
防災コンサルタント
行政書士高橋洋事務所
「防災の本質」をふまえ、話題の在宅避難やペット防災までの防災セミナーを提供。福祉施設のBCP支援や自治体の大規模訓練などの実績も豊富で、区役所での防災業務や被災地ボランティアなど多岐にわたる経験を持つ
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /