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南フランスの伝統的なお菓子を独自にアレンジし、個性的な商品を提供

独自にアレンジした個性的なフランス菓子を提供する洋菓子職人

宍戸哉夫

宍戸哉夫 ししどちかお
宍戸哉夫 ししどちかお

#chapter1

生チョコのように濃厚でやわらかい口当たりの焼き菓子「蒸ショコラ」が人気

 神奈川県川崎市を拠点に、市内と都内で4店舗を構えるフランス菓子専門店「イルフェジュール」。南フランスの伝統的なお菓子を独自にアレンジした、個性的な商品を展開しています。

 「当方の一番人気は『蒸ショコラ』です。生チョコのように濃厚で、やわらかい口どけが多くの方からご好評をいただいております」と話すのは、オーナーシェフの宍戸哉夫さん。蒸ショコラは月に2万5000個、バレンタインデーの時期は2週間で10~14万個も売れるヒット商品で、市のふるさと納税の返礼品にも採用されています。

 「蒸ショコラのもとになった『クラシックショコラ』は、卵白を泡立ててメレンゲを作り、生地に空気を含ませますが、当方はチョコレートと卵白を乳化させ、空気を抜きながら作ります。生地の密着度を高めるオリジナル製法で、特許も取得しているんですよ」

 ほかにも、しっとりとした食感が得られるシルクタンパク溶液を使用した「なめらかシルクマドレーヌ」など焼き菓子は約30種類、生菓子はタルトを中心にデコレーションケーキなど約20種類を提供しています。

 素材の品質にもこだわる宍戸さんは、国内外から選りすぐりを取り寄せています。「タルト生地に用いる小麦粉はフランスから船便で麦のまま運ばれ、国内で製粉されたものを使っていて、熟成された深い味わいが特長です」

 小麦粉は種類によって細かく使い分け、フルーツを乗せた冷たいタルトにはサクサク感が長持ちしやすい中力粉、ギフト向けのタルトには常温に適した薄力粉と、それぞれの持ち味を生かしています。

#chapter2

暮らしや人生を彩る「ハッピーの名脇役」である洋菓子作りがやりがい

 父親が川崎の地で31年間、洋菓子店を営んでいたという宍戸さん。自身も同じ道を志し、銀座、代官山、白金の有名店で経験を積みました。洋菓子コンテスト「ジャパンケーキショー」(東京都洋菓子協会主催)で銀賞を受賞するなど実績を重ね、2014年に父の店を建て替える形で開業しました。

 「この辺りは日常的にスイーツを購入する人が多く、競合店が多い地域です。父が店を出していたということもありますが、自分もこの地で挑戦してみたい思いがあり、出店を決めました」

 日々、数々の品を手掛ける宍戸さんは、洋菓子が持つ役割を「ハッピーの名脇役」と表現します。
 「ティータイムや食後のデザートとしてだけでなく、祝い事でケーキを買うこともありますよね。人々が喜びを分かち合う場面を引き立ててくれるものなんです」

 暮らしや人生を彩る存在だと強く感じたのは、白金の店にシェフとして勤めていた頃。結婚式場からの発注で、シュークリームを積み重ねてあめ細工の花などを飾る「クロカンブッシュ」という、フランスで古くから伝わるウエディングケーキを作りました。

 「納入したのが梅雨の時期で湿気が強く、あめ細工が溶けて壊れないか心配で、現場まで付き添い、見守っていました。特にトラブルもなくホッとしたのと同時に、自分のケーキがスポットライトを浴び、それを囲みながら新郎新婦や参列者が幸せに満ちた表情で写真を撮っている姿にとても感動しました。洋菓子職人として、改めてうれしさとやりがいを感じた瞬間でした」

宍戸哉夫 ししどちかお

#chapter3

食育教室やワークライフバランス導入で地元に恩返しすると共に業界の発展にもつなげたい

 宍戸さんは、川崎市がPRしている「かわさき農産物ブランド品」の宮前メロン、多摩川梨といった地元の食材も積極的に取り入れています。
 「岡上産のピンクブルーベリーもあって、地域にはおいしい食材がたくさんあります。フランス料理の基本は、その土地で育まれてきた作物をマリアージュすること。海外の素材も使いますが、地産地消を大事にしています」

 食育教室を通じて、子どもたちに食の大切さなどを伝えている宍戸さん。職場では働きやすい環境づくりとしてワークライフバランスを実践。市の産業の発展や市民生活を支える技術・技能職者として「かわさきマイスター」にも認定されていています。

 「活動に取り組む理由の一つは地元への恩返し。もう一つは業界の改革のためです。パティシエは子どもが将来なりたい職業としてよく挙げられますが、仕事の過酷さから夢をあきらめてしまう人がいるのも現実。そういった状況を少しずつ変えていけたらと考えています」

 川崎市麻生区の本店のほかに新百合ヶ丘、東京・立川、吉祥寺に店舗があり、2023年秋には川崎市多摩区にチョコレートの専門店をオープンさせる予定。イートインのカフェを併設し、チョコレート味のソフトクリームなども販売するそうです。

 「洋菓子とは全く異なるジャンルからインスピレーションをもらうようにしており、当方ならではのオリジナリティーを心掛けています。ここでしか味わえない品々をぜひ楽しんでください」と呼び掛けます。

(取材年月:2023年5月)

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宍戸哉夫

独自にアレンジした個性的なフランス菓子を提供する洋菓子職人

宍戸哉夫プロ

洋菓子職人

有限会社イルフェジュール

独自にアレンジした個性的なフランス菓子を提供する職人。濃厚な味わいとやわらかい食感の焼き菓子「蒸ショコラ」は月2万5000個、バレンタインデーの時期は2週間で10~14万個売れるヒット商品です。

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