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心理学の専門知識と母親の介護を担った経験を生かして、相談者に共感を寄せ、介護疲れから救い出す

専門的な知識と介護経験を持つ、介護疲れに特化したカウンセラー

斉藤浩次

専門的な知識と介護経験を持つ、介護疲れに特化したカウンセラー 斉藤浩次さん
斉藤浩次さんカウンセリング風景

#chapter1

心理学への関心と母親の介護の経験、そのふたつがクロスする人の役に立つ道へ

 高齢化社会が進む今、誰もが気になるのが親の介護の問題です。ヘルパーやデイサービスなどを活用したとしても、自宅で介護する限りその負担は小さくないはずです。そこで介護者にかかる精神的な負担を取り除こうと、斉藤浩次さんは、介護疲れ専門電話相談「いるかコール」を立ち上げました。

 日本では、平均寿命と健康寿命(日常生活に支障なくくらせる期間)の間には、男性で9年、女性で12年程度の差があります。誰にとっても介護はいつ自分ごとになるかわかりません。斉藤さんも母親が倒れると、兄と二人でその介護をすることになりました。けれども、会社員として働いていた兄は平日に時間がなく、自然と斉藤さんが対応することが多くなったそうです。

 介護を経験する中で、介護が経済的にも物理的にも負担があるうえに、精神的な負担も重いことに気づいたといいます。もともと心理学に興味があった斉藤さんは、通信教育を受けたり、学校に通ったりして、資格を取得し、心理学に関する知識やカウンセリングのノウハウを身につけていました。斉藤さんが調べてみると、電話相談に寄せられる悩みの中でも介護に関することが多いことがわかりました。

 心理学の知識を生かして人の役に立ちたいと考えていたところに、介護の大変さや辛さを実感した斉藤さんは、同じ経験をしている人のためにと、2016年に介護疲れ専門電話相談「いるかコール」をスタートさせたのです。

#chapter2

専門的な知識を活用しながら、電話の向こうの相談者に丁寧に向き合う

 「いるかコール」では、介護の経験者であり、カウンセラーの斉藤さんが電話で相談に向き合います。電話をかけてくる人は、老々介護をしているような年配の方もいますが、多くは40~50代ぐらいの女性だそうです。

 カウンセリングの内容は、「傾聴」と「認知行動療法」がメインです。「傾聴」とは文字通り、相談者の悩みに丁寧に耳を傾けます。アドバイスをすることはありませんが、もちろんただ話を聴くだけではありません。たとえばあいづちの打ち方やタイミングなどにも技術があり、斉藤さんは知識に基づいた対応で相談者が話しやすい雰囲気を作っています。そうすることで、介護が続く先の見えない日々の中でガス抜きができたり、ストレスを軽減させたりすることが可能になるそうです。

 「認知行動療法」とは、ものの考え方や受け取り方(=認知)に働きかけて、気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする精神療法の一種。斉藤さんは、「考えが変われば行動が変わる、行動が変われば考え方が変わる」と説明します。「認知行動療法」を用いることで、介護続きで行き詰ったように感じられる毎日を異なる見方で受け止め、行動を変化させていけるそうです。

 斉藤さんがカウンセリングをするときに心がけているのは、「相手の心の目をくみ取れるようにする」こと。電話を介してなので実際に顔は見えませんが、だからこそ「心の目」に注意を払うのだそうです。そして、「思考ではなく、気持ちを聴く」ことも意識しています。斉藤さんから改めて気持ちを問われることで、ようやく自分が悲しんでいたことに気づく相談者もいるといいます。

 もちろん電話相談しても、介護をする日常が変わるわけではありません。それでも斉藤さんのカウンセリングを受けることで自分の気持ちを整理したり、思いを言葉にして口にすることができます。ひいては、うつ病を予防したり、ストレスを軽減したり、前向きに介護に向き合えるようにつながるそうです。

イルカコールのロゴデザイン

#chapter3

介護の大変さを知っているからこその深い共感が、介護疲れに苦しむ相談者を癒す

 「いるかコール」が高い支持を受けているのは、斉藤さん自身が介護の経験者であり、相談者の話に深く共感できることが大きな理由だと斉藤さんは考えています。介護をしている人の中には、普段周りの人にも話せなかったり、話しても気持ちが上手く伝わらなかったりして、さらにストレスを抱えている人もいるそうです。そこで斉藤さんにカウンセリングしてもらうことで、ストレスを大きく軽減させることにつながるのでしょう。

 斉藤さんは、朝9時から24時まで電話相談を受けています。電話相談にしているのは、介護をしている人は外出することが難しい人が多いから。また遅い時間や日曜も相談できるのは、行政などの電話相談サービスと大きく異なる点だそうです。時間が空いていれば予約なしでも、夜中でも対応しているといいます。

 「いるかコールを多くの人に知ってもらって、必要な人につながっていきたい」と、斉藤さんは考えています。電話相談を「いるかコール」と名付けたのは、いるかが癒しを与えるといわれる動物だから。自らの経験と知識を生かし、介護に悩んでいる人の力になれたらと、電話でつながる顔の見えない相手に思いを馳せています。

(取材年月:2020年8月)

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斉藤浩次

専門的な知識と介護経験を持つ、介護疲れに特化したカウンセラー

斉藤浩次プロ

カウンセラー

介護疲れ専門の電話相談「いるかコール」

自らの介護経験を生かした、介護疲れ専門の電話相談。専門的な心理学の知識を有し、認知行動療法などを用いながら、介護疲れに悩む相談者のストレス軽減やうつ病の防止を図る。

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