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くまもとの気候風土を生かした木の家を、建て主、大工、建築家で共につくる

地域の気候風土を生かした木の家づくりのプロ

梅田彰

梅田彰 うめだあきら
梅田彰 うめだあきら

#chapter1

見学会を通して木の家での暮らしの声を共有し、長く付き合える家づくりを提案

 「私たちは地域の気候風土を生かした家づくりをご提案しています。木は『現(あらわ)し』で使って初めて、その良さがわかります」と語るのは、「FU設計」の一級建築士・梅田彰さん。

 「現し」とは、柱や梁などの構造体が見える仕上げのこと。梁が見える吹き抜けの天井や柱が見える真壁、無垢材を用いた床など、木の家には調湿作用や香りといった数値には表せない快適さがあると言います。

 「私たちはモデルハウスを持っていませんので、これまで建てた家がモデルハウスです。建て主さんにお願いして見学会を行っています」

 見学会では、住まい手自らが質問に答えたり、木の家での暮らしについて生の声を聴いていただく機会になっています。
 「木は乾燥で収縮するので、夜中にパンと大きい音がするという話もでます。木の割れは、クレームになりやすいのですが、強度的には問題が無く、住まい手の話を聞くと、みなさん納得されます」

 60代の夫婦から依頼された「終の棲家(ついのすみか)」は、寝室をフルオープンで開放できる建具で仕切った小さな家でした。
 「寝たきりになったら建具をを開放して一緒にご飯を食べようとか、お葬式のときはワンルームにして一番奥に祭壇を設け回遊できるなどなど、いろんなことを話しながら造りました。興味を持って見ていただいた方たちも同じように老後を見据えた住まいを考えていきたいと、計画を進めています」

 新築だけでなく既存住宅の改修が増えています。築約150年の農家では、蔵、納屋、離れ、母屋を20年の歳月をかけて順番に再生しました。
 「家は建てて終わりではありません。暮らしに合わせて手を入れ、傷んだところは繕う必要がありますので、長いお付き合いが必要だと思っています」

#chapter2

古民家移築で木造の面白さを発見

 梅田さんが建築の設計に興味を持ったのは小学校高学年の頃です。
 「建設中の現場で図面を広げながら指示している姿を見てかっこいいなと憧れを抱きました。後日完成した建物を見てこの仕事をやりたいと心を決めました」
 
 高校卒業後は大学の建設学科に進学。後に「FU設計」を共同主宰することとなる藤木さんと出会います。就職先は違いましたが、先に藤木さんが独立し、梅田さんも当時の勤務先を辞めることに。
 「これからは個人より組織のほうがよいということで、二人で事務所を始めることにしました」

 1991年に会社を設立してからは、数々のコンクールで受賞歴を重ねます。対象は住宅、保育園、道の駅、温浴施設など多岐にわたり、その大半は木造建築です。
 当初は木造専門というわけではなく、事務所開設後、県内の無くなってしまう古民家を記録だけでも残そうと調査を行っていました。そして業務として古民家を「肥後民家村」に移築したことが転機となりました。

 「仕口や継手といって、木材に加工を施して接合し、木と木を組み上げた昔の家屋は、解体しても順を追って組み直せばきれいに再現できるんです。解体していくと棟札や仕口の中から墨書が出てきたりして建物の履歴が分かったりします」

 古くから、循環型の暮らしの仕組みが構築されていることにも気づきました。
 「木や土や紙など全部身の回りにある素材で、なおかつ環境への負荷が少ない。再利用もできて合理的、システマチックで面白い。それで木の家を勉強してみようと思いました」

梅田彰 うめだあきら

#chapter3

地元の木材を用いた地産地消の家づくりを目指し、木が育つ山の見学会も開催

 「木の魅力は言葉では伝えきれません。柔らかい質感とか心地よい温かみとか、素足で歩いた時の肌なじみとか。建て主には、熊本で暮らしていくのであれば環境保全のためにも県内の山で育った木で家づくりしましょうとお声掛けしています」

 梅田さんは、林家、製材所、工務店、建築家などがメンバーとなり、地産地消の家づくりを目指す「あやすぎ家造りネットワーク」に参画。希望者を募り、各種見学会を開催しています。

 産地の山に案内し、木の育成状況を説明したり伐採に立ち会ったり、製材所では木工体験。家が完成した後では目にすることができない構造を見るため、作業中の現場にも赴きます。
 「家は共につくるものと考えています。建て主が参加して家づくりの過程を学び、作り手の苦労を知れば、家に対する愛着が生まれメンテナンスについても理解が得られます」

 また、地域の木材を使って地元の大工や職人が家を建てるサイクルが生まれれば、生産者も加工業者も含め共存共栄することができ、それぞれの技術を継承することができます。

 「うちの事務所の強みは設計だけではなく、大工さん、左官さん、建具屋さん、設備屋さんなど多くの職人さんとセットだと思っています。みんなの顔が見える関係があって、あうんの呼吸で力を合わせていきたいと考えています。建て主が『居心地のいい住まいができた』、大工さんや職人さん、建築家も『いい仕事できた』と、みんなが満足できる家づくりを続けていきたいですね」

(取材年月:2023年10月)

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専門家プロフィール

梅田彰

地域の気候風土を生かした木の家づくりのプロ

梅田彰プロ

一級建築士

有限会社FU設計

住宅・保育園・公共施設から古民家の改修まで幅広く手掛けており、受賞歴も多数。家は共につくるものという考えのもと、建て主、大工や職人とともに地域の気候風土を生かした木の家づくりを実践している。

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