汚れ落ちにこだわり、地域に笑顔を広げるクリーニングのプロ魚谷啓悟

汚れ落ちにこだわり、地域に笑顔を広げるクリーニングのプロ

魚谷啓悟

汚れを見極める受付・点検から洗い、仕上げまで自社で一貫して品質を管理

　「取引先や地域の方々、従業員も含め、みんなが気持ちよく過ごせるように。また宮島に訪れる人たちが快適に滞在できるように。洗濯を通じて支えるのが私どもの役割です」

　そう語るのは、広島県・宮島にある「宮島白栄舎」の代表・魚谷啓悟さん。旅館やホテルで使用されるシーツなどを貸し出すリネンサプライ業を中心に、衣類の染み抜き、生地の色抜けや変色を補正する色掛け、布団やじゅうたんのクリーニング、コインランドリーを展開しています。

　「長年の実績から、島内の宿泊施設の約9割が当方のお客さまです。コインランドリーは観光客を中心に月100人ほどご利用いただいています」

　クリーニング師の資格を持つ魚谷さんは、受付から洗い、アイロンがけなどの仕上げまで自社で一貫。品質管理には妥協を許しません。

　「当方では自分たちで点検・仕分け・洗いまで一貫対応。大切な品を預かる以上、状態を丁寧に確認し、処置内容をしっかりご説明・ご同意いただいてから作業に入ります。少し時間がかかっても、安心して任せていただけることを何より大切にしています」

　通常、布団のような大物は洗濯機を使いますが、魚谷さんのもとでは独自の手洗い方式を導入。素材のダメージや汚れに合わせて洗剤や薬剤を調整し、時には樹木から精製し、抗菌や消臭性を備えたヒノキチオールを用いた洗剤で、清潔に整えています。

　「洗濯は機械で簡単にできると思われがちですが、僕にとっては『手の感覚による仕事』です。生地に触れて素材の特性を把握し、汚れの種類を見極め、手間を惜しまず、美しく洗い上げます」

竹を原料にした洗剤や微細な泡のマイクロファインバブルで、環境に配慮

　六十余年の歴史を持つ「宮島白栄舎」。魚谷さんが事業を引き継いだのは2017年。先代である叔父の他界をきっかけに、約10年勤めた医療機関を退職し、実家が運営する医療機関に勤務。現在も在職しながら事業を担っています。

　「医療の現場では『できる、できない』ではなく、どうやったらできるかを考える姿勢が身につきました。洗濯も同じで、汚れが落ちないならどうしたら落とせるかを考えます。汚れ落ちへのこだわりは、医療時代の経験に基づいていると思います」

　未経験からのスタートでしたが、1年目で国家資格のクリーニング師を取得。設備の見直しや衛生基準の整備を進める中で、洗濯の面白さにどんどん引き込まれました。

　「コロナ禍で旅行者が減り、リネンサプライ業が落ち込んだ時期には、九州まで月に一度通って染み抜きや色掛けを学びました。細かいところまで突き詰めていくのが楽しいんです」

　2023年に宮島初となるコインランドリーを開業。使用しているのは、竹を原料にした環境にやさしい洗剤です。

　「宮島は、国の天然記念物に指定された弥山原始林を有しています。固有の植物が生息しているので、河川を汚染しないよう排水にも気を配っています」

　エコ洗剤の洗浄力を補うため、皮脂や油にアプローチする温水と、石けんカスなど汚れの再付着を防ぐ軟水器を通した水を採用。さらにマイクロファインバブルという微細な泡が、繊維のすき間に入り込んで汚れをかき出し、自然に配慮した技術で「キレイな水を返す」取り組みを実践しています。

食べこぼしや汗の黄ばみなどを落とし、多様なアイテムをクリーニング

　近年の少子高齢化を背景に宮島では過疎化が進行。2020年の国勢調査によると、人口は1,453人となっています。

　魚谷さんは来客をもてなす上で欠かせないリネンを納め、島の基幹産業でもある観光業を応援してきました。地域に寄り添い、個人向けのサービスにも力を入れていきたいと言います。

　「品物を受け取ったり、お引き渡ししたり、洗濯は『人と人をつなぐ仕事』です。ハリや色ツヤを取り戻し、皆さまを幸せにしたいと思っています。個人のお客さまは反応がダイレクトに見えるのが魅力で、『シミが取れた！』と喜んでもらえると、こちらまでうれしくなります。お客さまと、末長くキレイを分かち合える関係を築きたいですね」

　食べこぼしや汗による黄ばみを落としたいなど、寄せられる声はさまざま。シャツやワンピース、スーツ、コートなどアイテムも多岐にわたります。時には、毎晩一緒に眠っていたぬいぐるみをリフレッシュすることも。

　魚谷さんは多様なニーズに応えるため、AIやIT技術を活用して作業を効率化。満足度を高めるべく、機械にできることは任せ、人の手でしかできないことに時間を使っています。

　「退色して白っぽくなった服も、専用の溶剤でもとの色を引き出すことができます。お気に入りの品や、長らく愛用してきた品のケアは当方にご用命ください。困ったときに『魚谷に相談すれば何とかなる』と頼ってもらい、宮島で、そして広島で『クリーニングといえば魚谷』と言われる存在を目指します」

（取材年月：2025年10月）

清潔で美しく、自然にもやさしいクリーニングで、宮島に関わる人たちを幸せに

汚れを見極める受付・点検から洗い、仕上げまで自社で一貫して品質を管理

竹を原料にした洗剤や微細な泡のマイクロファインバブルで、環境に配慮

食べこぼしや汗の黄ばみなどを落とし、多様なアイテムをクリーニング

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