あらゆるニーズに応える農園ビジネスのプロ
竹中均
Mybestpro Interview
あらゆるニーズに応える農園ビジネスのプロ
竹中均
#chapter1
美馬市脇町の吉野川沿いに、地域の耕作放棄地を開墾し作付面積を年々広げている元気な農園があります。小麦、蕎麦、米、露地野菜などを、無農薬もしくは低農薬で栽培している『はなみち農園』です。園主の竹中均さんは、朴訥とした雰囲気を持ちながら、自ら契約栽培の確約を集めてまわる「農園ビジネスマン」の顔も持っています。
現在、栽培している穀物や野菜は、県下の外食チェーンや個人経営の飲食店、米穀店、小売店など、すべて買い取り先も価格も決まっている契約栽培のもの。「新規就農したばかりの頃、白菜の市場価格が下がりすぎて運送費が高くつき、売ったはずなのに請求書が戻ってきたことがあったんです。このままではダメだと危機感を覚えたのが、契約栽培に踏み切ったきっかけでした」
当時は2012年、まだ徳島で契約栽培がさほど浸透していなかった時代に、お客さまのニーズに合わせて価格交渉ができる契約栽培に切り替えることを決意した竹中さん。まずは、青年就農給付金制度の給付金を使って従業員に農作物の栽培を任せ、自身は日々営業に出かけました。
「最初の2年はとにかく営業にまわったわけです。“作って欲しい野菜はありませんか”と。野菜で営業に来たのは初めてだとよく言われていましたね」
先手を打った営業が功を奏し、県内大手外食チェーンや飲食店などから、米や蕎麦、野菜など、徐々に引き合いが増えてきました。年々契約数も増え、軌道に乗ってきた頃、竹中さんの身近な人から小麦栽培の依頼が入りました。
#chapter2
「おいしいパンが焼ける、しっかりした味の小麦を作ってほしい」そう依頼してきたのは、竹中さんの妻、直美さんでした。パンづくりが趣味だった直美さんから、安心して食べられるおいしい国産の小麦粉を作って欲しいとオーダーがあったのです。昨今、ポストハーベスト農薬などが問題視されることも多い外国産の小麦。一方で、味がしっかり残り低農薬で栽培される国産小麦に世間の関心も高まっていました。
竹中さんは、早速小麦の栽培にとりかかりました。しかし、最初の数年は、小麦の味がうまく出なかったり、パンが膨らまなかったりと、思うような小麦粉に仕上がりませんでした。栽培の工夫をし、製粉調整などの試行錯誤を重ね、4年目にしてようやく納得のいく小麦粉が大量生産できるようになり、販売までまわせるようになったのです。同時に、直美さんが「実森(みもり)ラボラトリー株式会社」という会社を立ち上げ、国の6次産業化認定を受けて小麦製品の商品開発や販売を手掛けることになりました。
今後はさらに農地を増やし、パン用、麺用小麦、新たにパスタ用小麦の生産を視野に入れて増産して行く予定です。また、アワノカオリという自社ブランドの小麦粉、アワブランの開発にも成功し、パスタ用の小麦粉やミックス粉、ピザ生地など目的別に展開した商品開発が進んでいます。
「うちの小麦は本当に味がしっかりしておいしいんです。向こう5年めどで首都圏を中心に販路をさらに拡大し、美馬産の美味しい小麦を全国の人に知ってもらいたいと思っています」小麦の生産から始まった6次産業の道には、大きな可能性が秘められているようです。
#chapter3
28歳で美馬市にUターンで戻ってきた竹中さん。帰省して実家の建設業を継ぐ予定でしたが、時代の流れを読んだ父が家業をたたんで農業に専念することになったので、自身は建設資材会社の営業マンとして地元で働いていました。
しかし、当時の周辺地域は、昔見た田園風景がすっかり変わってしまい、荒地となった農地があちこちに点在していました。その現状を見て心を突き動かされた竹中さんは「あの美しかった風景を取り戻したい」と一念発起して40歳で農業の道に進んだのです。元建設業での経験を生かして重機を操り、次々に開墾していきました。
「営業にまわっていると、さまざまなニーズがある。現代の農家に必要なのは、何が作りたいかよりも何が必要とされているかを把握すること」企業から作ってみてと打診されれば、どんな作物にもチャレンジするのだそうです。「美馬の土地に合った作り方を確立して、近隣の農家に栽培方法をシェアすることで、一緒に地域を盛り上げていきたいんです」そう話す竹中さん。
風に揺れる蕎麦の花、黄金色の麦畑…。そして、また新たな作物が美馬の地に根付くよう、現代農業のパイオニア『はなみち農園』のチャレンジはこれからも続きます。
(取材年月:2019年10月)
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Profile
あらゆるニーズに応える農園ビジネスのプロ
竹中均プロ
農業技術者
はなみち農園
元建設業界の現場・営業の経験を活かし、美馬の荒地を次々と開墾。同時に地道な営業で「どんな作物が必要とされているか」を掴み、契約栽培の販路を開拓。農業をビジネスとして展開し、地域農業活性化につなげる。
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