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家財整理で出会った顧客の人生を立て直し、最期まで支えたい

顧客の生活改善や人生の最期まで寄り添う家財整理のプロ

布田あすか

布田あすか ふたあすか
布田あすか ふたあすか

#chapter1

ゴミ屋敷に至った経緯をヒアリングし、細やかにサポート

 「世の中にこんなにあるのかと驚くほど、毎月ゴミ屋敷の片付けをしています。一人住まいの高齢者のお宅もありますが、仕事や子育てに追われて手が回らなくなったなど、健康に働いている人の家でも発生しているんです」

 そう語るのは、廃棄物収集運搬や、不用品・家電製品の回収、生前・遺品整理を手掛ける「クリーン・アート」の布田あすかさん。ゴミ屋敷が増加している現状を、「社会問題として捉える必要があるのではないか」と訴えます。

 「洗濯物をしまわずに放置する程度のことがきっかけだと思います。次第に洋服が積み重なったり、ゴミ出しのタイミングが合わなかったりと、ものが蓄積して天井まで達する量になってしまうんです。そこまで至るには、何らかの原因があるんです」

 依頼先を訪れて、ゴミがたまってしまった過程を丁寧にヒアリングし、状況によっては無料で相談できる弁護士や、行政の担当窓口、社会福祉協議会などを紹介します。「自分ではどうしようもないので手を貸してほしい。でも費用がない」という場合には、予算を聞いて作業を分割にしたり、生活スペースの確保を優先するなどできることを提案。「何とかしたい」という気持ちに応えるために知恵を絞ります。

 「生きているうちに出会えたら、何かしらの支援ができます。しかし、ゴミ屋敷の中で亡くなっているケースもあります。本人もこんな状態の最期は望んでいないはず。誰にも相談できず、どうしてよいかわからず、ゴミに埋もれて息を引き取る。胸が締め付けられる思いがします」

#chapter2

家財整理はゴミを片付けるだけではなく、誠意を込めてその人の人生に関わる覚悟が必要

 生前整理、遺品整理、ゴミ屋敷清掃、特殊清掃、引っ越しの荷造りなどさまざまな片付けがあります。布田さんは、家に関する片付けを広く柔軟に捉えるために総称して「家財整理」と呼んでいます。

 ゴミが天井にまで及ぶ一軒家の作業は1週間を要します。まとめて一気に処分するのではなく、一つ一つ確認しながら整理するようスタッフにも徹底。不用品に見えても、住んでいる本人にとってそうでない物がたくさんあるからです。

 「食器棚から、お子さんが父の日にプレゼントした湯のみが出てきたらちゃんととっておきますし、『へその緒があるはず』と言われて必死に見つけたこともあります。思い出の品や写真が出てきた時は、涙を流して喜んでくださいます。その顔を見ると、私も嬉しいです」

 ゴミ屋敷ならではの配慮は他にもあります。例えば、近隣住民に大量のゴミを出すことを知られたくないので、小分けにして運び出してほしいといった要望にも応じます。

 「また、人が入ると虫が移動して周囲に迷惑がかかることもありますので、状況に応じて最初は大人数でなく2〜3人で取り掛かることが多いです。家財整理は心配りが大切で、その人の人生に誠意を込めて関わる覚悟が求められます」

 布田さんのもとでは、案件終了後も様子伺いで定期的に電話をしたり、近くに行った時は顔を出すようにしています。「残念ながら、生活が改善する人ばかりではないです。でも連絡をとっていたら、適宜サポートできますから。一人でも前向きになってくれればと願っています」

布田あすか ふたあすか

#chapter3

自分が亡くなった後を案じる身寄りがない人たちを、僧侶として支えたい

 廃棄物の収集運搬を生業とする中で、家財整理の依頼が増え必要にかられて動いてきました。孤独死などでダメージを受けた室内の原状回復をするために、特殊清掃や遺品整理の専門知識も習得しました。

 「特殊清掃の勉強をした時は、小学校にあがる前の子どもたちを預けて、泊まりがけで何度も講習会に参加しました。子どもたちには寂しい思いをさせましたが、とにかく必死でした」

 布田さんは、僧侶になるために業務の合間をぬって通信教育課程で学び、「得度」の儀式を経て、浄土真宗本願寺の僧侶となります。

 「一人で暮らす方とお話しすると、自分が死んだらお葬式やお骨はどうなるかと心配しているんです。どうしたら助けることができるか悩んでいましたが、私が僧侶になって最期を支えれば解決すると気づいたんです」

 布田さんの仕事を理解できるようになった子どもたちは「早くお坊さんになって、おじいちゃん、おばあちゃんを見てあげないといかんよ」と応援してくれます。

 「僧侶なら死に関する悩みも話しやすいとも思うんです。生きている間に、何とか前を向けるように力になりたいんです。お骨になった後も供養しますし『最後の最後まであなたを見捨てませんよ』という相手に対する私なりの誠意です」

 「私を頼り、待っている人たちに尽くしたいという使命感があるので、突き進みます。全然苦ではないですよ」と、全てを包み込むような優しい笑顔で語ってくれました。

(取材年月:2022年6月)

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布田あすか

顧客の生活改善や人生の最期まで寄り添う家財整理のプロ

布田あすかプロ

株式会社クリーン・アート

さまざまな片付けを総称して「家財整理」と呼び、思いに寄り添う片付けを提供する他、必要に応じて支援窓口を紹介して生活の立て直しを図る。浄土真宗本願寺派の僧侶として、社会的弱者と呼ばれる方の最期を支える

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