伝統と革新を重んじる一級建築士
横関正人
Mybestpro Interview
伝統と革新を重んじる一級建築士
横関正人
#chapter1
大阪で唯一「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている場所があります。古い建物では、江戸時代から脈々と受け継がれ、今もなお住み継がれている町家のある大阪府・富田林市寺内町です。
横関さんの事務所は、風情豊かな寺内町にあり、寺内町の多くの建造物の新築やリノベーションに携わりました。一級建築士であり、パートナーである横関(三木)万貴子氏と運営するNEO GEOが最も強みとするのが、「伝統と革新」を考えた建築設計。寺内町の建物は、外観は厳しい規制があるが、内部は自由に設計可能です。重要伝統的建造物群保存地区であっても、現代のライフスタイルに合わせたデザインや耐震性を確保し、持続して利用し続けられる設計を心がけています。
そんななか、横関さんが手がけた奈良県・橿原市今井町のゲストハウスが、「大阪建築コンクール」にて大阪府知事賞を受賞。大阪建築コンクールは60年以上続く歴史あるコンクールで、これまで数多くの優れた建築物が表彰されています。しかし、過去に新築の近代建築の受賞が目立つなか、重要伝統的建造物群保存地区において横関さんが手がけた、築約200年の町家をリノベーションした建築物が受賞するのは珍しいこと。その背景には、「現代の住まい方に合わせた耐震改修可能なフレームを採用し、尚且つそれがデザインとして融合していることなど、時代の流れが古いものを現代に生かす建築のあり方を求めていることにある」と横関さんは語ります。
#chapter2
横関さんは、大学卒業後、約35年以上設計に携わってきました。もともと兵庫県の林業が盛んな地域に生まれ育ち、木に触れる機会が多かったそうです。バブル期にコンクリートや鉄骨の新築が建てられる中でも、木造建築に対しても変わらず向き合い続けていました。日本には木があるのに外材を使うことに対して疑問を抱き、自ら地域材のグループに参加し、木材に対する知識を積み重ねてきました。
そんな横関さんが次に挑戦するのは、「こども園」。その建設に、新しくCLT(Cross Laminated Timber)を屋根や壁など全面的に採用した斬新な設計を行います。CLTとは、ひき板や小角材を並べ、繊維方向が直交するように接着させた3層以上の構造を持たせた木質材です。欧州で開発された工法で、国内では2016年に設計法が確立された新材料。断熱性や遮熱性、遮音性などにも優れており、何より木の風合いをそのまま生かした材料なので、木目や木の肌触りを感じる心地のいい空間ができます。また、一枚が大きくてもコンクリートの半分の重量であり、接着も容易なことから施工の短縮に繋がり、普通建築から中大規模な木造建築物の設計が可能になります。
「国内の木材を活用することは、昔ながらの山の循環を守り、国土の保全や温暖化対策にも繋がる。何より、木は呼吸をしている。木構造は、人間の感覚を呼び覚ましてくれる。現代の建築物にも木を多く採用することで、人間らしい暮らしや職場をつくり、心を取り戻す木は人のロングライフのパートナーとなるもの」と横関さんは語ってくれました。
#chapter3
建築家は、常に新しいことに挑戦したいもの。ある程度の得意不得意はありますが、横関さんご夫妻は、今後も積極的にいろいろなことに挑戦したいとお話ししてくださいました。
そんなお2人の夢は、「大阪・御堂筋を木化したい!」ということ。日本の資源をうまく活用して、できるだけ国産材を使用することが、地球環境に貢献できることであり、人々が暮らしやすいまちづくりに繋がっていくのではないかと考えています。
住宅を造り続けて、その道を極めるのも良い。しかし、横関さんのお客さまには、住宅実績をご覧になって、別用途の建築の相談に来られる方もいらっしゃるそうです。既成概念にとらわれず、きっと期待感を持って相談にやって来られるのだと思います。
横関さんご夫妻は、そんなお客さまも大歓迎。お客さまのお考えをよく聞いて、お客さまの放つ言葉の裏にどんな隠れたニーズがあるのか、お客さまとの対話を大切に、丁寧に対応してくれます。お2人が、どのように真摯に一つの設計に向き合われているか、理想的な住居空間や職場などをお考えの方は、ぜひ一度横関さんの木のぬくもりが漂う素敵な事務所に足を運んでみてください。
(取材年月:2018年12月)
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Profile
伝統と革新を重んじる一級建築士
横関正人プロ
建築家
有限会社NEO GEO(ネオ ジオ)
コンクリートや鉄骨は勿論のこと、歴史的木造建築物に対しても現代ライフスタイルに合わせた設計を手がける。デザインと構造・機能を融合させた建築空間を創造するなど「大阪建築コンクール」で大阪府知事賞を受賞。
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