ガラスやサッシ、家の外回りを一手に担う工事のプロ安部宏

ガラスやサッシ、家の外回りを一手に担う工事のプロ

安部宏

最初はガラス店。そこから手掛ける分野を広げることで利便性向上、売上を伸ばし、顧客を増やす

木が生長するように、企業も大きくなりながら、その枝葉を広げていくことが少なくありません。安部宏さんが代表取締役社長を務める株式会社アベックスは、ガラスを手掛ける安部ガラス店から三重サッシ販売株式会社と発展し続け、今ではサッシ事業、外装事業、エクステリア事業、リフォーム事業、さらに環境事業を行う会社となりました。

安部さんは一般企業に勤めた後、父親が創業した会社に入社し、35年以上前に跡を継ぎました。これまで手掛けて来た窓ガラスもサッシも家の外回りのものです。そこから、同じ外回りのものとして壁や屋根へと、顧客のニーズに応えてきたのです。

「サッシや屋根、壁と外回りをまとめて請け負うことができるので、発注する側にとっても便利ですよね」と安部さんが口にするように、建設会社やハウスメーカーから重宝がられ、売上も伸びていったといいます。

今では、過去の顧客がリフォームをする際に再び依頼がきたり、リフォーム後の家を見た顧客の友人が気に入ったからと紹介してくれたりと、アベックスが提供する品質の高さを見込んでの注文が増えています。

高い技術力と豊富な経験が顧客に十分な満足を与え、さらなる顧客を生み出していく

安部さんが何よりも自信を持っているのが、技術力の高さです。サッシ、壁、屋根など、それぞれの分野ごとに専属の職人がいるため、ほかの会社では施工が難しいケースでも、可能になることがあるといいます。

「リフォームは、家全体ではないので、専門業者に頼みたいですよね」と安部さんは言いますが、一部分に特化した工事だからこそ、その道のプロッフェショナルに頼むのが満足のいく結果を得る近道です。

アベックスはこれまでに、地元である桑名近郊で何十年もの間に数千件の納品実績があります。これまで仕事をしてきた顧客が長く暮らすに連れ、だんだんリフォームの要望が出るようになり、その依頼に応えていくうちにたくさんの数をこなしてきました。その経験値が、技術力に加え、大きな武器となっています。

「たとえば、階段の上に明かり取りの窓があったりしますよね。もともとは開けられない窓だったとしても、開けたら夏は涼しくなるから開けられるように変えたほうがいいんです。職人によってはできないかもしれないですね」といった難しい注文でも、顧客のより高い満足をめざして妥協はしません。

さらに依頼主の要望は丁寧に聞きつつ、「お客さまの立場に立ってご提案します」と、プロフェッショナルが持つ知識を使って、新たなアイデアを提案することもあります。

このような仕事に対する姿勢を支えているのは、「真面目にコツコツ仕事をするのが一番大切」という、安部さんのポリシーです。そうすることが顧客の満足を生み出す共に、会社の発展につながると安部さんは考えているのです。

三重から世界へ。地元の顧客に信頼される企業から、環境分野で世界へ貢献できる企業に

安部さんが、さらに力を入れている事業が環境事業です。グラセーラという、廃ガラスが主原料の素材を製造、販売しています。ガラス屋として、割れた窓ガラスが産業廃棄物になっている現状を見て、「これを違う形に変えられないだろうか」と安部さんは考えました。

廃ガラスを使用して生産されているものとしては、ホームセンターなどで販売されている防犯用の砂利があげられます。ただし、防犯用の砂利はガラス瓶のガラスから作られているため、さまざまな品質のガラスが混ざってしまいます。グラセーラは、JIS規格にのっとって生産されている窓ガラスを使用しているため、一定の品質を保つことが可能なのです。

もともとはケイ素という素材であるガラスを粉々にして、新たに生まれ変わらせたグラセーラは、軽石のような細かい穴が大量に空いた素材です。グラセーラを使用して壁材を作ると、その穴が有害物質を吸着したり、湿度を調節したりといった機能を持つ壁になります。

ほかにもグラセーラは、農業、水浄化、消臭、清掃といった、さまざまな用途に使用されています。たとえば、畑の土の中に入れて収穫量を向上させたり、トイレや洗面所の洗浄に使用され、東京メトロや高速道路の施設でも採用されています。

今ではグラセーラは海外でも使用されています。「ベトナムの塩害被害のある地域で、被害を食い止めるために使用されているんです」と、安部さんは誇らしげに語ります。安部さんが住む三重県は、日本が高度経済成長を遂げた時代、四日市ぜんそくが広がり、公害でその名を知られた地域です。「発展途上国が日本と同じことを繰り返そうとしているから、そうならないようにしなければ」と、安部さんは環境事業に力を入れる理由を語りました。

地元の顧客を相手に高い技術と豊富な経験を生かし、大きな満足を生み出しつつ、広い世界へも遠く目を向けている安部さん。真面目にコツコツ仕事を重ねていくその姿勢を大切に、ますます広い社会に対して貢献を続けていきます。

（取材年月：2020 年 12 月）