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障がい者の就労を支援し、農業現場の人材不足を補う「農福連携」に尽力

農業の現場で障がい者の人材を活用する農福連携のプロ

橋本憲幸

橋本憲幸 はしもとのりゆき

#chapter1

農作業や農産物の選別・販売などを請け負う就労継続支援A型事業所を運営

 「私どもは、『障がいがあっても健常者と同等に仕事ができる世の中にすること』を事業コンセプトに掲げています。労働してお給料をもらうという営みを通じて、障がい者の社会参加をお手伝いします」

 そう話すのは、北海道士別市にある「ノースリーフ」代表の橋本憲幸さん。障がいや病気により、一般企業への就職が難しい人と雇用契約を結び、職場や就業訓練を提供する「就労継続支援A型」の事業所を開いています。

 「当方では企業や団体から委託を受け、田植え・収穫といった農作業、農産物の選別や出荷補助、商品の包装、店頭での販売などを行っています。また社会復帰するために必要なスキルの習得を目指して、ビジネスマナーや会話の仕方などを学ぶ機会も設けています」

 橋本さんのもとには、軽度の知的、精神障がいのある人や、うつ病など心の病を持つ人が20人余り集い、各現場には職業指導員が必ず同行して業務を細やかにフォロー。傷害保険に加入し、万が一の事故にも迅速に対応する体制を整えています。

 自身は、かつてJA(農業協同組合)に勤め、農業関連を主な業務としているのは、地域が抱える問題も関係していると言います。

 「前職で、道北地域の基幹産業である農業で高齢化が急速に進んでいくのを目の当たりにしてきました。一方で、障がいがある方は職に就きたくても受け入れ先が少ないことも知りました。同じ手順を繰り返す単純作業などは、障がい者も貴重な担い手となります。就労意欲のある人たちと、生産者さんをサポートしたいと思い、事業所を立ち上げました」

#chapter2

障がい者の個性や特技を見いだし、やりがいを持って活躍できる場を提供

 橋本さんのもとでは、利用者一人一人が個性や特技を生かし、やりがいを持って働けるよう、本人や委託元とも相談しながらコーディネートしています。

 「手先が器用か、細かいことは苦手か、体力があるのかないのか、業者さんとの相性も見て、職員の中で向き不向きを評価した上で配属します。例えば、知的障がいの方はメンタル面がタフな方が多く、少々厳しいことを言われても気にしないのですが、精神障がいの方は、言葉を敏感に感じ取ってしまってうまくいかない場合もあります。適材適所の見極めが重要です」

 特に利用者が活躍できる場として見込んでいるのが、農産物を仕分けする選果場だとか。
 「朝から夕方まで1日中単調な作業が続くので、バイトやパートさんを雇っても、すぐ辞めてしまう方も少なくないのですが、障がい者には同じことをやり続けるのが得意な方が結構いらっしゃいます。農協さんからも、いつも良い評価をいただいています」
 
 個々の適性を検討する中で、利用者の意外な特技に気づかされることも。ある知的障がいの男性は、おっとりしたマイペースなタイプで屋外の農作業には向かず、農家から「うちでは難しいかもしれないね」と言われていたそうです。
 「ところが、ブロッコリーの選果場で発泡スチロールに氷を詰めていく工程に配置転換したところ、きちょうめんさが発揮され、お褒めの言葉をいただくようになりました。これまで、彼の良い面を見いだせていなかっただけだと分かりました」

#chapter3

農産物の通販サイトも準備。農業法人の立ち上げも視野に、障がい者と共に歩む

 各方面にネットワークを広げる橋本さん。農閑期の冬には個人宅の雪下ろしや、企業からの依頼を受け流雪溝への排雪も担います。
 「高齢化率が4割を超える士別市では、お年寄りにとって大変な除雪は引く手あまたです。他に施設の清掃なども請け負っており、お役に立てる場面はまだまだありそうです」

 障がい者が、農業の領域で生きがいを持って活躍していく仕組み「農福連携」は、2019年に政府がビジョンを策定し、推進しています。橋本さんは国が取り組みを強化する前の2016年に開業。きっかけは、自身がうつ病を経験したことでした。

 「休職中、復職に向けたプログラムの一環でデイケア施設に通うようになりました。障害のある方と関わるうちに一般の人たちと何も変わらないことに気づき、皆と同じように働きたいという人たちの力になりたいと考えました」

 JA職員として長年従事してきた農業分野と障がい者の雇用を支援するため創業し、今後は、農産物の販売も強化していきたいと熱を込めます。
 「対面だけでなく通販サイトも準備しています。農業法人の設立も視野に入れていて、障がい者を職員として採用し、地元農業の振興も後押しして前職に恩返しもしたいですね」

 これからも障がい者に寄り添い、共に歩んでいきたいと願う橋本さん。「あなたの会社の業務に合う人材をマッチングします。単発や短時間も可能です。『農福連携』のノウハウを伝える研修も行っていますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください」と呼びかけます。

(取材年月:2023年11月)

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橋本憲幸

農業の現場で障がい者の人材を活用する農福連携のプロ

橋本憲幸プロ

就労継続支援A型事業所

ノースリーフ合同会社

企業や団体と業務委託契約を結び、職業指導員の後見のもとで障がい者が農産物の選別や販売、除雪作業、清掃等の業務を行う。軽度障がい者の特技や個性を生かした就労継続を支援し、農業現場の労働力不足も補う。

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