ものづくり現場の品質管理、人材育成のプロ濱田金男

ものづくり現場の品質管理、人材育成のプロ

濱田金男

問題に未然に気付いて予防策に打って出る“攻めの品質管理”を提案

　国内の労働力人口の減少が懸念される昨今、製造業においても熟練者の退職が進み、後進の育成が急務となっています。他にも、欠陥品の流出などトラブル防止に向けた工程の見直し、需要に応じた生産ラインの構築など、ものづくりの現場はさまざまな対応を迫られています。

　「事業を存続していくにはノウハウを蓄積・継承し、製品サービスの付加価値を高めていく必要があります。当方が、中小製造業が抱える課題解決をお手伝いします」

　そう話すのは、群馬県高崎市の「高崎ものづくり技術研究所」代表の濱田金男さん。品質管理や業務効率化に関するコンサルティングを行い、若手から役職者まで階層に応じた社員研修も用意。事業活動の要となる品質管理活動において、表面化した問題を後追いで対策することを「モグラたたきゲーム」に例え、エラーを未然に防ぐことの重要性を強調します。

　「最初は頭を出しそうなモグラを予測してたたくことができますが、スピードが速くなると、手が追いつかなくなります。品質管理も同じで、不具合が発生するたびに対処していると、いずれ無理が生じます。不良品を出してしまう前に問題に気付き、予防策を講じる“攻めの品質管理”が大切です」

　大手電機メーカーで35年間勤務し、豊富な実務経験を持つ濱田さんは、実践的な手法を指南します。

　「とはいえ、経験にあぐらをかいていては時代に取り残されてしまいます。地球温暖化の進行を阻止する脱炭素の取り組み、デジタル技術を活用したDX（デジタルトランスフォーメーション）化など、日々勉強を重ねることで、自分自身をアップデートすることを心掛けています」

生産ラインの構築・見直し、業務改善、人材育成など幅広くサポート

　濱田さんは工場全体を俯瞰することで、ものづくりの最適化を目指します。
　「年間3万台の新製品を生産するラインをつくりたいというご依頼では、工場内のレイアウトを考え、必要な機械の台数、人員、経費などを算出。さらに環境負荷を軽減するための対策についてもご提案しました」

　海外では、韓国の大型電子装置を組み立てる工場でフローを改善。少人数で工程を完結させる「セル生産方式」を採用することで未完成の仕掛品が減り、生産性を30％アップさせることに成功しました。

　「香川県の精米工場では作業の精度を上げるため、業務マニュアルの体系整備をアドバイスするとともに、仕事の定量目標を立てて達成度を定期的に確認する『業務計画書』を取り入れました。お客さまから、限りある人材でもタスクを着実にこなし、業績も上がったと喜ばれました」

　人材育成では、オファーを受けた工場や会社を訪問し、若手・中堅社員を対象に研修を開いています。
　「できるだけグループディスカッションを取り入れ、品質管理における課題の解決策を参加者自らで考えてもらうようにしています。また、新しい設備を導入する際はなるべく若手に加わってもらうことで、自ら考えて行動する主体性を養います」

　群馬県職業能力開発促進センターの、生産性向上支援訓練でも講師を務める濱田さん。製造業に就労する人たちに基本知識を教えるほか、民間の職業訓練講座でも自身の職務経験を伝えています。

ブログや動画で専門情報を発信し、社会に信頼される製品づくりを支援

　中学生でアマチュア無線機を自作するなど、子どもの頃からものづくりが好きだったという濱田さん。故郷の石川県から長野工業高等専門学校に進み、電機メーカーの沖電気工業に入社。プリンターステーションの設計、製造のほか、主力製品の現金自動預払機（ATM）の品質管理などに従事します。

　「中国でATMの製造工場を操業するにあたり、プロジェクトメンバーに選ばれました。現地スタッフの教育を担当したり、品質がなかなか上がらなかったりと、苦労をしましたね」

　その後転職した会社でも、生産拠点の新設や品質管理を任されるなど、日本と中国を行き来する生活が続きます。2014年に退職後、培った知見を生かして企業をサポートしていきたいと、研究所を立ち上げました。

　「ホームページも開設し、作業ミスの再発防止策、品質改善の手順といった実務に役立つ内容や、製造業におけるマインドチェンジなどをテーマにしたブログを発信しています。YouTubeチャンネルでは、DXの進め方や、多機能で高性能なメカトロニクス機器の設計に関する動画も配信しています」

　濱田さんは、リーダー向け、一般社員向けなど、企業の要望に応じたオンライン研修も手掛けています。

　「図面をもらい、言われた通りに作るという従来の製造業を続けていては、発展性がないし、利益も上がりせん。ニーズを敏感にキャッチし、付加価値の高い仕事ができる自立型の人材を育てることで、社会に信頼され、選ばれる製品づくりを支援していきたいですね」

（取材年月：2024年3月）

品質管理、業務効率化、人材育成などを通じ、中小企業の課題解決をサポート

問題に未然に気付いて予防策に打って出る“攻めの品質管理”を提案

生産ラインの構築・見直し、業務改善、人材育成など幅広くサポート

ブログや動画で専門情報を発信し、社会に信頼される製品づくりを支援

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