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痛みを味わったからこそ、身を守る術を伝えたい。護身用品の適格な普及を目指して

護身用品を開発・販売し、身を守る術を伝えるプロ

寺田將二

寺田將二 てらだまさじ
寺田將二 てらだまさじ

#chapter1

“プロ仕様”に匹敵する製品を販売。悪用されないよう厳しいルールを設定

 護身用品を専門に開発、製造、販売している「ティエムエムトレーディング」。手のひらに収まり噴射距離が3mの催涙スプレー、銃器以外のあらゆる刃物・凶器を防御しながら対抗できる盾型スタンガン、伸縮式で携帯所持できる特殊警棒、被害が相次ぐクマ用の撃退スプレーなども扱っています。

 自慢は、いずれも各国の軍や警察で採用される“プロ仕様”に匹敵する品質であること。代表取締役の寺田將二さんも「ここまで力を入れているメーカーや販売店は、日本では弊社ぐらいでしょう」と話します。

 「護身用品という名称で知られますが、弊社では『非殺傷武器』と呼んでいます。あえて堅苦しく、緊張感のある言葉を選んだのは、もし所有者に悪意があれば凶器になるからです。命を守るための道具が悪用されるのは避けたいので、購入時には運転免許証などの提示を求めています。これだけはどうしても譲れないポリシーですね。

 身元確認など販売自主規制に賛同する同志を増やそうと、警察庁生活安全局生活安全企画課の許可を得て「日本護身用品協会」を設立。護身用品による犯罪を減らすべく尽力しています。

 警察庁刑事局捜査支援分析管理官付統計係によると、催涙スプレーなどのエアゾールスプレー製品全般やスタンガンが使われた事件の検挙数は、2018年は370件、2019年は353件、2020年は313件でした。そのうち私たちの協会員が販売する製品が使用されたのは、2018年からの推移で、全体の1.35%、0.56%、0.32%です。残念ながらゼロにはなりませんが、厳しいルールを設けた効果が出ていると感じています」

#chapter2

軍や警察OBに学んで起業。自社製品が顧客の命を守り、使命を全うする志を新たに

 寺田さんが開業した背景には、自身のつらい体験があります。少年時代に周囲からいじめを受け、持ち前の負けん気で抵抗したものの集団で暴力を振るわれるようになり、文字通り“死ぬほど”の痛みを味わったと言います。

 「理由は親の自己破産でした。高校に進むと本格的に空手を習い、二段を取得後は少年時代のいじめ集団とけんかに明け暮れましたね。就職でも実家の印刷会社の倒産を理由になかなか採用されず、日本での将来に絶望し、ハワイにいる日系アメリカ人の知人を頼ることにしました」

 渡航後は現地で空手を教えるとともに、アメリカ軍や警察OBが開催するセルフディフェンスのセミナーに参加。催涙スプレーや警棒の使い方を覚え、1990年頃からはスタンガンについても指導を受けました。

 「私があまりにも熱心に学ぶため『日本で困っている人々のために、自己防衛に関するビジネスを始めてはどうか』と背中を押され、起業に至りました。攻撃される人の気持ちを嫌というほど知り、いじめで自ら命を絶つ人がいることも痛感していたので、彼らを救うのが私の役割だと考えました」

 会社を立ち上げ、今でも覚えているのが広島から訪ねてきた母と娘。アドバイスを受け催涙スプレーを購入しました。

 「しばらくして、親子でお土産を手に来社されました。娘さんが何者かに襲われ、スプレーで抵抗して助かったそうです。私たちの製品が役立ったことがうれしくて、社員と一緒に泣きましたね。使命を全うする志を新たに、その日はみんなを連れて飲みに行きました」

寺田將二 てらだまさじ

#chapter3

人気は「防護盾型スタンガン」。何もできずに立ちすくむか、抵抗して意欲を喪失させるか

 創業以来、数々の製品を手掛けてきた寺田さん。「防護盾型スタンガン」はロングセラーの一つで、複数の特許と実用新案権を取得しています。

 「刃物を通さない4ミリ厚のポリカーボネート樹脂のシールドに、130万ボルトのスタンガンが搭載されています。攻撃を避けながら、相手に電流でダメージを与えられる仕組みで、バチバチとスパークする様子を見れば、戦意も喪失するでしょう」

 企業や教育機関からニーズがある他、最も多く購入しているのは病院やクリニックとか。2022年6月に福岡市内の病院で医師が刺された事件を機に、約1200人が所属する同市の医師協同組合から注文を受けたこともあります。

 「時を同じくして広域の強盗事件が発生し、全国から依頼が殺到しました。時代が護身用品の必要性を認めてくれるようになったと、感慨深かったですね。盾型製品はA4サイズでいつも手元に置いておくことができ、実際に被害を防いだという話も耳にしています」

 毎年3月11日や「防災の日」に家族で避難場所を確認し合うように、自宅付近や通勤・通学経路における不審者情報なども共有してほしいと呼び掛けます。

 「被害に遭う可能性が皆無ではないと分かっているのに、対策を立てない人がほとんどではないでしょうか。万が一の時に何もできずにいるのか、反撃して攻撃者の意欲を失わせるのか、一度はシミュレートしてほしいですね。私たちのビジネスに直接つながらなくても構わないので、安全意識の向上に貢献したいものです」

(取材年月:2023年10月)

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専門家プロフィール

寺田將二

護身用品を開発・販売し、身を守る術を伝えるプロ

寺田將二プロ

護身用品(非殺傷武器)の販売

株式会社ティエムエムトレーディング

アメリカで軍や警察のOBから警棒や催涙スプレーの使い方を学び、帰国後、護身用品事業を開始。「非殺傷武器」として扱い、悪用されないよう販売自主規制の強化も呼び掛ける。ヒット商品は「防護盾型スタンガン」。

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