職人の高い技術力を活（い）かした家づくりとメンテナンスのプロ西田昌弘

職人の高い技術力を活（い）かした家づくりとメンテナンスのプロ

西田昌弘

工事費の透明性を高め、施主の要望をダイレクトに反映できるオープンシステムを採用

　岡山県倉敷市山地の、のどかな住宅地の一角。焼き杉をしつらえた懐かしさ感じるたたずまいが訪れる人を出迎えます。築およそ100年と言われるこの古民家に事務所を構えるのは「一級建築士事務所にしだ建築工房LLC」の代表、西田昌弘さん。倉敷市、岡山市、他、県南地域を中心に、住宅の新築やリフォーム・リノベーションなどを手掛けています。

　「家を建てる際は、工務店などに一括して任せるのではなく、お客さま自身が内装や外装、インフラ設備を請け負う業者を選定して依頼する分離発注方式、いわゆる『オープンシステム』を採用しています」と西田さん。施主が主役となって、腕のある職人と住まいづくりができるようサポートしています。
　「中間業者を通さず、お客さまが職人さんと直接やりとりをすることで、ご要望を反映しやすくなりますし、工事費の透明性が高まります。お客さまのニーズと現場の動き、両方のことをよく理解している私が、プランニングから施工、完工まで伴走します」

　土地選びやローンの相談にも応じているので、できればマイホームを検討し始めた段階で声を掛けてもらうのが、理想的だと言います。

　「お客さまの毎日が、シンプルになるような設計を心掛けています。生活を営む場ですから、見た目などデザインにのみこだわりすぎると、メンテナンスも大変ですし、ライフステージが変わった時に不便が生じる可能性もあります。図面の段階ではイメージしづらいかもしれませんが、実際に住み始めたお客さまは、『助言通りにしておいて良かった』と言ってくださいます」

住まいのコンシェルジュとして、メンテナンス、DIYなどさまざまな相談にも対応

　木造住宅の耐震診断員や既存住宅状況調査技術者、岡山県地域文化財建造物専門家、福祉住環境コーディネーター2級など数々の資格を有している西田さん。高齢者向けのバリアフリー化、古民家の再生など、建物の状態や予算に応じた提案を得意とします。現在事務所として使用している趣きある住まいも、購入後、自分でリノベーションをしたそうです。

　「建築士として数多くの案件に携わる中で、年月を経たもののよさを感じるようになりました。それぞれの家が持つ歴史を受け継ぎながら、住まう人の暮らしに合った空間に生まれ変わらせることが大好きです」

　西田さんは、「なんとなく気後れする」といった設計事務所に対するハードルを下げたいと、住まいのコンシェルジュとしても活動。主に、住宅のメンテナンスについて無料でアドバイスしています。
　「床が沈む、水漏れがする、部屋が寒いといった問題に、対症療法的な修繕でしのいでいるケースも見受けます。根本的に解決していくためにも多角的に原因を分析してから予算に応じて、対応策を導き出します」

　培ってきたノウハウをもとにさまざまな悩みに応え、時には「自分で壁を塗りたい」などDIYのリクエストを受けることも。
　「必要な道具や方法を教えますし、材料の手配のお手伝いもしています。『無料で相談に乗って、どうやって収益を上げるんですか？』と質問されることもありますが、お客さまのためになり、信頼関係を築くことができれば、それでいいと思っています」と、笑顔を見せます。

古民家の納屋をリノベーションし、人と人がつながるコミュニティースペースも開設

　幼少の頃からものづくりが好きだった西田さんは、生まれ育った倉敷市から大阪市内の建築系専門学校へ進学。自立と学費のために、住み込みのアルバイトをしながら勉強に励みました。
　「親元を離れ心細さもありましたが、人の温かさに触れて学生時代を過ごしました。若い頃に人間関係の大切さを実感できたことは、私の財産です」

　卒業後は岡山に戻り、住宅会社や大手リフォーム会社、不動産会社などで建築業務に従事。学びを深めるために県内外の講義にも通いました。経験を積む中で、一緒に仕事をしてきた職人や自分が身に付けた知識、技術を地域に還元したいと考えるようになり、2020年に独立しました。

　ある施主から「何社かに見積もりをお願いしたけれど、西田さんだけが限られた予算であっても『そのプランはできません』と言わなかった」とオファーに結びついたことがあるそう。
　「お客さまのご希望をかなえられるよう知恵を絞り、どうしても難しいなら、代替え案を用意するようにしています」と西田さん。2021年には、コミュニティースペース「暖談庵（だんだんあん）」をオープン。敷地内にあった納屋を、ワークショップや展覧会の会場として活用できるよう整備しました。

　「いろんな人が集える場を設けることで、自分自身も刺激や影響を受けて成長していけたら、という気持ちで開設しました。これからも、この場所で人と人とのつながりを大事にしながら、お客さまの思いを住まいという〝カタチ〟にしてきたいですね」

（取材年月：2022年9月）

技術力を備えた職人と共に、施主の思いをかたちにする住まいづくりをサポート

工事費の透明性を高め、施主の要望をダイレクトに反映できるオープンシステムを採用

住まいのコンシェルジュとして、メンテナンス、DIYなどさまざまな相談にも対応

古民家の納屋をリノベーションし、人と人がつながるコミュニティースペースも開設

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