昔ながらの赤瓦製法で沖縄の文化を守り続けるプロ
八幡昇
Mybestpro Interview
昔ながらの赤瓦製法で沖縄の文化を守り続けるプロ
八幡昇
#chapter1
赤瓦といえば、沖縄を象徴する風景。かつてはお金持ちの象徴として、首里を中心に赤瓦葺きの平屋が見られたといいます。
「昔、庶民の夢は“赤瓦の家に住むこと”と言われていたほど、赤瓦はステータスだったんです。」と話すのは、赤瓦の一大産地・与那原町で「八幡瓦工場」を営む八幡昇さんです。
「与那原には全盛期、約15軒の瓦工場がありました。今は4~5軒になってしまいましたが、うちは現存する中で一番古い工場なんです。」
八幡瓦工場の一番の特徴は、現代の住宅にあった赤瓦の生産はもちろんのこと、沖縄で唯一、いや日本や世界でもおそらく唯一という、昔ながらの製法「たたら作り」で赤瓦を製造している点です。
「時代のニーズにあったものを作るだけでなく、文化財などの昔の建物には、昔ながらの材料と作り方で作るべきだと思うんです。過去には、北谷町役場の新庁舎、歴史的建造物では、首里にある玉陵の番所も手がけました。」
玉城で生まれ、与那原で育った八幡さん。お母様方のおじいさんが瓦職人で、小さい頃から赤瓦が身の回りにあったそうです。「子供の頃は瓦や土が遊び道具でした。おもちゃなんかないですからね。粘土で色々作ったりしていました。」
本土復帰から数年後、八幡さんは仕事をしていた本土から沖縄に戻り、現在の工場を引き継ぎます。ですが、赤瓦製造を行うに当たり、当時は大変なご苦労があったのだそうです。
#chapter2
「当時の沖縄は大変な不景気でした。復帰の影響で、ドルから円に変わり、どちらも価値が下がっていくのでは、という不安で、みんなお金を使わなかったんです。高価な住宅に関しては、当然お金が回ってくるわけはありませんでした。」
ですが、転機となったのが昭和50年からの沖縄国際海洋博。これをきっかけにして、沖縄で建築需要が高まり、これまでの木造からコンクリート住宅への立替が進みます。
「その後は、首里城を始めとして沖縄らしい街の景観を大切にしようということで、徐々に赤瓦が浸透して来ました。見た目だけでなく、実は瓦屋根には夏を快適に過ごす秘密もあるんです。」
それはずばり「屋内が涼しくなる」ということ。研究実験によると、使うと使わないでは、最大で4度もの差が出るそうなんです。これは、瓦と屋根の間にある空気の層が断熱材となるからなんだとか。「快適な部屋になるからこそ、かつては庶民の憧れだったんです。」
ぜひ工場を見学していってくださいとのことで、八幡さんにご案内頂きました。そこで目にとまるのは、やはり世界唯一という技術「たたら作りの赤瓦」です。左上の写真にある、手作りの道具で作業をします。
「うちでは5人ほどの職人が、この技術を身に付けています。そして、地域の文化ですから、機会があれば工場見学や実演なども行いますよ。」
#chapter3
そもそも赤瓦の原料は何なのでしょう?それは、最近化粧品などで一躍有名となった「クチャ」なんです。「沖縄県南部に広がるクチャに2割ほど赤土を混ぜ、機械で細かくしてから練り上げます。」と八幡さん。見せていただくと、粘土は真っ黒。これがどうして「赤」になるのでしょうか?
「クチャには鉄分が多く含まれているんです。粘土の段階では真っ黒、成型して乾燥させると白に、焼き上げると赤に、3回色が変化するんです。」
クチャはとても質の高い土で焼き物、化粧品、農業と、どれにでも有用なんだそうです。
ですが、最近、赤瓦の原料であるクチャが、宅地開発や都市化が進み、入手しづらい状況になってしまったんだとか。
「さらに円安による燃料費の増加もあって、苦労の日が続いています。」と八幡さん。辛い状況でも赤瓦を通して取り組みたいことがあるんだそうです。
「まだまだ赤瓦を、お客様のニーズに合わせて進化させたいんです。やはり赤瓦がある街並みが沖縄らしい風景だと思うんです。将来は沖縄の生活感が体験できるテーマパークみたいなものができるといいなと。」
赤瓦への思い入れが余すこと無く伝わってくるような明るい笑顔で、八幡さんはそう答えてくれました。
(取材年月:2013年6月)
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Profile
昔ながらの赤瓦製法で沖縄の文化を守り続けるプロ
八幡昇プロ
職人
有限会社 八幡瓦工場
赤瓦の産地・与那原町では最も歴史のある赤瓦工場です。現代の住宅ニーズにぴったり合った改良瓦と、世界で唯一「たたら作り」の瓦製造を行なっています。赤瓦は沖縄が誇る文化。守りながら発展させていきます。
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