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歴史が刻まれた建物の価値を生かし、現代に合った新たな魅力を創出

古い建物を再生し新たな命を吹き込むプロ

松本直樹

松本直樹 まつもとなおき
松本直樹 まつもとなおき

#chapter1

古い建物のリノベーションやコンバージョンを手掛け、補助金を活用した空き家の改修も

 「長きにわたり歴史を紡いできた建物には、かけがえのない価値があります。命を吹き込むことで、新たな魅力を今の時代に提示したい」と話すのは、「松本再生建築研究所」の松本直樹さん。古い建物のリノベーション(改修)やコンバージョン(用途変更)に力を入れています。

 例えば、親から相続した築60年以上の実家を、オーナーが8年間手を付けられずにいたケース。
 「なぜ空き家が発生するかと言うと、売却するにも家財道具の処分や、家屋解体、測量などに、お金がかかるからです。立地に恵まれた土地でない限り、売却益は少額となることが多いんです」

 松本さんは、ひとり親世帯や高齢者、障がい者など要配慮者に向けて住まいを提供する、住宅セーフティーネット制度への登録で、オーナーの費用負担を和らげることを発案。改修にあたって受給できる補助金と、金融機関からの融資で資金計画を立て、補助金申請のサポートや銀行の紹介も行いました。

 「固定資産税や電気や水道の基本料金など、毎年手出しがあったのが、今後は家賃収入を得ることができるようになります。無人だった家に人が住むことで、周囲の環境も向上するでしょう。住宅セーフティーネット制度での戸建ての登録はあまり例がなく、視察に来られた方もいます」

 設計施工にあたっては、耐震補強を行い、内装は自然光を取り入れて明るく、住む人の好みに染められるようシンプルに仕上げました。
 「制度を利用して入居されるのは、さまざまな事情を抱えた方たちです。ここからもう一度がんばっていこうと思えるような空間を目指しました」

#chapter2

築40年以上の団地をフルリノベーションにより、入居率4割から満室へ

 一軒家だけでなく、築40年以上の団地を手掛けたケースも。
 「適切にメンテナンスされていなかったため、老朽化が進み、防水面にも影響が出ていました。管理が十分でないことから入居率が4割にまで減少し、さらに管理が難しくなるという悪循環に陥っていました」

 このままでは廃虚ビルになってしまうと危惧した松本さんは、1棟丸ごとリノベーションすることに。
 屋上などの防水工事を行うほか、外壁も塗り替えてリフレッシュしました。害虫や雨水の浸入に悩まされていた階段室部分には、外観のアクセントもかねてブラインドのように洗練されたデザインのルーバーを設置。入居者の心が和むよう植栽も配しました。さらに、一住戸の内部を全面改修しました。

 「南北に開口部があり、採光や通風は申し分ありません。長所を引き立てるためにも、3DKから1LDKの開放感ある間取りに変更しました。どんな建物にも良いところがありますから、それを生かしたプランニングを心掛けています」

 杉の無垢板を床材に用い、木のぬくもりと香りが感じられる住まいは、地域の相場より高い家賃でも成約。入居が続々と決まり、満室となりました。きれいになると住み手の意識も変わり、手入れの行き届いた集合住宅に生まれ変わったそうです。

 「築年数を経ている場合、まず安全性を高めることが大前提。耐震性能や耐久性などを徹底的に調査し、問題があれば修繕します。信頼のおける施工会社とチームを組んで、建物の再生に取り組んでいます」

松本直樹 まつもとなおき

#chapter3

古い建物を現代に生かすヨーロッパの文化に触れ、建物の「再生」に取り組むことを決意

 松本さんは建築の専門学校を卒業後、設計事務所に入社しますが、もっと視野を広げたいと1年半で退職し、渡英。ウエストミンスター大学で受講したインテリアデザインコースで、大きな刺激を受けたと言います。

 「プレゼンテーションでは、課題の完成度よりも、なぜそういうプランを考えたのか、徹底的に追及されました。おかげで提案力が鍛えられました」

 イギリスで伝統ある建物や文化に触れる日々を1年余り過ごした後は、バックパッカーとして世界各地を放浪。多様な価値観の中では自分の意見を貫く場面も多々あり、帰国後に勤めたハウスメーカーをはじめ、海外での経験が仕事にも生きているようです。

 「お客さまにはこういう設計が合うと私は考えますが、お客さまはどう思いますかと提案して、納得のいくものを作り上げていく。そんな姿勢を信頼して、お任せいただくことが多かったかもしれません」

 約15年間の勤務を経て、建築への関わり方を見つめ直すためにフランスへ。
 「滞在中、第二次世界大戦期に、潜水艦基地だった場所を活用した美術館に足を運びました。務めを終えた建物に再び役割を与え、観光資源に変えているんです。そういう街づくりって、おもしろいなと思いました」

 「再生」というビジョンを見いだした松本さんは、日本に戻り2021年に創業。「古いからとすぐに壊すのではなく、一度立ち止まって残す方法を一緒に考えませんか。先人らの営みや記憶が刻まれた建物を守り、継承していくことで、そこにしかないたたずまいの街並みとなるはずです」と語ります。

(取材年月:2023年7月)

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松本直樹

古い建物を再生し新たな命を吹き込むプロ

松本直樹プロ

建築家

株式会社松本再生建築研究所

リノベーションやコンバージョン(用途変更)で、古い建物や空き家の再生を提案。建物の持つ歴史を尊重しながら、次世代に引き継げる資産へと変えていきます。改修に伴う補助金の申請もサポートします。

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