空間に寄り添うアクアリウムのプロ
佐々木毅
Mybestpro Interview
空間に寄り添うアクアリウムのプロ
佐々木毅
#chapter1
水生生物を飼育し、水草やレイアウトによって一つの景色をつくり出すアクアリウム。魚たちが水槽の中を行き交い、光が水面に揺れ、水草の陰影が空間に奥行きを生み出します。
そんな小さな世界を北海道でプロデュースしているのが、「札幌水仙」代表の佐々木毅さん。医療機関や事務所、福祉施設などで、空間と調和する水景を作り出しています。
「空間を整える装置」。佐々木さんはアクアリウムをこのように言い表します。
「アクアリウムそのものが人を癒やす、というよりも、水景によって生まれる雰囲気が、結果として人の心理に作用すると考えています。例えば歯科医院の待合室。無機質になりがちな空間では、治療を待っている人は痛さに対する不安や恐怖を抱えがちですよね。ここにアクアリウムを置くことで場の空気が和らぎ、その空間にいる人々はいつもの呼吸や時間を取り戻すことができるのです」
顧客との打ち合わせでは、この「空間を整える」という考え方を丁寧に伝えています。
「最近はSNSなどの普及もあり、“映え”や直接的な癒やしなど分かりやすいものが求められがちです。ただ事前に説明し、認識のずれが生じないようにしています」
見た目の美しさだけでなく、設置される場所や訪れる人を踏まえてレイアウトを組み立てるのが佐々木さんのスタイルです。
「水槽は音楽でいえばコードのように、空間を支える存在です。目立たせることより、邪魔をしないことを優先します」
#chapter2
「人々に必要とされているからこそ、この仕事を続けることができている」と語る佐々木さん。アクアリウムショップを経営していた友人から誘われたことをきっかけに、この世界に足を踏み入れました。
上京後は水景デザインの分野で研鑽(けんさん)を積み、専門的なノウハウと感性を磨きます。2009年、故郷である札幌市に戻り、札幌水仙を立ち上げました。
「今も魚の仕入れなどは、この世界に導いてくれた友人のショップから行っています。互いに助け合い、協力できる存在ですね」
問い合わせを受けると、佐々木さんは実際に現地を訪れ、水槽の設置場所や空間全体のレイアウトを検討します。直射日光が当たる場所ではコケが発生しやすくなるため、どの位置であれば空間を整えられるかを見極めることが、この仕事で最も神経を使う工程だといいます。
水槽のサイズや魚種は、顧客があらかじめ持っているイメージを踏まえたうえで決定。約3週間から1カ月後に機材がそろい、設置作業に入ります。設置後、依頼者が行うのは用意された餌を魚に与えることのみ。レイアウトの調整や水槽の清掃といったアフターメンテナンスは、すべて佐々木さんが担います。
「きれいな水槽は空間を整えてくれますが、手入れが行き届かないと、かえって余計なノイズになります。定期的に清掃し、人知れず静かに空間を整えていく。その感触を得られることが、今はとても楽しいですね」
#chapter3
水槽は設置場所に応じて大小さまざまなサイズを用意。中でも、幅90センチ、高さ60センチ、奥行き45センチの水槽が多く採用されています。机の上に置ける小型タイプから、過去には幅7メートルに及ぶ大型アクアリウムまで手がけてきました。
依頼の7~8割は医療機関で、特に産婦人科では設置後の反響が大きいといいます。
「ヒトデやエビ、カラフルな熱帯魚など、海水魚を入れることが多いですね。妊婦のお母さんに連れられて訪れた小さな子どもたちが、水槽の前で足を止めてじっと眺めている姿を見ると、空間が穏やかに整っていることを実感します」
佐々木さんの理念に共感し、10年以上にわたりレイアウトやメンテナンスを依頼する施設も少なくありません。創業間もない頃から継続して関係を築いてきた医療機関もあり、レイアウトを含めて運用全体を一任されるケースもあります。そうした信頼関係の積み重ねに、佐々木さんは「お客さまに育てられてきた」と感じているといいます。
また高齢者福祉施設や、障がいのある子どもたちが通う児童施設にも水槽を設置。コロナ禍前には、児童施設の子どもたちがメンテナンスに携わり、収入を得る取り組みも支援していました。
「必要とされる場所がある限り、水景は自然と役割を持ちます。これからも空間に寄り添いながら、水景を整えていきたいですね」
(取材年月:2026年1月)
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Profile
空間に寄り添うアクアリウムのプロ
佐々木毅プロ
水景デザイナー
札幌水仙
派手さを狙わず、空間を整えるレイアウトが特徴。設置される場所や訪れる人を踏まえて水景を構成し、主張しすぎず、空間と人が自然に整う状態を作ります。設置後の管理、メンテナンスまで一貫して対応しています。
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