樹木の健康管理を通して街のみどりを守る樹木医
三島摩耶
Mybestpro Interview
樹木の健康管理を通して街のみどりを守る樹木医
三島摩耶
#chapter1
樹木医の三島摩耶さんは、夫の家業でもある埼玉県行田市の「三島造園」を拠点に活動しています。三島造園は、創業から約130年にわたり培ってきた日本庭園の技術と、摩耶さんの樹木医としての専門知識が強みとなっています。造園業は個人宅のほか、公園などの公共・レジャー施設から街路樹まで手がけます。三島造園でも自治体の指定管理業務を請け負っており、樹木などの維持管理のほか、桜の剪定講習会など公園内のイベントも開催しています。
そして、「街のみどりを守ることが安全な街づくりにつながる」と話す摩耶さん。樹木医というと、樹木を病虫害から守る人といったイメージがあります。しかし、樹木の健康管理は、樹木のためだけでなく、街の景観と安全のために必要なことだとか。
「台風などで木々が倒れると、人や建物に被害が及ぶ可能性があります。定期的にケアをして樹木の健康を保つことで、そうした危険を回避することができます」
樹木の生態に精通している摩耶さんは、枝葉を落とすタイミングについても注意を促します。「葉っぱや枝は、人間でいう爪や髪ではなく指や腕のようなもの。春先などに剪定しているのを見ると、自分まで苦しくなります」
実は、新芽が出た後の春から夏にかけては樹木が疲れているため、その時期の剪定は負担になるそうです。樹木の生理生態にあわせて、休眠期である12月~2月に手入れを行えるよう、顧客に働きかけています。こうした啓発普及も樹木医の大切な役割です。
#chapter2
樹木医として日々の業務に励む摩耶さん。現職に就いた経緯を次のように話します。
「造園に携わるようになって7年がたち、目標としていた1級造園施工管理技士に合格。新たな目標を探していた頃、テレビ番組で樹木医という職種を知りました。番組で紹介されていた、女性初の樹木医の下で修業したいと考え、栃木県の『あしかがフラワーパーク』で働くことにしました。その縁から、師である女性樹木医が勇退された今も、週の半分ほどはフラワーパークに通っています」
摩耶さんは、恩師の背中を追い樹木医の資格にも挑戦しましたが、その難しさから一度は断念。再挑戦のきっかけとなったのは、担当していたキングサリというヨーロッパ原産のマメ科の木でした。
「ある時期、キングサリが次々と枯れ始めました。手を尽くして調べても原因はわからず。他にキングサリを多く扱っている植物園などはほとんどないため、周囲に相談できる専門家もいませんでした。樹木医を探し出して見解などをお伺いする中で、かつて抱いていた情熱がよみがえってきました」
樹木医の試験は、樹木の生態や病虫害だけでなく、土壌や気象、法制度など、広い分野に及びます。摩耶さんは気持ちを改めて勉学にいそしみ、見事に合格。「報われることを知っているから、努力するのが好き」と笑顔を見せます。苦労して学び得たからこそ樹木医としての志が高く、身につけた知識は仕事をするうえでの確かな基盤になっているようです。
#chapter3
研究が進んで医学・医療が発展するように、造園の世界でも知識や技術は進歩を続けています。それまでの常識がいつの間にか当たり前ではなくなり、通用しなくなることもあります。
「現場では、経験や勘よりも、観察眼と科学的根拠にもとづいた判断を大切にしています。より良い方法で樹木を扱えるよう、新しい知識を三島造園内で共有し、作業もチェックしています」と摩耶さん。ベテランの職人にやり方を変えてもらうようお願いすることもあり、常に仕事の質向上に努めています。
インターネットで樹木医を探して、問い合わせを受けるケースも徐々に増えています。その中に、枯れかかっている娘の記念樹を何とか助けてほしいという相談がありました。「親御さんのわらにもすがる思いが伝わり、親身になって話を聞き、精いっぱいの治療をしました。キングサリのために奔走した経験があったので、依頼者に共感できたのかもしれません」。摩耶さんは懸命に手当てを施し、依頼者からは「ここまでしてくれる人はいなかった。あなたでよかった」と深く感謝されたそうです。
「樹木医としてはスタートしたばかりですが、この仕事の重要性や意義をしっかりと受け止めています。なぜなら、樹木や草がなければ、私たち人間もその他の生物も生きていくことができないからです。樹木医は、SDGs(持続可能な開発目標)の一翼を担っていると思っています」
摩耶さんは、街のみどりを守ることで人々の暮らしを守り、未来につなげていくという信念のもと、今日も木々の声に耳を傾けます。
(取材年月:2021年5月)
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Profile
樹木の健康管理を通して街のみどりを守る樹木医
三島摩耶プロ
樹木医
三島造園有限会社
長年培ってきた日本庭園の造園技術と樹木医としての専門知識をいかして、景観と同時に樹木の健康を守ります。個人宅の作庭から公園の管理業務までに幅広く対応し、街のみどりの健康を暮らしの安全につなげます。
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