美しく強靭、手仕事で屋根を築く瓦葺きのプロ
徳能義晃
Mybestpro Interview
美しく強靭、手仕事で屋根を築く瓦葺きのプロ
徳能義晃
#chapter1
戦後、祖父の代からセメント瓦の製造を始めた有限会社徳能工業所。住宅建築の需要に沸いた当時、セメント瓦も飛ぶように売れました。その後、低コストのトタン屋根が出始め、セメント瓦の需要は低迷。25年前にセメント瓦の製造から撤退し、現在は本瓦屋根の瓦葺、葺き替え工事、リフォームなどを行っています。
現社長の雅章氏の跡を継ぐと決めた義晃氏は、26歳の時に8年間勤めた公務員を退職。京都の瓦屋へ修行に出向き、瓦葺職人としての腕を磨きました。高知に帰ってきて12年、職人でもあると父とともに、数多くの家々や、神社仏閣の瓦を葺いてきました。
瓦屋根の良さは、美しさと耐久性。金属性の屋根は30年ほどで塗り替えが必要となりますが、本瓦の場合は約100年の耐久性があります。断熱性・遮音性に優れ、快適な住環境を保ちます。
㈲徳能工業所が扱っているのは、主に淡路産の日本瓦、愛知産の石州瓦、そして軽量が特徴のセラミック瓦。さまざまな色や形がある中で、予算に合わせて家の雰囲気にあった屋根をデザインし、台風や地震にも耐えうる頑丈な施工を行います。
最近では、いろいろな色の瓦を混ぜてグラデーション風にしたり、災害時に上空から見えるよう瓦で名前を書いたりすることもあるという義晃さん。ビシッとシャープな斜めのラインを出すのが職人の腕。「瓦屋根ならどんなものでも作れます!」というほどの技術力です。
#chapter2
屋根は時代によってその形態が変化し、最近は太陽光パネルを設置するオール電化住宅も増えてきました。瓦にはない「発電する」という機能があり、省エネに大きく貢献するシステムです。しかし、「家のたたずまい」という観点から見れば、「瓦屋根の家は重厚感があり、美観に優れている」と義晃さん。
瓦は一枚一枚、隅にでっぱりやくぼみがあり、それをピタリと合わせることで水が入らないように重なっていきます。強い雨でも水が跳ね上がらないよう切り込みが入っており、機能性に優れた形状です。「昔の瓦と違って、今はJIS規格でこの釘穴を開けることが決められています」と、義晃さんは小さな穴を指しました。一枚一枚釘で丁寧に止めることで、地震の時の落下事故を防ぎ、風で飛ぶこともほとんどないと言います。
確かに、台風や地震の心配が大きい高知ですが、それに対する対策もあり、今ではいろいろな装飾を省いて低めの屋根にすることが多くなってきました。瓦自体も軽くなり、技術の進歩により瓦も進化しています。
「作業は丁寧に、仕事は安全に」がモットー。高い所での作業は危険が伴うため、ヘルメットと安全帯を装着してケガをしないよう万全の注意を払います。「屋根の仕事が止まると他の職人さんにも迷惑をかけてしまいますから」と、穏やかな口調に実直な人柄がのぞきます。
#chapter3
瓦屋根工事技士資格、瓦葺き作業 一級技能士の資格とともに、屋根診断技士の資格も持つ義晃さん。屋根にまつわるさまざまな悩みを解決するスペシャリストでもあります。
通常、自宅で生活していて屋根の異変に気づくのは雨漏りです。晴れた日には症状がわからないので、雨の日に現地を訪問し、軒先から屋根までくまなくチェック。瓦がずれているだけのこともあれば、割れている部分を取り替えなくてはならない場合もあります。台風の後、地面に落下物があれば修繕が必要なサインであり、屋根のすき間に鳥やコウモリが入り込むと寄生虫がついたり腐食の原因にもなるので、生き物の糞にも注意が必要だと話します。
また、シロアリによって屋根の土台が傷んでいる場合は、すべて瓦をはがして土台を補修し、葺き直す工事を行います。その場合は既存の瓦を使用し、元通りの状態に復元します。
義晃さんは、「異変を感じたら、どんなことでもご相談ください。初期のうちに手当てをすれば、傷みも最小限に押さえられ、費用も安く済みます」とアドバイス。
今後は、屋根だけでなく、壁や土間など、「瓦の良さを生かした装飾にも取り組んでいきたい」と話す義晃さん。日本の風土に合った「瓦」という素材を身近に、魅力的に生かしていきたいと考えています。
(取材年月:2017年4月)
リンクをコピーしました
Profile
美しく強靭、手仕事で屋根を築く瓦葺きのプロ
徳能義晃プロ
有限会社 徳能工業所
屋根瓦職人の三代目。頑丈で美しい屋根瓦を葺く職人であると同時に、さまざまなトラブルを解決するプロフェッショナル。社長の父とタッグを組んで精巧に瓦を葺く技術は、棟梁たちにも信頼が厚い。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
掲載専門家について
マイベストプロ高知に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または高知放送が取材しています。[→審査基準]