介護と療養生活を明るくするプロ
森下大亮
Mybestpro Interview
介護と療養生活を明るくするプロ
森下大亮
#chapter1
厚生労働省は2025年をめどに、要介護でも住み慣れた地域で自分らしい暮らしができるよう、自治体が医療・介護などを一体で提供する「地域包括ケアシステム」の構築を提言しています。
「のどか治療院」の院長・森下大亮さんは、この「地域包括ケアシステム」を見据えた事業を展開。要介護者の自立度向上を目指し、訪問による鍼灸ケア、生活動作に関するリハビリ、家族向けの介助指導などを行っています。
「本人が、体が動かないのは当たり前と思っていたり、介護が必要なら施設に入れなければ、と考える家族もいます。でも自立度は高められるので、あきらめることはありません。みなさんが最期まで自宅で過ごせるように、私たちが支援します」
森下さんが今までで印象に残っているのが、脳卒中で半身に麻痺のある男性。6カ月間のリハビリを終えて家に戻りましたが、一人では起き上がることも座ることもできず、「生きているのが地獄や」と嘆いていました。
「『自分でトイレで排泄がしたいけど、無理だ』と諦めてもいました。そこで、奥さんが手助けしやすい介助動作を作り上げ、夫妻で練習してもらいました。4カ月かけてようやくできるようになったご主人は『次は車いすに乗って妻と散歩したい』と、次の目標に向けてリハビリに励んでおられます」
森下さんは、「目標は、大きくなくていい。小さな目標でいい。洗濯物をたたむとか、新聞を取りに行くとか。『できる』という自信で気持ちが明るくなり、目標に取り組む意欲がわいてきます。明るく楽しく暮らすには、できないことを嘆くのではなく、一つでもできることを増やそうとすることが重要」と言います。
#chapter2
森下さんは大学で鍼灸を学び、大学院に進んで実験研究を行っていました。併設の大学病院の理学療法士から、訪問リハビリテーションを行う人が少ないと聞き、卒業後はリハビリテーション事業を立ち上げることを決めました。
「開業してから今まで、利用者さんとご家族の希望や事情に応じてサポートをしてきました。特にご家族は先が見えずに、大きな不安を抱えています。だから、現時点でやるべきこと、現状は急がなくていい事柄などをきちんと整理し、問題が起こったときの対処法を含め一通りの流れを伝えています。在宅ケアについて理解が深まると『気が楽になり、救われた』とおっしゃる方が少なくありません」
森下さんは、医師や看護師、ケアマネージャー、介護施設の職員に対して、自立度が向上する関わり方をアドバイスしています。
「人は、自分でできることを誰かにやってもらうと、徐々にできなくなっていきます。例えばトイレに行ったとき、自分でズボンを下すことができるのに介助者がやってしまうと、自分ではできなくなってしまいます。逆に、自分で下すことができないと言われても、やろうとしてもらうことで、できるようになっていきます。そのため、関わるすべての介助者ができないことをできるようにサポートする思考が必要だと伝えています」
#chapter3
リハビリテーションで訪問した際、利用者が不調を訴えることもあるので、臨機応変に対応することが求められます。肺炎の疑いがあれば医療機関につないだり、医師の話が伝わっていない場合は補足説明をしたり、介護サービスの提案をしたり、森下さんの業務は多岐にわたります。
「私たちの活動を明確にし、多くの人に興味を持ってもらえるように『生活機能訓練士®』という職種を作り、商標登録しました。私が第一号です」。生活機能訓練士®は、支援が必要な人の在宅生活を支える専門職。医療・介護系の有資格者で、5年以上訪問ケアを経験した人が対象です。同院のスタッフをはじめ、要件を満たした人に資格を認証していきたいと言います。
地域の医療・介護に貢献するために、人材育成まで包括的に考えている森下さん。今後は、訪問介護、デイサービス、ショートステイを組み合わせた小規模多機能型居宅介護施設をつくりたい。そして、施設を鍼灸師の卒後研修の場としても活用し、全国各地の地域に根ざして活躍できる人を育てていきたいと抱負を語ります。
「病気やケガ、加齢により、日常の動作が難しくなってもできることはあります。一緒にがんばりましょう。医療・介護従事者の方には私たちのサービスを知っていただき、力を合わせていきたいですね。最後に鍼灸師の方々。身につけた知識と技術を生かして、困っている人を助けられる仕事がここにあるので、ぜひチャレンジしてください」と熱いメッセージを送ります。
(取材年月:2021年9月)
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のどか治療院
介護される人が在宅生活で「できること」を見極め、支援することで自立度を高めて前向きに生きることをサポート。地域の医療・介護従事者と連携して、家族の負担軽減と介護される人の安心な暮らしを目指す。
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