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伝統的な日本家屋の素晴らしさを後世に

伝統的な日本家屋に新しい命を宿す古民家再生のプロ

北野望

北野望 きたののぞむ
北野望 きたののぞむ

#chapter1

コストを抑え、時代に合った古民家再生術

北野住建の北野望さんは、古民家再生のプロ。伝統的な日本家屋の素晴らしさ、奥深さに魅せられ、これまでに何軒もの古民家再生を手掛けてきました。

「古民家をまともに再生しようとすればコストが掛かります。そのコストをいかにして抑えるかが一つのポイント」だと北野さん。さらに、古いものをただ補強するのではなく、現代の生活環境に適応させ、耐震性にも配慮しながらリニューアルする必要性を強調。家族が快適に暮らして新たな歴史を刻めるようにすることが、自分の使命だと説明します。

小さい頃から作ることが大好きで、建築への強い憧れを抱いていた北野さん。大学卒業後は間仕切りの総合メーカーへ就職し、その後、インテリア会社に転職しました。

家具の営業マンとして現場に足を運ぶたびに、ますます建築に対する思いが高まっていった北野さんは、現場で作業する職人と積極的に交流。家の建て方について少しずつ教えてもらったのだとか。「あの時に聞いたことは今でも役立っていますね」。学校では学べない“生きた知識”を身に付け、仕事をしながら二級建築士の資格を取得。後に退職して猛勉強し、一級建築士の資格を取りました。

北野住建を立ち上げてからは、一般住宅の新築やリフォーム、建築設計を手掛ける毎日。そんなある時、民家の天井修理を頼まれました。調査のために天井をめくってみると、「見事な梁(はり)が出てきたんですよ」と目を輝かせます。

#chapter2

長年生き続けた家には木の魅力がある

梁とは、屋根の重みを支えるために、水平方向に架けられた太い木材のこと。「これを生かさない手はない」とひらめき、梁を生かした設計を再提案。防腐剤の成分を持つ柿渋を塗り、周りを白壁にして再生したところ、見違える様子になり依頼主も大喜び。そこから北野さんは古民家再生の魅力に目覚めていったのです。

その後、次々と古い日本家屋に新しい命を吹き込んでいきました。石川県かほく市のH邸では、立派な梁が渡された高い天井の居間を中心に改築。耐震設計に伴った基礎工事をするため、家をジャッキで持ち上げて土台を交換しましたが、古い家が骨格だけになって動く工程は何ともダイナミックです。

「コストは最小限、安全は最大限」という信念を掲げ、現場・工程管理までを徹底。専門知識を生かしてムダを省き、独自ルートで取り寄せた高級材「クサマキ(青森ヒバ)」を内外装に使用するなど、こだわりの仕上がりで建築主を唸らせました。

また、石川県宝達志水町のM邸は、築百年以上経った合掌造りの旧家であり、古い大梁の天井が特徴。その梁には柿渋、壁には珪藻土、鴨居には漆を塗り、床は無垢のカリン板張りに。現代生活に合うよう空調も工夫して設置し、民宿として甦らせました。

ちなみにここの梁は、白山の白峰地区からわざわざ運んだ良質なスギだったそう。「古民家の状態は蓋を開けてみないと分からない、常に新しい発見と感動がありますね」としみじみ。「長い間生き続けている民家には木の魅力がある。木肌には、加工の美しさや経年変化がもたらした深みが見られ、日々営まれてきた暮らしの記憶も刻まれている」。そう話す北野さんは、古民家と対話することを楽しんでいる様子でした。

北野望 きたののぞむ

#chapter3

古民家再生のスペシャリストが勢ぞろい

古民家再生という一大プロジェクトを成功させるため、北野さんは経験と知識が豊富な熟練スタッフと手を組んでおり、いずれも大工、左官、瓦、基礎などのスペシャリストばかり。設計図通りに作る新築と違って予期せぬことの連続ですから、ほぼ毎日現場へ出向き、コミュニケーションを図りながら工事を進めています。

「大工さんは、先人の技に自分の手が加わることを誇りに思っている。仕事としてやりがいがあると言ってくれますね」と嬉しそう。こういった職人的なスタッフも、後世に伝えていかなくてはならないと訴えます。

「日本の建築業界は新築が主流ですが、ヨーロッパやアメリカでは七十年、八十年以上の家を大事に修理しながら住み続けている。日本の家屋もそうあるべきです。先人が培ってきた建築文化のノウハウをどう守り継承していくのか、それが今、問われている」

古民家再生のロマンを追い続ける北野さんの旅はまだ始まったばかり。今後は、環境を考えたエコ住宅の要素も含めて取り組んでいきたいと意欲的です。

「今は良いものを長く維持していくのが大切な時代。壊すのではなく、再生するという選択肢があることを知ってほしい。声を掛けていただければ、お客さまの納得がいくまで古民家再生に取り組ませていただきます」。北野さんは最後にそう語っていました。

(取材年月:2013年8月)

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北野望

伝統的な日本家屋に新しい命を宿す古民家再生のプロ

北野望プロ

建築家

北野住建

経験と知識が豊富な大工、左官、瓦、基礎などの熟練スタッフが一丸となって古民家再生を手掛けている。各スタッフともその道のプロであり、古い家屋を現代によみがえらせるスペシャリストの集団として待機している。

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