障害の有無を問わず、一人一人の成長を支える空手指導のプロ
田中博之
Mybestpro Interview
障害の有無を問わず、一人一人の成長を支える空手指導のプロ
田中博之
#chapter1
兵庫県明石市で「田中道場」を主宰する田中博之さん。地域の子どもたちや、障害のある人に向けた空手教室を開き、心と体の成長をサポートしています。
「近年は、動きや身のこなしが不器用な子が増えていると感じます。特に『ボールをキャッチして走りながら投げる』のような、複数の動作を組み合わせるのが苦手です。公園の遊具が撤去されるなど、外遊びの機会が減ったことも要因の一つでしょう。まずは手をつないでジャンプするなど、手足をスムーズに連動させる協調運動を行い、動きのレパートリーを増やすことから始めます」
道場は空手専用に設計された施設で、床には衝撃を吸収する競技用マットを設置。身体・知的障害、発達障害と、多様な生徒を受け入れてきた経験から、安全面に配慮した環境づくりを心掛けています。
「私どもは、体力や身体能力だけでなく、人間力を養うのも目標です。道着を正しく着用して心身を統一し、道場へ入る時と出る時に一礼して敬意を払う。武道の礼儀を身につけ、仲間と切磋琢磨する中で、協調性などを高めてもらいたいと思います」
田中さんは、一人一人が力を発揮できるよう指導方法をオーダーメード。激励の言葉が響く子、何気ない一言に強く反応する子など、個性や特性を見極め、個々人に適した関わり方を追求しています。
「以前、サッカーでも能力を開花させ、悩んだ末にサッカーでプレーしていくことを選んだ生徒がいました。最後の稽古で『僕の師匠は田中先生だけです』と言ってくれたんです。空手から離れても、大切な居場所として記憶に残ればうれしいですね」
#chapter2
学生時代から空手道にまい進してきた田中さん。教員として最初に赴任した特別支援学校で「リハビリの一環になれば」と空手道部を立ち上げ、指導するようになりました。
「異動で普通科高校へ赴任すると、かつての教え子たちから『空手を続けたいが、障害のある自分たちを受け入れてくれる場所がない』という声が寄せられました。世界史を教えるのが夢で葛藤もありましたが、熱心に請われる中で、勉強を教えられる教師は他にもいるけど、パラ空手を手ほどきできる人はいないと思い至り、自分が先駆者として道を切り開くことを決意しました」
師事を求める人たちに等しく機会を届けたいと、各地の特別支援学校で空手道部の創設と顧問の育成に尽力するとともに、自宅道場を開設して稽古にあたります。障害者空手の普及に取り組むことで認知は徐々に拡大。兵庫県では、全国に先駆けて専門部会などによる連携体制が整い、県内で公式大会が開かれるまでになりました。
パラの全国大会へ引率したり、合宿を開催したり。日々の鍛錬を支える田中さんには、「強さ」以上に大事にしていることがあります。
「障害の有無に関わらず、子どもたちの“生きる力”を育みたいと考えています。空手の形は常に守り(受け)から始まるように、人を倒すための力ではなく、自らを律する精神力こそが真髄です。長い人生で困難にぶつかることもありますが、『できない』とすぐ投げ出すのではなく、苦しい状況に打ち勝ち、前を向いて進んでいけるようにと願っています」
#chapter3
教育現場や道場を通じて、数々の子どもたちと向き合ってきた田中さん。学校や家庭以外の学び舎として、寺子屋も開講しています。
「稽古の後、残っている子どもたちに、ゲーム感覚で漢字などのクイズを出していた慣例から派生して、現在は国語・算数・英語の授業を行っています。和気あいあいと学び、学習意欲も高めてほしいですね」
2025年からは、シニアを対象にした健康体操教室「まほろばの風」をスタート。少人数制で、コミュニケーションも図れるので、気軽に参加してほしいと呼び掛けます。
「時間は1回30分ほどで予約制。あおむけになって体をリラックスさせる仰臥位(ぎょうがい)、座位・立位でできる負担の少ない運動を取り入れ、毎日を元気に過ごせる体づくりをお手伝いします」
人体の構造に関する知識と、空手指導で培った「体の動かし方」を掛け合わせ、独自のエクササイズを考案。それぞれのコンディションに合わせてパーソナルレッスンを提供する背景には、「いきいきと健やかに、自分らしく人生を楽しめるように」との思いがあります。
「十数年前に娘が大病を患い、当たり前だと思っていた日常が決して当たり前ではないと気づき、あらためて健康の重要性を実感しました。幸い寛解に至りましたが、『足や腰が痛いから』といった理由で、本当に自分がしたいことをあきらめてしまうのは、とてもつらく悲しいものだと痛感しました」
田中さんは、障害のある子どもたちからシニア世代まで幅広い層に伴走。個々のペースや特性に寄り添いながら、その人が持つ力を引き出し、「できる」を育んでいきたいと語ります。
(取材年月:2026年6月)
リンクをコピーしました
Profile
障害の有無を問わず、一人一人の成長を支える空手指導のプロ
田中博之プロ
空手指導者
田中道場
障害の有無や年齢を問わず、一人一人の可能性を育む空手指導者。障害者空手の普及や38年の教員経験を生かし、空手道場や寺子屋、オリジナル体操を通じて、地域に学びと健康づくりの場を提供しています。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
掲載専門家について
マイベストプロ神戸に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または神戸新聞社が取材しています。[→審査基準]