着物に親しむライフスタイルを提案するプロ
たなかきょうこ
Mybestpro Interview
着物に親しむライフスタイルを提案するプロ
たなかきょうこ
#chapter1
「和装は世界に誇れる持続可能なライフスタイルなんです。お婆ちゃんは言っていました『あずき三粒包める布は捨ててはいけない』と」とにこやかにエコ衣料としての着物の魅力を語る彼方此方屋代表のたなかきょうこさん。幼い頃に一緒に暮らしていた明治生まれのお婆ちゃんは普段着として着物を身につけていたそうです。その影響もあって、若い頃からお母さんの着物や市で買い求めた着物を愛用していたとのこと。着付け講師資格を取得し、呉服店で働いていた頃、高額な着物の販売をすすめる展示会販売に疑問を抱くことに。そこで家族の理解を得て、2002年に彼方此方屋を始める事になりました。
着物は反物に戻して仕立て直したり、寸法直しもできるので母から子どもへと世代を超えて受け継ぐ事ができる衣料。でも、現代の生活は洋服中心になっているので、着物を普段使いするための知恵や着方がお母さんも知らないというのが実態です。そこで、たなかさんが始めたのがYouTubeの「京都きものTV」。帯の種類や結び方はもちろん、着物で芋掘りをしたり、バトミントンをしたりと意外にアクティブに使える着物を紹介しています。反響が大きかったのが「着物でトイレ、どうするの?」という回。これは誰もが苦労するポイント。「実践という訳にはいかないのでトルソーで解説しましたけれどね(笑)」とたなかさん。着物に興味があれば、ぜひチェックしたいコンテンツと言えるでしょう。
#chapter2
着物を普段使いするうえでハードルになるのが手入れの面倒さ。それをクリアしたのが「京・木棉 乙」です。松阪木綿や備後絣、小千谷ちぢみ、米沢織りと木綿でも風合いがよく、丸洗いできる素材を使ったオリジナル着物をたなかさんは開発しています。柿渋や薬草などで染めているから風合いも味わい深くて、自然の薬効の優しさが肌に心地いい。こちらは好みの生地を選んで頂き、一人一人の身幅や裄丈に合わせて、仕立てるセミオーダースタイル。手描き友禅や京刺繍の伝統工芸士の方に手を入れてもらうことも可能。「手仕事が入ったものは味わいがあっていいんです」とはたなかさんの弁。
洋服ともコーディネートできる「とわえる(常衣)」というアイテムを開発したのは使い捨て感覚で大事にされない服がもったいないと思ったから。この常衣なら、スカートやパンツと合わせてTシャツとしてコーディネートしたり、衿・袖を付けて二部式長襦袢として合わせたりと和洋兼用で活用可能。伸縮性のあるオーガニックコットンで肌に優しいのもポイントと言えるでしょう。和柄は型を起こし手捺染で絵付けされています。和洋の垣根を越え、どちらにも使える一枚があれば、要らない服でタンスがいっぱいになることもないというのがたなかさんの想いです。
物を大事にという彼女の考え方で着物の端切れを細く裂いて、織り込んだ裂織りを商品化することに。それが新感覚ギフト「ふみおり」。ARを導入し、動画でのメッセージを付けて、思い出深いギフトに仕立てるところがたなかさんならではの発想と言えるでしょう。
#chapter3
16年前の彼方此方屋創業時にたなかさんが立てたプランは「街ゆく人々の二割が着物姿に」という夢を30年かけて達成していくという壮大なもの。最初の10年間は彼方此方屋を知ってもらう事に尽力し、中間の10年でオリジナルの「京・木棉 乙」や「とわえる(常衣)」といったオリジナルブランドの販路を広げていく。そして、その成果をもとに、その後の10年で「街ゆく人々の二割が着物姿に」という夢を現実のものにしていくという壮大な計画です。
その夢の一環として今、たなかさんが取り組んでいるのが相楽木綿の会から和棉種を受け継ぎ、「京・木棉」を興すこと。相楽木綿は現在の木津市の相楽地区で大正時代まで作られていた絣木綿のこと。たなかさんは手軽に買える京都産の綿布「京・木棉」をブランド化しようと小規模ながら和棉種による棉の栽培を始めています。この試みも普段着として着物をもっと着て欲しいというた強い想いがあるから。実際、 相楽木綿は絣として農作業用に着られていた普段着でした。また、その木綿を栽培するための苗床となるのが古い衣料を再利用した軽量土壌の「エコっち君」というのもたなかさんらしい取り組みです。古い物を粗末にせず、物を大事にするライフスタイルを着物を通して広げていきたいという熱い想いが、たなかさんからひしひしと伝わってきます。
(取材年月:2017年12月)
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Profile
着物に親しむライフスタイルを提案するプロ
たなかきょうこプロ
着物コンサルタント
彼方此方屋(おちこちや)
手入れも簡単なオリジナル着物「京・木棉 乙」や長襦袢の現代版「とわえる」などの商品開発を手がける。リサイクル着物やはぎれのリユースなど着物を中心としたサステイナブルなライフスタイルを幅広く提案。
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