自動車の運転代行業を通じて飲酒運転根絶に真摯に取り組むプロ東和空

自動車の運転代行業を通じて飲酒運転根絶に真摯に取り組むプロ

東和空

ICTを活用した効率的な配車体制と使命感を持った安全運転で、組織的な自動車運転を代行

　「私どもは『安全・的確・迅速』をモットーに、取引先さまや同僚、ご友人らとお酒を楽しまれた皆さまが、わが家に帰宅されるまでお供します」

　そう語るのは、「イイパパ代行」代表取締役の東和空さん。ICT（情報通信技術）を活用した効率的な配車システムのもと、広島市を拠点に自動車運転代行業を営んでいます

　「ご用命を頂戴すると、会社の駐車場やお店の前などご希望の場所に赴き、お車をお預かりします。『11時頃に』と、お帰りの時間をお知らせいただければ、会食先までお客さまの車で迎えにあがります。ご要望があれば、お連れさまも一緒にお送りします」

　「接待が入った」「一杯飲まないかと誘われた」といった場面だけでなく、体調不良や睡眠不足で「ハンドルを握るのが不安」という場合も利用可能。連絡を受けた際は、何分ぐらいで到着できるかも答えています。

　「お客さまをお待たせすることなく指定の場所へ向かうため、GPSで道路の混雑状況などを把握。専用端末を通じてドライバーに目的地情報や走行ルートを共有して速やかに伺うことで、サービスの向上に努めています」

　顧客の大事な愛車に乗務するにあたり、ドライバーの安全管理を徹底。GPSと連動したドライブレコーダー（デジタコ）を、顧客の車に追走する随伴車に搭載し、ヒヤリ・ハットや危険運転の映像を分析することで事故防止に取り組んでいます。

　「渋滞などで到着時間が遅れると、ドライバーの気持ちに余裕がなくなり判断ミスなどが生じます。適切な運行計画とリアルタイムの天候、事故、渋滞などの情報共有により、トラブルの削減につなげています」

大切な命を預かる運転代行業者として法令を順守し、健全な事業運営にまい進

　「イイパパ代行」は、1972年に創業した「HDMセンター」が前身。住職でもある東さんは顧問として会社に関わり、2024年に3代目に就任しました。

　「ご縁があって代表をお引き受けしました。世の中の多くの悩みは自分自身のものの見方に起因しますが、飲酒運転による事故は酒酔い酩酊（めいてい）状態で判断力が鈍っている中で起きるもの。単に運転者個人だけを責めるのではなく、社会全体で飲酒運転を防ぐ仕組みをつくる必要があると強く感じています」

　五十余年にわたる事業実績を糧に、広島県公安委員会から飲酒運転根絶関係事業者として認定。法律に則した適正な業務の遂行に徹しています。

　「運転代行は、お客さまの命と大切な車をお預かりする仕事です。まずは私たち自身が法令を順守し、健全に事業を運営することで飲酒運転の根絶に貢献してまいります」

　東さんのもとでは、ICTとモバイル端末を活用しタイムリーに安全指導を運転手に送信。事故が起きるメカニズムなど再確認し、リスクに対する意識の向上に力を注いでいます。

　「『安全運転で』と口で言うだけでは不十分です。運転手が心身ともに整った状態を維持することも非常に重要ですから、『大丈夫だろう』という思い込みや慣れによる慢心を取り除くための瞑想（めいそう）や呼吸法を取り入れ、自覚と客観視で集中力とリラックスを保てるように工夫しています」

飲酒運転撲滅に向けて社会全体に呼びかけ、継続的な啓発活動を展開

　広島県では、2012年に「HIROSHIMA飲酒運転ゼロPROJECT」がスタート。発足当時131件あった飲酒運転事故が2021年には65件にまで減少しましたが、近年は停滞していると言います。

　「無事に『イイパパ』として家族のもとに戻ってほしいという願いを社名に込めています。酒気帯び運転が常習化し『いつか事故を起こす』と心配されているケースも多いんです。アルコール依存症になると、本人の意識だけで改善するのは難しくなります。事故が起こる前に私たちも相談にのったり駐車場事業者と声がけを行ったり、社会全体で歯止めをかける必要があります」

　東さんはまた、広島県運転代行事業協同組合の理事長として、「不測の事態に一定の運転代行料を保険でカバーできるように」と保険会社に働きかけています。飲酒運転根絶運動を形骸化させないため、警察OBに相談したり、駐車場事業者に企画を提案したりチラシを配布するなど、地道な啓発活動を続けています。

　「私たちは『チームワーク』ではなく、お客さまが抱える背景をおもんぱかりながら支援する『セームワーク（同じ目線で働く）』を指標としています。飲酒運転を減らすには、私たちも加害者になりうるという、心からの理解と共感が不可欠です」

　住職でもある東さんが大切にしているのが、「いかなるときも何をするかより、どんな自分でいるか」

　「住職と経営者、一見異なる立場のようですが、仏教の普遍的な教えを経営に生かし、私自身が仕事を通じて人として成長し、関わる皆さまが少しでも生きがいを感じられるように。一日一生として有限で尊いお互いの生命と時間です。私に与えられた使命を愚直に果たしてまいります」

（取材年月：2025年3月）

運転代行を通じて飲酒運転による交通違反や事故をなくし、お互いが無事に家族の元へ戻る「イイパパ」に

ICTを活用した効率的な配車体制と使命感を持った安全運転で、組織的な自動車運転を代行

大切な命を預かる運転代行業者として法令を順守し、健全な事業運営にまい進

飲酒運転撲滅に向けて社会全体に呼びかけ、継続的な啓発活動を展開

専門家プロフィール

Other Interview