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願いは「車いすの存在が当たり前の風景」 福祉車両を通して自由な社会を

販売・リース、改造、保険まで一本化して請け負う福祉車両のプロ

藤原卓也

藤原卓也 ふじわらたくや
藤原卓也 ふじわらたくや

#chapter1

販売からカスタムまで 福祉車両の業務をワンストップで対応

 体の不自由な人が「一人で自由に動ける社会」の実現。その一翼を担おうと福祉車両の販売などを手がけるのが三重県伊勢市にある「福祉車輌専門店 オレンジ三重」です。代表の藤原卓也さんは「車いすユーザーなど体の障害を持つ方が介助者なく動けるように。前向きになり自立できるように」と同店を始めました。

 「私どもは、福祉車両の新車・中古車の販売やレンタル、リースやメンテナンスだけでなく、保険や鈑金など、福祉車両に関する業務をワンストップで請け負っています。福祉車両といっても種類はいろいろ。ご本人やサポートするご家族の状況、普段の生活や今後の身体状態の変化などに合わせて、じっくり相談できるのも専門店ならではの強みです」と藤原さん。

昇降リフト、スロープ、回転シートやリフトアップシート、手動操作機能など、どんな機能を持つ車両が利用者や家族に適しているのか、まるで医者のように「診察」し、要望に合う車を提案します。

 また、藤原さんのもとでは車両の改造も行っています。例えば足の動かない人の運転補助なら、床からレバーを立ち上げ、手前に引くとアクセル、奥に押すとブレーキになる手動運転装置を設置。あるいは握れば加速するハンドル型のアクセル装置など、カスタムの方法はさまざまです。

「『自分も、もっとカッコいい車に乗りたい』という方はたくさんいます。限られた車種ではなく、いろんな車で人生を楽しんでもらいたい」。その理念から、ほとんどの車種の改造に対応。売却時に価格が下がりがちな福祉車両ですが、改造後も元の状態に戻すことができるのも同店の強みの一つです。

#chapter2

手間ひまかかる業務の裏には「前向きになってほしい」との思い

 改造部品は、主に海外製を東京の総合輸入代理店から取り寄せ、実車の形やスペースに合わせて施工。レバーを曲げたり、削ったりして調整を繰り返します。「そのへんはやっぱり実績を積んでいかないとなかなかできない。車内の他の部品に干渉しないかはもちろん、角度によってもかなり使い勝手が変わってきますので」

 根気のいる作業を支えるのは「車をきっかけに前向きになってほしい」という藤原さんの思いです。

 「介護や障害というと、どうしても暗いイメージが強い。事故などで障害を負った場合は気持ちの整理がつかず、内へ内へと引きこもってしまうケースも多いと聞きます。でも自分の力で運転できるようになれば気持ちも前を向く。私たちが提案する車両が、『自立は無理』とあきらめている人の背中を押すきっかけになればうれしいですね」

 生命保険の代理店を個人で営んでいた藤原さんは、交流の深かった従兄の事故死をきっかけに現在の業界に飛び込みました。兄と慕い、世話になった恩人に報いるため、藤原さんは従兄の経営していた自動車整備会社を引き継ぐことを決意。暗中模索のなか潮目を変えたのは、1枚のファックスでした。

「ある日、整備に回ってきた介護タクシーの仕様に目を奪われていると、突然の着信音とともにファックス機から日本福祉車輌協会の広告が出てきました。そこには『福祉車両を取り扱いませんか?』との言葉が。笑い話ですけど、お告げかと思いました」と藤原さんは振り返ります。

藤原卓也 ふじわらたくや

#chapter3

障害者は特別な存在じゃない 「誰もが自由を手にできるお手伝いを」

 しばらくは福祉車両の販売やリース、レンタルなどが主な業務だったという藤原さん。「自分で運転できる喜び」を説いたパラリンピック元メダリストとの出会いや、改造用部品を扱う輸入代理店との関わりが重なり、2016年頃からカスタムも手がけるように。現在は「日本福祉車輌協会」の理事も務め、さらなる福祉車両の普及に努めています。

 2020年3月には参議院が公用車として福祉車両を3台導入するなど、障害者への理解を高める動きがみられます。しかし藤原さんは「正直、日本は外国に比べてすごく遅れているように思える」と肩を落とします。

 「日本では地方に行けば行くほど、車いすの方が一人で行動するのを見かけません。バリアフリーという言葉は一般化しましたが、実際に一人で外に出かければ大変なことが多い。そして障害を持つ方の姿が街中にほとんど無いと、より『特殊な存在』だと認識されてしまう。なんでも『無理だ』『危ない』とやる気をそぐのではなく、車いすに乗ったりつえをついたりする方が街の風景として当たり前になる社会が望ましい。車を通して誰もが自由を手にできるお手伝いをこれからもしていきたい」

 同店の経営理念は「心を満たす最高のパートナーへ」。藤原さんは「どんな方に対しても最高のパートナーになれるよう常に考えて仕事をしています。車以外のことでも構いません。困りごとがあれば気兼ねなく連絡してきてほしい」と笑顔を見せました。

(取材年月:2021年6月)

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藤原卓也

販売・リース、改造、保険まで一本化して請け負う福祉車両のプロ

藤原卓也プロ

福祉車両の販売・リース・レンタル

福祉車輌専門店 オレンジ三重(イーグルジャパン株式会社)

福祉車両の販売・リースやレンタル、保険やメンテナンスなどはもちろん、県内で数少ないカスタムも引き受けます。ほとんどの車種が対応可能。障害を持つ方の自由な生き方を車の領域でサポートします。

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