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Mybestpro Interview

「どこにもないもの」を生み出し、新たな市場を切り開く松本のメーカー

独自の発想で新市場を切り開く商品開発のプロ

藤原晃平

藤原晃平 ふじわらこうへい

#chapter1

手のひらサイズの革新。物流業界に新たな基準を築いた「G-MEN」

 「世の中にないものを作り出して広めていくことが、私どもの存在意義です」

 こう話すのは、長野県松本市に拠点を置く「スリック」の代表取締役、藤原晃平さんです。商品企画から設計、製造、販売まで一貫して手がける小さなメーカーながら、物流業界や建設業界、さらには音楽の世界にまで、これまでにない製品を送り出してきました。

 2003年に発売された代表的製品「G-MEN(ジーメン)」は、手のひらに乗るほどのサイズながら、輸送中の振動や衝撃を時系列で精密に記録する振動衝撃レコーダーです。荷物に同梱して届け先でパソコンのUSBポートに接続するだけで、輸送中の状況がグラフ化されて一目でわかります。GPSモジュール搭載タイプでは、どの地点で衝撃が加わったかまで特定できます。開発のきっかけは、現場の声でした。

 「あるメーカーの管理職の方が、『納品される製品の中に壊れているものが一定数あるので原因を突き止めたい』と、ふと漏らした一言がきっかけでした。世の中にない製品ができると確信しましたね」

 支持された最大の理由は価格です。本当に必要な機能だけに絞ることで、従来の振動衝撃レコーダーの10分の1以下の価格を実現。手頃な価格でありながら計測精度には妥協しないという姿勢が、幅広い現場への普及を後押ししました。その評価は民間にとどまらず、2005年にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)に採用されました。累計出荷台数は5万台を突破。「G-MENをつけて運ぶ」という考え方が物流業界に根づき、今では広く活用される品質管理ツールとなっています。

#chapter2

本当に必要な機能だけを残す「引き算」のものづくり

 幼い頃からものづくりが好きだったという藤原さん。学生時代はエレキギターやアンプも自作していました。探究心が高じて職業訓練校へ進み、卒業後は電機関係の工場に勤務。その後、測定機器を企画製造する会社へ転職し、開発の経験を積んだうえで1992年に独立しました。

 ものづくりの発想の源について、藤原さんはこう話します。
 「新しい製品が出たらすぐに買ってみて、どういう発想でこれを作ったんだろうと考えるんですよ。当社の製品はデザインにもこだわっているので、パッケージなども参考にします。別業界の製品にもアンテナを広げています」

 そうした姿勢から生まれた製品に共通するのが、「引き算」の設計思想です。余分な機能を削ぎ落とし、本質だけを残します。

 「G-MENには電源ボタンもありません。乾電池で動いていて、電源を切りたいときは電池を外します。乾電池にこだわったのは、コンビニでいつでも買えるから。現場の人が困らない設計を徹底しました」

 販売にあたっては、従来型の営業に代えて1週間の無償貸し出しを実施しています。

 「試していただいた後にそのまま購入してくださる方が多いですね。使って価値を感じてもらうことが、一番の営業なんです」

 売り込むのではなく、まず体験してもらって信頼を積み上げていくスタイルは、藤原さんの経営哲学そのものです。「私どもは狩猟民族ではなく農耕民族。種をまいて芽が出て、小さな市場でコツコツと育てていく。欲張りすぎないことが大切です」

#chapter3

「楽器としてのオルゴール」という新ジャンルへの挑戦

 計測器の開発と並行して、藤原さんがライフワークとして取り組んできたのがオルゴール楽器の開発です。「カナデオン(CANADEON)」シリーズは、MIDI端子を搭載し、電子楽器とのアンサンブルや自作曲の演奏ができる、これまでにない「演奏できるオルゴール」として誕生しました。木のぬくもりを感じさせる洗練されたデザインは空間にさりげなく溶け込み、置くだけでインテリアとしても映えます。

 「オルゴールといえば、通常はセットされた曲を繰り返し聞くだけのもの。しかしMIDI端子を載せれば、弾ける楽器になります。そんなことは、誰もまだやっていなかったんです」

 学生時代にギターを自作した少年が、今度はオルゴールの概念そのものを作り直そうとしていました。このカナデオンが著名な音楽家の目に留まり、自分の手で演奏したいというリクエストへとつながりました。依頼を受け、大手楽器メーカーと共同開発で生まれたのが「ORPIA(オルピア)」です。名前の由来はオルゴールとピアノを組み合わせたもの。本物のオルゴールの櫛歯を内蔵した鍵盤楽器で、電源不要でアコースティックな響きが聴き手を癒します。コンサートの舞台でも演奏され、「楽器としてのオルゴール」という新ジャンルを切り開く存在として注目を集めました。

 「これまで計測器から楽器まで、さまざまな製品を手がけてきましたが、『どこにもないもの、どこも作らないもの』という考え方はこれからも変わりません。これからもコツコツと新しい挑戦を続けていきます」

(取材年月:2026年6月)

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専門家プロフィール

藤原晃平

独自の発想で新市場を切り開く商品開発のプロ

藤原晃平プロ

商品開発

株式会社スリック

「どこにもないもの、どこも作らないもの」を信念に、商品企画から設計、製造、販売まで一貫して対応。本当に必要な機能だけを残す「引き算」の設計思想で、物流や音楽など幅広い分野に新たな価値を生み出しています

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