福祉分野に精通した障害年金請求手続き代行のプロ水野剛

福祉分野に精通した障害年金請求手続き代行のプロ

水野剛

メンタルの不調、発達障害、がん、糖尿病、腎不全など障害年金の対象はさまざま

　受給要件を満たしているのに障害年金を受給できていない人を支援しているのは、広島市の「ソアレ社会保険労務士法人」の代表社員・水野剛さん。近年は制度の周知や手続き代行に注力しています。

　「所定の年齢に達してから請求する老齢年金に対し、障害年金は病気やけがで労働能力が低下したり、働けなくなったりした現役世代も申請できます。65歳になる前から受け取ることができ、先天性の病気などで就労が難しい方は20歳から受給可能です」

　以前は福祉職に従事していた水野さん。心身の症状で苦しむ人を支えるサービスは多々あるものの、経済的な理由で断念する人を目の当たりにしてきました。

　「障害年金は生活を保障する素晴らしい仕組みである一方、あまり存在を知られていないのが現状です。一部対象外の傷病はありますが、がんや糖尿病、脳・心疾患など利用できる範囲は幅広く、ほとんどの傷病が対象となります」

　うつといったメンタル不調を抱える人や発達障害で就職と退職を繰り返す人の中には、仕事のペースを落として障害年金で収入減をカバーするケースも。

　「フルタイム勤務で無理が生じ、症状が悪化しては大変です。例えば年金10万円を受給して残りの必要な分だけパートで賄い、元気になったら正社員に戻るという選択肢もあります。長期間通院を続けている方も活用していますね。雇用する側も貴重な戦力を失わずに済み、生活保護からの脱却を目指す場合も大きな助けになります」

　相談は電話やホームページから。面談や年金機構の審査を経て支給が始まるまで、約半年を要するとのことです。

3人の社会保険労務士が法人を設立。福祉のみならず人事労務の分野も対応

　水野さんは福祉施設に就職し、介護職を経てケアマネジャーとしてケアプランの作成や介護事業の立ち上げなどに従事しました。その過程で「社会保険制度に対する理解をさらに深めたい」という強い思いが芽生え、社会保険労務士の資格を取得。さらに、その専門知識を生かして独立を果たしました。相談業務で培った知識と経験を生かし、現在は特に障害年金手続き代行業務に注力した活動を展開しています。

　「後に社会保険労務士3人が集まり当法人を設立しました。私ともう一人の男性メンバーと、女性メンバーも在籍しています。当法人は、障害年金手続き代行業務の他にも、人事労務管理等の領域においても幅広いニーズに対応可能で、就業規則の見直しなど職場環境の整備でもお役に立てます」

　日々の職務の中で、水野さんがやりがいを感じるのは障害年金の受給が決まった人の喜ぶ顔を見た時。「本当に良かったですね」と声をかけるのが最高の瞬間だと話します。

　「最大で5年分までさかのぼり請求できる可能性もあります。まとめて全額を受け取る方もいて、声にならないほど驚かれますね」

将来を悲観する前にまず相談を。新しい生活や働き方を始めるチャンスがある

　これまで多くの人を支援してきた水野さん。中でも、心の病を患っていた人から届いたメールが心に残っているそうです。

　「その方は、働かなければという使命感を持ちながらも、自宅から出られなくなってしまいました。『長く不安と共に暮らしてきましたが、おかげで今後の生き方に光が差しました』という趣旨の長文メッセージを頂きました。私も『希望を失う前に力になれて良かった。つらい毎日から抜け出すきっかけになれた』と、本当にうれしかったです」

　また、家族から経済的虐待を受けている場合などは、ひそかに障害年金の手続きを済ませ、受給が決まったら家を出ていく計画を立てるといった対応もあると言います。

　「制度が広く知られれば、権利を行使して新しい人生を歩める方も増えるでしょう。障害年金の統計を見ると受給者の約半数は精神疾患を原因としますが、本人に自覚が無いこともあります。家族など周囲の方が気付けば私たちがお手伝いできるので、ぜひ変化やサインを見逃さないでほしいですね」

　水野さんは中国地方の社労士が法人や事務所の垣根を越え、障害年金制度の普及に取り組む団体「障害年金ヘルプデスク」にも所属。無料相談会や電話での問い合わせ対応、講演会などで協力しています。

　「個人的には今後も障害年金手続き代行をベースに、福祉の領域でもっと貢献したいと思います。法人名の『ソアレ』は太陽を意味するので、これからも皆さんの未来を明るく照らしてまいります」

（取材年月：2024年8月）

心身の病気やけがで生活が苦しい人、思うように働けない人に障害年金という希望を

メンタルの不調、発達障害、がん、糖尿病、腎不全など障害年金の対象はさまざま

3人の社会保険労務士が法人を設立。福祉のみならず人事労務の分野も対応

将来を悲観する前にまず相談を。新しい生活や働き方を始めるチャンスがある

専門家プロフィール

Other Interview