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人が近寄れない場所へ到達するロープアクセスの技術を駆使して事業を展開

ロープアクセスにおける高所・地下・閉所のプロ

伊藤徳光

伊藤徳光 いとうのりみつ
伊藤徳光 いとうのりみつ

#chapter1

橋梁、ダムなどインフラの調査・点検、樹木の特殊伐採や剪定にも対応

 「ロープに体を預け、空中を自在に移動するロープアクセスは、普段、人が近寄れない場所へ近づくための手段として用いられています。私どもは、高所・難所にアプローチするプロ集団として、東北地方を中心に北海道から関東圏にかけて幅広く活動しています」

 そう話すのは、岩手県一関市の「日本空糸」代表の伊藤徳光さん。ロープアクセスのスキルを駆使し、インフラの調査・点検、樹木の特殊伐採や剪定を手掛け、官民双方の案件に対応。技術講習など教育事業も展開しています。

 「当方が特に得意としているのは橋梁やダムの点検です。劣化状況などを的確に捉える実務力と強固なチームワークにより精度を高め、おかげさまで多くの方に頼りにしていただいています」

 最近は、テクノロジーの力で業務を効率化する動きもありますが、「人の目でじっくりと観察しなければ見抜けない異常もあります。だからこそ、私たちが必要とされているのです」と力を込める伊藤さん。そそり立つ壁面など現場は難易度が高く、依頼を完遂したときには大きなやりがいを感じると言います。

 例えば、主塔の高さが70mもある巨大な斜張橋の点検を任された際は、強風が吹き付けるなか風を見ながら橋を支える全てのケーブルに対し、社員総出で目視検査と打診調査を行ったそうです。「中断を挟みながら、1週間かけて無事に終えることができました。発注者の方をその場に連れていけないため、私たちにかかる責任は大きいです。現況をどのように判断して、見たものをどう伝えるか。コミュニケーション能力も求められます」

#chapter2

京都のロープアクセス調査会社で修業した後、仲間と一緒に独立

 伊藤さんは1986年、一関市の山間部で家畜商を営む家に生まれました。緑豊かな山々に囲まれた地で育ち、幼い頃から「将来は自然環境に関わる分野で起業したい」という夢を抱いていたそうです。

 一関工業高等専門学校に進学し、物理や生物学など幅広い学問を網羅する物質化学工学科を専攻。卒業後は新潟県へ赴き、液体の特殊産業廃棄物処理を請け負う事業者に就職しました。その後、京都府にあるロープアクセス調査会社へ転職します。

 「高専で学んだ知識を生かしたいと思い産廃処理の業界を選びましたが、次第に慣れ親しんだ山の中で働きたいという気持ちが強くなりました。仕事を学んだ前社については、たまたまインターネットでその存在を知り、どんな場所であっても物ともせず、果敢に作業する様子が非常にかっこよく見えたのです。身一つで臨む世界に心をひかれ、高専の同級生に声を掛け、彼と一緒に入れてもらうことになりました」

 未経験からのスタートでしたが、先輩らの親身な指導の下、一からロープアクセスによる調査・点検に関する技能を養いました。「人が簡単に到達できないポイントへ行けるワクワク感は、なかなか味わえるものではありません。また、難しい場所であるだけに、冒険心に加え社会の役に立っているという実感があり、すぐにこの仕事が好きになりました」

 実務を通じて実践的なノウハウを身に付けた伊藤さんは、一緒に入社した同級生らと創業し、2015年に法人化を果たしました。

伊藤徳光 いとうのりみつ

#chapter3

後進の育成に尽力するとともに、事業を成功させることで地元のロールモデルに

 独立後は、ホームページを見た新規顧客からの問い合わせを丁寧にこなすことで、コツコツと信頼関係を構築。各方面からの要望に応え、実績を積んできました。また、地域の事業者、専門家らとともに、災害時に備えた公開レスキュー訓練も実施。取り組みの輪を広げるため尽力しています。

 伊藤さんは今後の展望として、ロープアクセスを用いた新規事業に乗り出すことも視野に入れています。「リスクを伴い、専門性を要する現場を担うプロフェッショナルな人材が減り、手が足りなくて困っているという話を取引先さまからよく聞きます。私たちは奥深い山の中や傾斜地を歩き慣れていますし、危険箇所を熟知し、安全管理も徹底しています。培ってきた知見を生かし、機材搬送や作業補助など多角的にビジネスアイデアを出していくつもりです」

 将来的には、東北を代表する企業へと日本空糸を育てていきたいと考えている伊藤さん。現状の社員数は10人弱ですが、2030年までに倍の20人体制にする方針です。組織力を強化するため、後進の育成にもさらに力を入れていきます。

 「私が生まれ育った一関市で起業するにあたって、大きく二つの目標がありました。一つは若い人の新しい働く場の選択肢を創出することです。もう一つは、自分たちが事業を立ち上げて成功することによって、地方における働き方のひとつのロールモデルになること。地方で活躍できることを知ってもらい、そして『日本空糸みたいになりたい』と思ってもらえるように、日々精進していきます」

(取材年月:2023年7月)

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専門家プロフィール

伊藤徳光

ロープアクセスにおける高所・地下・閉所のプロ

伊藤徳光プロ

建設コンサルタント

日本空糸株式会社

ロープアクセスをはじめとする各種ロープ高所作業技術を駆使し、主にインフラの調査・点検を手掛けています。高所など人が近寄れない場所を観察し、異常の有無を記録します。前例のない難しい現場もお任せください。

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