PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

「日本に来てよかった」と外国人が感じるような環境づくりこそ求められる経営戦略

食料品販売を通じて外国人材を雇用する企業をサポートするプロ

山田智康

山田智康 やまだともみち

#chapter1

企業の義務と課題に直結。生活・文化の視点で外国人材の定着をサポート

 「日本で働く外国人は年々増えており、道内でも、水産加工や介護、建設など、さまざまな産業において海外からの人材が不可欠な存在となっています」と語るのは、函館市を拠点に外国人の生活サポートと企業コンサルティングを行う「マヨン企画」代表の山田智康さん。

 山田さんは、途上国支援など25年にわたる海外生活を経て、外国人向けの食料品店「函館アジア食料品店」を運営しています。日々の外国人との繋がりから生活の実情に深く精通しており、外国人材を雇用する企業へのコンサルティングを行っています。

 「特定技能制度や技能実習制度では、外国人の生活支援が受け入れ企業に義務付けられています。しかし、文化や生活習慣の違いから、生活の隅々まで配慮が行き届かないケースが多いのが現状です。働く側も、企業に『何をしてほしいか』を日本語で十分に説明できずに孤立しがちです。私が両者の間に入り、文化的な背景を踏まえた具体的な解決策を提言することで、企業の義務履行と外国人の生活満足度向上に貢献しています」

 外国人材の定着を阻む大きな課題の一つが食料品の買いものです。「スーパーが遠い」「母国の食べ物が買えない」といった声を受け、函館市および近郊の在留外国人を対象に、食料品の出張販売サービスを提供しています。

 企業ごとに月に一回、昼休みや就業後に巡回。ベトナム、インドネシア、ミャンマーなど、利用者のニーズが高いアジア食料品を、商品陳列棚や冷凍庫・冷蔵庫を完備した特別仕様の移動販売車に積み込み、出張販売を行っています。果物や肉魚類などの生鮮品から菓子まで、慣れ親しんだ味が手に入ると高く評価されています。

 「移動販売車が到着すると歓声をあげて喜んでくれます。外国人が買いものしている姿を見て、日本人従業員も『こんなものを食べているのか』などと、興味を持ってくれるようになりました。自然と交流が生まれ、職場の雰囲気にも良い影響があるんです」

#chapter2

開発途上国9カ国でのプロジェクト支援で培った、異文化理解と課題解決能力

 山田さんは、アメリカ留学を経て、海外協力ボランティアとしてフィリピンへ。その後、ベトナムやミャンマーなど開発途上国9カ国で、政府職員への統計指導や保健所データのシステム化業務に従事するなど、25年にわたりさまざまな国際プロジェクトの支援に携わりました。

 「言葉や習慣が異なる国での生活には苦労が絶えませんでした。しかし、その経験があるからこそ、外国人が日本で暮らす上での文化的な摩擦や生活の困難を深く理解できます。各国で触れた現地の方々の温かさを、今度は日本で生活する外国人の方々へ還元したいと考えています」

 2011年に函館市に定住し「マヨン企画」を創業。コロナ禍でエスニック居酒屋の経営が困難に陥った際、外国人客の「食の困りごと」を聞き、店内の一角でアジア食料品の販売を開始しました。

 「棚二つから始めた販売でしたが、口コミやSNSで情報が拡散し、多くの方にご来店いただきました。市内にこれほど多くの外国人が暮らしていることを知り、国籍を問わず多くの方と生活者として繋がれたのは大きな喜びです」 

 山田さんには、この成功事例とノウハウを全国へ広げるという構想があります。日本在住の外国人に向けた食料品販売事業の新規参入者に対し、商品の仕入れや運営方法など実践的なコンサルティングを提供し、全国展開を目指しています。

#chapter3

企業支援と啓発活動の両輪で、真の多文化共生社会の実現へ

 山田さんの活動は、企業のサポートにとどまらず、日本人と外国人の相互理解促進を目指す啓発活動にも注力しています。

 「互いをよく知らないことから生まれる誤解を解き、『生活・文化の世話係』として双方が親睦を深めるための橋渡し役を務めたいという強い想いがあります」

 自身の経験を綴ったペーパーバック『お客さまはみんな外国人~食料品販売を通してわかった日本で暮らす外国人の生活~』(UTSUWA出版、2025年)を自費出版。また、国際開発学を専攻する大学ゼミや専門学校でのオンラインセミナーなど、教育機関での講演実績も重ねています。

 「今後は、自治体とも連携を深め、地域活性化につながる多文化共生事業を提案していく意向です。外国人労働者は、いまや地域経済に欠かせない重要な人材です。言葉や生活習慣が違っても、相互理解を深めれば共生することは可能です。その結果、外国人が『日本に来てよかった』と思える、真の共生社会の実現を目指します」と、山田さんは未来への意欲を語ります。

(取材年月:2025年11月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

山田智康

食料品販売を通じて外国人材を雇用する企業をサポートするプロ

山田智康プロ

在留外国人生活・文化アドバイザー

株式会社マヨン企画

長期の海外生活とアジア食料品販売を通じ、在留外国人の生活実情を深く把握。文化理解と生活安定を軸に、企業経営者へ独自のアドバイスと出張販売サービスを提供します

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ北海道に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または北海道テレビ放送が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO