学力と、心の強さも鍛える学習塾のプロ井手智子

学力と、心の強さも鍛える学習塾のプロ

井手智子

世の中にはどんな職業、どんなニーズがあるか。将来を描く手助けも

　学習塾の役割は、子どもたちの学力アップを手助けすることですが、いで塾では、創立当初から「合格のその先」という言葉をスローガンに掲げています。「将来何になりたいかと聞いても、答えられる小中学生はそう多くありません。理由はいくつかあって、一つは、社会に興味がなく、そもそもどんな仕事があるのかを知らないこと。もう一つは、周りの大人や日々のニュースなどを見て、将来にあまり希望を持てなくなっていることが考えられると思います」と話すのは、いで塾塾長の井手智子さんです。

　将来のことを具体的に描けない子どもたちに対し、「世の中にはこんな仕事があるとか、どんな職業が何を支えているかなどを教えること。さらには、学業を通して子どもたちの想像力、自主性、そして精神力を鍛えることをモットーにしています」。いずれ子どもたちが飛び込んでいく社会について教える大人が、親のほかに一人でも多くいるほうがいいと井手さんは言います。「私が子どもの頃に比べて、今は職業の種類もかなり多種多様になっています。今後、AIにとって代わられるかもしれない職業や、なくなってしまう職業があるかもしれないことも踏まえた上で、世の中にどんなニーズがあるのか、どういうことが社会貢献につながるのか。私が話すことを材料にして、自分はどうしていこうかと考えたり、何か新しいことを生み出せるのならその種にしてほしいと思っています」

子育て世代の助けにもなりたい。子どもと「話す」ことも大切に

　塾を立ち上げる前はエンジニアだったという井手さん。「社内結婚をして子どもが生まれても、当時は育児休暇や時短勤務もありませんでしたから大変でした」。そんな中、子どもとの時間をもっと大切にしたいと塾を開設したことが、いで塾の始まりです。いで塾に、ひとり親家庭に対する割引制度があるのも、井手さんのそんな経験があるからこそ。「お父さんお母さんがいても近くに頼れるご実家がないとか、大変なご家庭はあります。自分の子育ての時と同じように、困っている親御さんの助けにもなりたいと、創設時も今も思っています」。

　学習スタイルは、多くても1クラス3人。マンツーマンのクラスもあり、基本的には個人授業に近い形態です。一人ひとりの生徒の様子を細かに把握して、必要であれば補習の際に「話す」時間をしっかりと設けていることが特色です。「気になることや心配事があれば、それは学業に響きます。私と話すことで生徒の気持ちが軽くなり、少しでも学業に集中できれば」と井手さん。そのため、メンタルトレーナーという民間資格も取得。「たとえばなかなか学校に行けないお子さんも、ただなぐさめるのではなく、少しずつ心を強くしていってくれるように話すことを心がけています」。

　そんな子どもたちからは教えられることも多いそう。「子どもだからと思っていると、すごくしっかりした意見を言ってきたり、友だちのことをそこまで思ってあげられるんだと感心することも。親御さんが知っている以上にいろんなことを考えて悩んでいると知ると、こちらが思う以上に、一人前の人間として成長していると感じます」。

受験を目標にすることも大事。通過点ごとに努力する大切さも教えたい

　「勉強を苦行だと思っているお子さんは少なくありません」と井手さん。「そんな時は、ある企業の採用担当者から聞いた話をします。企業は学歴が高い人を採用したいのではなく、学歴が高いことは、勉強する苦労を乗り越えた人だと判断するということ。苦労を乗り越えたということは、成長できたということだと、その企業の方はおっしゃったんです。がんばること自体が大事だと、子どもたちに伝えています」

　子どもの数の減少もあり、今は「行ける高校がない」ということはありません。とりあえず入ることができる高校に進学し、そこからやり直すことは不可能ではないと井手さん。「しかし、行きたい高校に入ることを目標にして高校受験合格を一つの通過点と考えれば、そこを通過したら、さらなる高みを目指せます。受験だけがすべてではありませんが、お子さんにとっては分かりやすい目標ですから、そこを一緒にきちんと考えて指導したいと思っています」。

　成人式を迎えた元・塾生が遊びに来て、「お陰様で成人式を迎えました」と言ってくれた時、「塾をやっていて良かった」と感じたという井手さん。これからもたくさんの子どもたちが学び、気軽に戻ってきてくれる塾であり続けたいと話してくれました。

（取材年月：2020年3月）

一人ひとりの学力に合わせた指導と、メンタル面も鍛える学習塾

世の中にはどんな職業、どんなニーズがあるか。将来を描く手助けも

子育て世代の助けにもなりたい。子どもと「話す」ことも大切に

受験を目標にすることも大事。通過点ごとに努力する大切さも教えたい

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