伝統工芸の美しさと、ものづくりの魅力を伝えるカービングのプロ
吉留巳代子
Mybestpro Interview
伝統工芸の美しさと、ものづくりの魅力を伝えるカービングのプロ
吉留巳代子
#chapter1
700年の歴史を持つタイ発祥のカービング。王族の食卓を美しく飾るために生まれた伝統工芸で、果物や野菜、石けんなどに繊細な彫刻を施します。専用ナイフで花や模様を彫り出し、見た目の美しさに加え、香りや色合いも楽しめる芸術として世界中で愛されています。
「果物を彫るフルーツカービング、野菜を彫るベジタブルカービングは、『見て』『食べて』『香り』を楽しめるのが醍醐味です。後に派生した石けんを彫るソープカービングは、インテリアやギフトとしても喜ばれています」
そう語るのは、加古川市で「カービングアート教室 吉鈴〜よしりん〜」を主宰する吉留巳代子さん。伝統的な3種に加え、近年生まれたレイヤーカービングも指導。層状に重ねた材料を彫ることで奥行きのある立体的な作品に仕上がります。また、透明なビニールシートを彫り、ステンドグラスのように仕上げるシャインカービング、沖縄で愛用されている履物の島ぞうりに模様を彫るビーサンカービングや車の廃材から出来たディンプルアートなど、多彩なメニューを展開。学校や高齢者施設への出張レッスンも実施しています。
「工芸やアートとして素晴らしいのはもちろん、一緒に作る楽しさがあり、完成した時の達成感はひとしおです。作業中は彫刻に集中して無心になれるので、忙しい日々の中で自分と向き合う貴重な時間にもなりますよ」
教室は柔軟にスケジュールが組むことができるフリーレッスン制で、体験予約も可能。性別や年齢を問わず幅広い人が訪れ、初心者でも素敵な作品に仕上がり、多くの笑顔が生まれます。
#chapter2
洋裁や和裁、編み物が得意だった母親の影響を受け、幼少期からものづくりが好きだったという吉留さん。手芸以外にも、家具や小物にアクリル絵の具で模様を描くトールペイントや、木製のおもちゃ・家具づくりなどにも取り組んできました。
カービングとの出会いは、姫路市の商店街で偶然参加したワークショップ。
「ナイフが石けんにスッと入っていく感覚が心地よく、衝撃を受けました。さっそく家に帰って石けんとカッターナイフで試してみたものの、表面がバリバリと崩れてしまって大失敗。それをきっかけに、ワークショップで指導してくれた先生の教室に通うようになり、瞬く間に美しく仕上げてしまう技術に憧れ、約10年間学びました」
転機となったのは2019年1月。吉留さんはカービング発祥の地・タイのスクールに短期留学し、朝から夕方まで徹底的に課題に向き合いました。仕上がらない作品はホテルに持ち帰り、夜も作業するという、まるで修行のような日々を過ごしたそうです。
本場の技術を習得し、帰国後にカービング教室を開講。一時は新型コロナウイルス感染症の影響を受け生徒数が減少しますが、新たにビーサンカービングを取り入れたところ話題に。その後、シャインカービング、透明樹脂に花などを封入するクリスタルアートリウム、 キュービックジルコニアやスワロフスキーをステラクリスタル金属ネットに詰め込んだアクセサリーであるミリオンバングルなどにも対応し、カービングを中心としたアート教室として発展させていきました。
「生徒さんが作品を完成させた時の笑顔が、教室を続ける原動力です。『作品が家族に褒められた』とうれしそうに報告くださるのもやりがいを感じます」
#chapter3
2022年からは、ディンプルアート普及協会認定講師としても活動し、ディンプルアートの教室を開催しています。ディンプルアートは、車のフロントガラスの廃材をリサイクルした透明度の高い専用の絵の具で彩色する環境配慮型アート。ツルツルとした物や布等に描く事ができます。完成すると光を通してステンドグラスのように輝き、ナイフや彫刻道具を使わないため子どもから高齢者まで安全に楽しむことができます。色や余白の使い方にそれぞれの個性が現れるのだとか。
一方で、吉留さんはカービングを中心としたオーダーメード制作も手掛けています。特に人気だというのが、結婚式でのウェルカムボード。「ハッピーウェディング」と彫刻したり、名前や日付、好きなキャラクターを盛り込んだりするほか、人や動物の像など立体的な作品も得意としています。
「中でもスイカは緑・白・赤の3色が映えて華やかになります。受付に飾ると来場者の方々が『わぁ』と驚かれて、新郎新婦の顔も輝きます」
企業の周年記念や受賞祝いなど、特別なオーダーにも対応。食べたり、使ったりして楽しめるアートとして、SDGsにもつながる取り組みです。参加者へのプチギフトとして、石けんカービングやクリスタルアートリウムやディンプルアートを併せて制作することも。
自らの技術の研さんにも余念がない吉留さん。将来の夢は個展の実現です。
「今後もカービングの美しさや魅力を広めていきたいですね。同時に、ものづくりの楽しさや出来上がった時の感動を、たくさんの方にお伝えしていきたいです」
(取材年月:2025年7月)
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Profile
伝統工芸の美しさと、ものづくりの魅力を伝えるカービングのプロ
吉留巳代子プロ
カービング講師
カービングアート教室 吉鈴〜よしりん〜
タイ留学で技術を習得し、15年以上のカービング歴を持つ。果物・野菜・石けんに彫刻する伝統的なカービングのほか、近年誕生したレイヤーカービングなどにも対応。結婚式や周年記念品としてオーダーメードも好評。
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