「世界一ピュアでおいしいおうち珈琲」の普及を目指すプロ西本佐和

「世界一ピュアでおいしいおうち珈琲」の普及を目指すプロ

西本佐和

生豆を湯洗いしてカビや汚れなどの不純物を除去。すっきりと飲みやすい味わいに

　「コーヒー豆を洗い、汚れを落としてから焙煎（ばいせん）すると、すっきりと飲みやすくなります」と話すのは、「ザワワな珈琲245」の西本佐和さん。広島市安佐南区で、コーヒー豆の小売りや卸を行っています。

　「私たちがコーヒー豆と呼んでいるのは種の部分です。水洗式（ウォッシュド）の場合、収穫した実から種を取り出す過程で現地の水に一定時間浸けて果肉を取り、その後乾燥させますが、豆の内部に水分は残っています。船便で日本まで運ばれる約1カ月の間、常温で保管されるため、外気温の上下によって、豆の表面が結露しカビが生えたり、砂やホコリなども付着したりします。汚れたまま焙煎すると、不純物も一緒に体に取り入れることになります」

　まず運搬の過程で変質した豆を丁寧に除去し、生豆を50度の湯で洗って異物を取り除きます。ぬれたまま水蒸気焙煎で蒸すことで豆の芯まで熱を加え、現地で精製時に使用した水を抜きます。

　「精製時の発酵過程で約千種の香りの前駆体が生成されており、それぞれの特定の温度で香り成分に昇華します。乾いた状態で煎るより中までしっかり火が通り、本来の味わいや香りが格段にアップするんです。米や野菜は調理する前に洗いますよね。コーヒーも口に入るものですから、洗うことが当たり前になるよう普及活動をしています」

　豆はペルー、ニカラグア、ガラパゴス産などを使用。適正な価格で取引し、発展途上国を支援するフェアトレードに寄与しています。

　「直接提携型フェアトレードで現地の生産者組合と契約している企業から仕入れています。適正な生産コストに社会開発費用や有機栽培費用・輸送コスト等を上乗せして継続取引を行ない、生産地に安定した収入をもたらすことで、年々品質も上がっていく良いサイクルを目指しています」

雑みやカフェインを低減し、コーヒーのおいしさを引き出すドリップ講座も開催

　こだわって焙煎したコーヒーを家庭でおいしく味わってほしいと、西本さんはドリップ講座も定期的に開催。湯約280ccを使用し30gと、通常の約3倍の量をフィルターで濾し120ccの濃縮液を抽出する特徴的な方法をとっています。抽出時間が3分を過ぎると、雑みやえぐみ、余分なカフェインが出てしまうため、2分45秒で行うのがポイントだとか。
　
　「成分が濃縮された『一番出しドリップ®』を、お好みの濃さに薄めて飲みます。抽出時間と希釈により、カフェインを減らすことができますので摂取量が気になるという方にもおすすめです」

　「一番出しドリップ®」は、冷蔵庫で1週間保存が可能。忙しい朝にハンドドリップをするのは大変ですが、お湯や水を加えるだけなら簡単で、毎朝手軽にコーヒーを楽しめます。

　「講座では、皆さんにドリップしていただきながら技術を手ほどきします。基本的に一度の講座内で複数回実践してもらいますので、回を追うごとにコツをつかんでおいしいコーヒーが入れられるようになります」

　ドリップ講座は出張にも応じ、1人からでも対応。要望があればカセットコンロと手付ザルを用いて自分でローストする手焙煎もレクチャーしています。

　西本さんのコーヒーは、焙煎所前に設置した自動販売機や広島県内のカフェなどで販売するほか、各地のマルシェにも出店。広島市のふるさと納税返礼品にも採用されています。

コーヒーはほっと一息ついて元気を得られるほか、人が楽しく集うツールにも

　西本さんはかねてよりコーヒーが好きで、カフェや家で愛飲していたそう。あるとき、知り合いが新たにオープンした店に行き、コーヒーを注文したところ、これまで飲んだものとは格段に違う味わいに驚きました。聞くと、その店で扱っているのは、「アームズ珈琲®」のもので、焙煎も指導しているとのこと。西本さんは、居ても立ってもいられず、すぐに焙煎所のある島根県に向かいました。

　「『シェア焙煎所』を営まれ、基礎講習を受ければ、自分でコーヒー豆を焙煎できるシステムでした。飲食店を営んでいる人、家で毎日コーヒーをたてている愛好家など、利用者はさまざまで、私は2年間通い、焙煎やドリップに関する技術と理論を学びました」

　わが子が不登校だったことから、子育てに不安や悩みを抱える保護者の茶話会を立ち上げ、自然農法サークルの設立にも携わった経験を持つ西本さん。講習先でも多様な人と交流を図り、コーヒーは人と人をつなぐツールになると感じていました。

　世代も立場も問わず、誰もがコーヒーを通じて心を解放し、楽しく集う一助になればと、2023年に自身の焙煎所を立ち上げました。

　「『ザワワな珈琲245』という名前は、『ほっと一息ついて心も体も元気になってほしい』『コーヒー好きの間でザワザワと話題になってほしい』といった思いと、ドリップ時間の2分45秒に由来しています。正しい手順で豆を洗い、適切に抽出すればコーヒーが苦手な方もおいしく飲めることを広めていきたいですね」

（取材年月：2025年4月）

洗いの工程を経た焙煎豆と「一番出しドリップ®」で、おいしいおうちコーヒーを普及

生豆を湯洗いしてカビや汚れなどの不純物を除去。すっきりと飲みやすい味わいに

雑みやカフェインを低減し、コーヒーのおいしさを引き出すドリップ講座も開催

コーヒーはほっと一息ついて元気を得られるほか、人が楽しく集うツールにも

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