ジュエリーリフォームとオーダーメイドのプロ倉迫貴一

ジュエリーリフォームとオーダーメイドのプロ

倉迫貴一

3D－CADと3Dプリンタでデザインから原寸大のサンプル出力まで対応。ジュエリーリフォームも人気

　広電の電車通り沿いにある小さなジュエリーショップ「KOUKI倉迫」を営む倉迫貴一さん。1946（昭和21）年に倉迫さんの祖父が創業して以来、ジュエリーのオーダーメイドやリフォームなどを数多く手掛けてきました。そんな老舗の「KOUKI倉迫」が新たな取り組みをスタート、それがデジタル技術を駆使した「デジタルジュエリー」です。

　「3D－CADを使ってジュエリーをデザインし、そのデータをもとに3Dプリンタで原寸大のサンプルを出力します。ここまでの過程を全て自店でできるようにしたことで、よりきめ細かくお客さまのご要望に応えられるようになりました。複雑な造形などもサンプルを見ていただくことで分かりやすく説明できるので、より納得感のある提案ができる点も魅力です」と倉迫さん。

　実際に出力したサンプルを見せてもらうと、その細かな造形にびっくり。宝石を支える爪の立ち上がりやリングの幅、角度など細部までよく分かります。「サンプルを試着することでサイズ感や立体感なども確認できます。出来上がりをイメージしやすいので、お客さまからも安心できると喜ばれています」。

　これまで婚約指輪や結婚指輪を中心に、多くのオーダーメイドジュエリーを作ってきた倉迫さん。近年は、手持ちの宝石のデザインを変えて再利用するジュエリーリフォームのニーズが高まっていると言います。

　「お客さまがご高齢となり、かつて手に入れた宝石を子どもさんやお孫さんに引き継がれることが増えてきました。子どもさん世代が昔の立て爪の指輪を普段使いしやすいフラットなものにしたり、ネックレスにしたり。お孫さん世代なら婚約指輪にリフォームすることもあります。ジュエリーリフォームはリーズナブルなだけでなく、譲った方も譲られた方も両方に喜んでいただけるのがうれしいですね」

広島県内で唯一のデジタルジュエリー協会認定店。コロナ禍を機に、デジタルジュエリーデザイナーに

　3D－CADに3Dプリンタ、CGと先進のデジタル技術を使ったデジタルジュエリー。倉迫さんがこのデジタルジュエリーを導入しようと思ったきっかけは、2020年に始まったコロナ禍でした。緊急事態宣言による休業期間中、「来店せずにオーダーができないか」という問い合わせが立て続けにあり、かねてから興味を持っていたデジタルジュエリーを検討。データ作成からサンプル及び原型出力まで内製化することでコストや時間を削減でき、途中確認も試着を含めより丁寧にできる点に魅力を感じ、導入を決めました。
　
　オンラインでデジタルジュエリーに必要な技術を学び、デジタルジュエリーデザイナーの資格を取得したのが21年5月。同時にデジタルジュエリー協会認定店となり新たなスタートを切りました。「今まで3D－CADに触れたこともなかったので、操作に慣れ、頭の中のイメージをきれいに表現できるようになるまでは苦労しました。今は3D－CADでデザインして、お客さまから『イメージにぴったり』『想像以上のものができた』と感動していただけることにやりがいを感じています」。

　「KOUKI倉迫」ではフルオーダーとセミオーダーの両方に対応していますが、このデジタルジュエリー導入後はフルオーダーを選ぶ方が増えたとのこと。「ジュエリーを作る過程を楽しんでいただけているのかな」と倉迫さんは手ごたえを感じています。

　フルオーダーの中心価格帯は、婚約指輪で25万円～30万円前後（リフォームの場合は10万円～15万円前後）、結婚指輪はペアで20万円前後。世界で一つだけのオーダーメイドジュエリーを、手に入れやすい価格で提供しているのも同店が支持される大きな理由です。

家族のストーリーを紡ぐジュエリー。「家族の節目に思い出してもらえるお店になりたい」

　お店に入ると印象的なのが、壁一面に張られたお客さまからの結婚報告のハガキです。その数はなんと100枚以上。さらには同店のホームページにも「お客様の声と作品集」が200件以上掲載されており、それらを読むだけでお客さまの幸せと満足感がひしひしと伝わってきます。

　「お客さまのご要望をしっかりとお聞きし、希望するイメージに近づけることができるよう、プロの目線でアドバイスします。オーダーメイドやリフォームで、家族やカップルの結びつきが強くなる、愛着を持っていただけるジュエリーを作っていきたいですね」

　「お孫さんに引き継ぎたい」とお客さまからジュエリーリフォームを依頼されたり、かつて倉迫さんの祖父が売った指輪を倉迫さんがリフォームしたり。ジュエリーには家族のストーリーが刻まれています。「家族の記念日や節目に思い出してもらえる、そんなつながりが続いていくお店になればいいな」と優しく笑う倉迫さん。

　これまでの歴史と実績に、デジタルジュエリーという新たな息吹を吹き込み、さらに進化する「KOUKI倉迫」。時代や手法は変わっても、「お客さまに喜んでいただけるジュエリーを作りたい」という思いだけはこれからも変わりません。

（取材年月：2023年11月）

先進のデジタル技術を駆使した「デジタルジュエリー」を導入。より安心なオーダーメイドを提案

3D－CADと3Dプリンタでデザインから原寸大のサンプル出力まで対応。ジュエリーリフォームも人気

広島県内で唯一のデジタルジュエリー協会認定店。コロナ禍を機に、デジタルジュエリーデザイナーに

家族のストーリーを紡ぐジュエリー。「家族の節目に思い出してもらえるお店になりたい」

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